2019年09月09日
リポート:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[TAC魚種またがり資源スルメイカ韓国漁業等速報]
①2019年漁期(2019年7月1日-)開始から同年8月23日までの間、韓国漁船は自国EEZ内で、1万5,500トン以上のスルメイカを漁獲し、前年同期の215%の生産をした。
②この内、前年漁期の試験枠から実績枠となった西海トロール(二艘引き)操業が7,000トンを占め、当該操業の配分されたTAC開発率は既に65%になった。
*日本の資源評価での韓国近海の漁獲分類:“1月-3月冬季発生 4月-10月秋季発生 11月冬季・秋季混合 12月冬季”
*西海トロールは操業海域が限定され、東海(日本海)でのイカ操業は認められていない。
③ロシアFSB沿海地方国境警備局は2019年9月7日、台風“Линлин”(リンリン)を待避するためロシア沿海地方(日本海北海道対岸)海域に500隻の船舶が緊急入域、この内150隻は北朝鮮漁船だと発表した。
また、これらの漁船の一部がこの緊急入域の大義を理由に密漁を行っていると加えた。
添付:韓国近海漁業スルメイカ2019年漁期速報
(参考) 2019年09月08日 福井新聞
[福井県越前 初夏の味スルメイカ9月も好漁の謎]
初夏の味覚スルメイカが、今年はなぜか9月になっても、福井県越前町の釣り漁でよく取れている。例年スルメイカ漁は7月上旬にはほぼ終わっており、専門家が「今年急に起こった現象で、裏付けるデータがない」と驚くほどだ。
日本海近海で底引き網漁が解禁となり、越前町で初競りが行われた9月2日朝。例年なら午前9時から競りが始まるが、今年は約1時間遅れた。その前のスルメイカの入札が終わらなかったためだ。「9月にスルメイカがあるなんて」。集まった水産関係者は一様に驚きの表情だった。
町漁協によると、今年8月末までのスルメイカの漁獲量は約45万キログラム。漁期が長くなっていることもあり、前年の13万6千キログラムの3倍超に達している。2日に入札されたスルメイカは約8300キログラムと「9月とは思えない量」(町漁協)だった。
越前町のイカ釣り漁はここ10年ほど、燃料の原油高のため、約30キロメートル沖の近海が漁場の中心となっていた。しかし今年は県外船が福井の近海にも来ていたことから、燃料が高騰する前に漁場だった約50~60キロメートル沖まで出た。これが「思わぬ好漁につながった」と町漁協の小林利幸組合長は分析する。
ただ、その漁場で、なぜ9月になっても取れるのかは不明だ。日本海区水産研究所(新潟県)は「産卵の時期がずれたからだろうが、裏付けるデータがない」。同研究所によると、今年のスルメイカ漁は「特異な年」で、これまで国内の中心だった北海道が不漁となり、福井をはじめ日本海中部沖に漁場が移ったという。
他県の不漁を受け、越前町のスルメイカは高値で推移。一般に夏以降のスルメイカは身が薄くなる傾向があるが、小林組合長は「今も質が良く、コリコリしておいしい」と太鼓判を押した。
(関連過去情報)
2019年08月30日
リポート:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[TAC魚種またがり資源スルメイカに関する情報(韓国漁業等)]
1.韓国漁船
①2019年7月下旬、複数の韓国メディアが、沖合スルメイカ操業が半島西海沖合に集中、一方、東海(日本海)は惨憺たる結果で、西側海域は“船混み”していると伝えた。
②2019年漁期(2019年7月1日-)開始から同年8月16日までの間、韓国EEZ内で、1万4,200トンのスルメイカが生産されたが、この内、前年漁期の試験枠から実績枠となった西海トロール(二艘引き)操業が6,500トンを占めた。この操業における西海トロール(二艘引き)の配分されたTAC開発率は既に60%を超えている。
*日本の資源評価での韓国近海の漁獲分類:“1月-3月冬季発生 4月-10月秋季発生 11月冬季・秋季混合 12月冬季”
③同年8月上旬、報告担当者(原口聖二)より、日本の科学研究機関に対して、上記①②の漁獲資源は、秋季発生群と冬季発生群のどちらに分類されるのか旨を質問したところ、明確な知見は未だないとの回報だった。
④なお、韓国沖合釣り漁船団の数十隻が、やはり同年7月下旬、韓ロ漁業協定に基づき、ロシア沿海地方EEZ(日本海北海道対岸沖合)へ出漁した。この操業結果については情報が得られていない。
2.中国漁船
①中国漁船の最近の北朝鮮海域等における動向に関する情報は得られていない。
②しかし、今年2019年6月下旬にも韓国メディアは、中国漁船はイカの移動の要となる東海(日本海)北朝鮮水域で独占操業を行っていると指摘、東海(日本海)北朝鮮海域に入った中国漁船は、昨年2018年に2,100隻、今年2019年もすでに940隻を超えたと伝えた。
3.北朝鮮漁船
①2019年6月14日、日本海上保安庁は日本EEZ大和堆周辺で違法操業する北朝鮮漁船に対応して2019年5月下旬から同年6月上旬までの間、当該EEZに侵入する等した延べ318隻に退去警告を実施したと報告した。昨年同期は延べ330隻だった。また、当該EEZから退去させるため延べ50隻に放水したが昨年同期は同99隻で、いずれも減少したと加えた。
②2019年8月中旬、ロシアFSB沿海地方国境警備局は、台風”Кроса”(クロサ)を待避するためロシア沿海地方(日本海北海道対岸)ピョートル大帝湾に緊急入域した外国漁船150隻が押し並べてロシア海域を離れたと発表した。しかし、一方で、待避を理由にロシア沿海地方海域に緊急入域した外国漁船がこれを悪用、密漁を行った150名以上の外国人漁業者を拘束したと加えた。ロシア・メディアは、いまだに北朝鮮漁船による違法漁業が当該海域で存在すると伝えた。
③ロシア当局は、ロ朝漁業協定に基づく北朝鮮漁船数十隻への操業許可が約300隻の入域チケットになっていると指摘しており、これまでの北朝鮮漁船によるロシアの損害額は20億ルーブルに達するとロシア検察は見積もっている。
4.ロシア漁船
①2019年5月、ロシア沿海地方“ Восток- 1” (ヴォストーク1)社は、新たに極東海域でイカ釣り操業を行う“ Восток- 8”(ヴォストーク8)が、専門漁業のための集魚灯、新鋭の漁労機器等の装備を完了したと発表した。ロシア・メディアは、極東海域におけるスルメイカはロシア漁業にとって最も不満足な開発にとどまっている資源となっており、近年、勧告された漁獲量の10%-20%程度しか生産されていないと指摘、この原因は専門化された船団が組織されてこなかったことで、資源が集約されるドスイカと比較してスルメイカの魚群はまばらであり、「サハリン南西部と南クリールを除き」トロール漁業での生産性が低かったと伝えた。一方、専門化された操業が可能となった“ヴォストーク8”は、北太平洋の公海部分でアカイカ操業を開始、夏から秋にかけて日本海でスルメイカ操業を行うことになると加えた。
②全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ太平洋支部チンロは今年2019年、極東海域でドスイカ15万トン、アカイカ3万トン、そしてスルメイカ9万トンの漁獲を勧告している。
添付:資料
①韓国近海漁業スルメイカ2018年漁期最終結果
②韓国近海漁業スルメイカ2019年漁期速報
(参考)2019年08月28日 北海道新聞【函館】五十嵐知彦
[「来月以降は昨年上回る」 函館水試など スルメイカの漁獲予想]
道立総合研究機構函館水試(函館水試)などは27日、道南沖と道東沖でのスルメイカの漁獲について「9月以降は、不漁だった昨年を上回る可能性がある」との予想を公表した。ただ「生息密度は非常に小さく、規模の判断は難しい」との見方も示すなど、記録的不漁が好転するかは見通せないままだ。
函館市内で開かれた、同市などが主催する講演会で明らかにした。
函館、釧路の両水試は18~23日に周辺海域計14地点で、スルメイカの分布調査を実施。イカ釣り機1台1時間あたりの漁獲匹数で示す「分布密度」は道南沖で昨年の1・9を上回る2・2だった一方、道東沖は昨年の2・62から0・45に減少。魚体の平均的な大きさは道南沖で昨年より5センチ小さい16センチ、道東沖は1センチ小さい21センチだった。
函館水試の有馬大地研究職員は「道東沖にはまんべんなく分布している」と指摘。「道南や三陸沖に来遊するパターンが考えられる」と今後の動向を注視する考えを示した。
函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長は、1~3月に東シナ海で生まれた後に北上する「冬生まれ群」について、豊漁だった1992年に海水温が似ていると指摘し、「冬生まれ群が復活する可能性がある」との見通しを示した。