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2014年02月04日
カムチャツカ発
[ロシアのカニ密漁の伝説”Тигиль”(チギリ) ]
”Тигиль”(チギリ)は、1981年、米国で建造され、1990年代後半、”Фиер Си”(フィエル・シ)の船名でロシアの密漁の世界に入り伝説が始まった。
1999年、”Фиер Си”の船長はカニの違法漁獲により有罪判決を受けた。
当時の船主は、米国のMBIで、ロシアの”Марине Ич”(マリン・イチ)が、その運航を行っていた。
2000年代に入り、船主がカムチャツカの”Вектор”(ヴェクトル)に変わり”Тигиль”という現在の船名になったが、その運命は変わらず、違法操業が続けられることとなった。
2009年には、科学調査目的で”Тигиль”は操業(*報告担当者 原口聖二: ロシアFOC/IUU取締情報 04"Тигиль"事件参照)を行ったが、それは密漁を隠す隠れ蓑で、同年、国家に没収された。
その後、”Тигиль”を、翌年の2010年に、ロシア財産管理当局が、カムチャツカ ”Алеут”(アレウト)へ бербоут-чартер(ベルボートチャーター:裸用船)することとなった。
しかし、2011年には、”Тигиль”は神がかり的に、海上安全保障から消え、カニの漁場に出現、再び国家に押収されるも、裸用船契約は延長された。
ロシア財産管理当局が密漁船を没収し、再び漁場に送り込む循環について、ロシアFSBは約1年間、捜査を行ったが、結局、その責任者は無罪となった。
現在、ロシア財産管理当局は、没収船の管理に頭を悩ませている。
船体は錆び、環境への悪影響が指摘され、年間の管理経費は150百万ルーブルとされている。
これが、密漁船が没収後、再び漁場に送り込まれてきた循環の理由の一つだったのかもしれない。
最近、米国の友人がシアトルに”Тигиль”と呼ばれるカニ漁船が入港したと教えてくれた。
その船が、ロシア国家の所有であることを伝えると驚いていた。
現在、ロシアで漁獲したカニ製品を米国へ販売する、カニ業界の再編成が行われており、リトアニア出身のアメリカ市民で、シアトルの”リトアニアグループ”が中心になっているとの情報もある。
2013年12月25日、ロシアは、「IUU(違法、無報告、無規制)漁業を防ぎ、排除する国家行動計画」を策定した。
これが単なる宣言ではなく、実効ある計画となるよう関係機関の行動に期待する。
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*ロシアFOC/IUU取締情報 04"Тигиль"事件
2009年10月01日 カムチャツカ発
[FSB北東管区国境警備局9月期漁船拘束情報]
ロシアFSB北東管区国境警備局(ペトロパブロフスクカムチャツキー)は、9月期の活動における拘束船4件を次のとおり発表した。
1. 2009年09月15日
船名 СДС "Виктория"(ヴィクトリヤ) ロシア旗
船主 "Топаз"(トパーズ)社 コルサコフ
内容 漁業活動、輸送に関する許可証がないにもかかわらず、25,210尾の活ガニ、6トンのニシンとスケトウダラを船内所持していた。またチェックポイントも不通過だった。
2. 2009年09月15日
船名 ТР "Kuseki Maru" (くせき丸) カンボジア旗
船主 "Sea flower Co. Ltd." (シーフラワー)社 マーシャル諸島
内容 漁業活動、輸送に関する許可証がないにもかかわらず、14,320尾の活ガニ、2トンのスケトウダラを船内所持していた。またチェックポイントも不通過だった。
*3. 2009年09月19日
船名 КРПС "Тигиль"(チギリ) ロシア旗
船主 "Вектор"(ヴェクトル)社 "КамчатНИРО"(科学調査国営単一企業カムチャトニロ)
内容 国境警備艇が近づいた時、製品を海中へ投棄した。科学調査およびコントロール操業については、生物資源の海中還元は認められていない。また、調査目的の対象外のアブラガニ製品を船内に所持していた。
4. 2009年09月15日
船名 РШ "Сигма"(シグマ) カンボジア旗
船主 不明(プノンペン)
内容 漁獲製品を海中投棄したことを視認したが、漁業、運搬活動に関する許可証はなかった。またチェックポイントも不通過だった。
(関連過去情報)
2013年11月15日 モスクワ発
[ロシア国会はカムチャツカ地方議会から提出された密漁没収船の処分方法を論議する]
ロシア国会はカムチャツカ地方議会から提出された、密漁拿捕没収船の処分を円滑にする法改正案を検討している。2013年11月14日、カムチャツカ地方議会から、国会天然資源・環境委員会に、漁業と水棲生物資源保護関連法、国家財産法等の改正案が提出された。現行法では、水棲生物資源を違法に漁獲し、当局により拘束され、裁判の結果、没収された漁船は、競売にかけられることとなり、仮に落札されなかった場合には、スクラップ処分にしなければならない。問題なのは、没収漁船が連邦財産庁へ引き渡される前のこう留中、管理が行き届かないため、かなり酷い状態になっており、競売が成立せず、結果、国家への収入を減らしていることだ。また、環境被害を防ぐための最低限の没収漁船の管理は、国家予算にとって無駄な経費となっている。(*報告担当者 原口聖二: これまで、密漁→拿捕→罰金“国家予算”→漁船競売成立“国家予算”→漁船引渡→密漁の流れを繰り返し、同じく極東市場へ製品を供給したい米国カニ業界は、この循環に意図的なものがあると批判してきた。密漁船の老朽化は勿論だが、競売が成立しなくなってきた理由として、ロシア当局の取締強化、関係各国とのIUU漁業協定の促進、資源減少等により、このビジネスに見切りをつける者が多くなってきたためとも考えられる。)