2022年10月15日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[EU水産物自給率 記録的低水準に 英国EU離脱 スケトウダラはロシア頼みの実態]
ヨーロッパ水産加工業者協会 (AIPCE)の年次報告書によると、EUの水産物輸入への依存度が年々高まっており、自給率は昨年2021年、歴史的な低水準にまで落ち込んだ。
英国のEU離脱等によりEU の漁獲量は減少、水産物自給率は、この10年間の平均となる42%と比較して、35%という前例のない低さにまで落ち込んだ。
今年2022年の水産物自給率はさらに低下し、33%になると予想されている。
昨年2021年の総供給量1,250万トンのうち、輸入が900 万トンを占め、EUの国内供給量は350万トンに減少した。
今年2022年、AIPCEは、総供給量がさらに7%減少して1,160万トンになると予測しており、輸入と国内供給の両方が弱体化している。
新型コロナウイルス(CV19)の最悪の影響はヨーロッパでは緩和されたように見えるが、関連する多くのサプライ・チェーンの問題がCV19前の取引条件への回復を依然として妨げている。
現在、ウクライナ事情により、前例のないほどエネルギーと燃料価格が上昇、世界の食品市場における他の原材料と投入コストにも影響を与えている。
EUの制裁措置がロシアから水産物を調達することをより複雑にし、加工業者は重大な不確実性に直面する可能性が高く、計画と投資の決定を困難にしている。
昨年2021年、EUのスケトウダラの総供給量、イコール輸入量は原魚ベースで80万8,000トンに達した。
統計上、この内、米国が38%、中国が35%、そしてロシアが25%となっている。
しかし、中国から輸入されたスケトウダラの95%がロシア産原料再加工(H&G⇒フィレ)2次原料製品となっている。
AIPCEは、スケトウダラについて、特に白身魚フライ向けの需要を満たすために輸入が必要で、ロシア以外の国から調達することは難しいと指摘し、世界中で輸入水産物のための競争が激化していることも念頭に置いて、今後、EUは漁業と水産養殖の生産構造を改善するための取り組みを強化する必要があると加えている