2022年10月13日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[フェロー諸島はロシアとの漁業協定への対応についてノルウエーの助言を求める]
フェロー諸島にとって漁業分野は突出して大きな産業であり、農業と合わせると同国の貿易輸出金額の95%を占めている。
政治的圧力が高まり、フェロー諸島の政権は、ロシアとの漁業協力の再評価を求められている。
デンマーク支配下のフェロー諸島は、今年2022年も年末までにロシアと漁業協定に基づく年次交渉をしなければならない。
この協定に基づき、フェロー諸島の漁業者はバレンツ海でタラを漁獲する許可が与えられ、ロシア漁業者はフェロー諸島海域でニシンやサバ等の漁獲割当を受け取っている。
2014年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合し、EU により厳しい制裁措置が導入されたが、メンバーではないフェロー諸島は、ロシアとの貿易関係を維持することを選択した。
フェロー諸島の産業にとってロシアとの漁業協定は重要な問題となる。
今般のウクライナ情勢によりフェロー諸島は、ノルウエーと同様に漁船を除いて、ロシア船舶に対し入港、港湾の利用を禁止している。
フェロー諸島も漁船を除いた理由について、ロシアとの二国間の漁業協力と、両国間の海域にまたがる水棲生物資源の管理の利益を維持するためと同国政府は説明している。
ノルウエー政府は最近、ロシア漁船の入港可能な港の数を制限することを決定した。
ロシアの漁船の入港について、トロムソ、ボーツフィヨルド、そしてキルケネスに限定する措置をとったが、ロシア側はこれに敏感に反応し、両国の漁業協力に悪影響を及ぼすと申し入れしている。
漁業分野、安全保障等についてのノルウエーと共通の関心事が多いフェロー諸島政府は、ノルウエー外務省と連絡をとり、ロシアへの対応について話し合いの場をもつこととしている。
(報告担当者 原口聖二:ロシアと国境が接する日本は、ノルウエーと極めて似た関係性を保つことになる。言い換えれば、安全保障も含め“対話のためにそれが必要”で、独自の対応をとるべきである。)