2022年11月26日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[フェロー諸島がデンマーク・EUなどの批判を退けノルウエーなどに続きロシアとの漁業合意を更新]
フェロー諸島政府はロシアと、今般、来年2023年の相互の海域における漁獲割当、操業条件等に関する漁業協定に基づく合意を更新した。
この漁業交渉は、デンマークとEU、そして一部の国内野党勢力の反対を受けながらの開催となった。
フェロー諸島漁業大臣アルニ・スカーレ(Árni Skaale)は、ウクライナ情勢ばかりでなく、いかなる紛争からもフェロー諸島は完全に距離を置いていると語り、当該協定がフェロー諸島にとって経済的に非常に重要で、雇用と地域の存続に大きな影響を与えるものだと指摘、この状況で行うべき唯一の正しい選択だったと加えた。
フェロー諸島のロシアとの漁業協定は、ソ連時代の1977年に締結された。
フェロー諸島の漁業者は、合意に基づきバレンツ海でタラやエビを漁獲している。
一方、ロシア漁船はフェロー海域でブルーホワイティングを漁獲し、フェロー諸島の港で漁獲物を積み替えることが可能となっている。
フェロー諸島にとって漁業分野は突出して大きな産業であり、農業と合わせると同国の貿易輸出金額の95%を占めている。
一方、政治的圧力が高まり、フェロー諸島の政権は、ロシアとの漁業協力の再評価を求められていた。
2014年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合し、EU により厳しい制裁措置が導入されたが、メンバーではないフェロー諸島は、この時もロシアとの貿易関係を維持することを選択した。
フェロー諸島の産業にとってロシアとの漁業協定は重要な問題となっている。
ウクライナ情勢によりフェロー諸島は、ノルウエーと同様に漁船を除いて、ロシア船舶に対し入港、港湾の利用を禁止している。
フェロー諸島も漁船を除いた理由について、ロシアとの二国間の漁業協力と、両国間の海域にまたがる水棲生物資源の管理の利益を維持するためと同国政府は説明していた。
(報告担当者 原口聖二:ロシアと国境が接する日本は、ノルウエーと極めて似た関係性を保つことになる。言い換えれば、安全保障も含め“対話のためにそれが必要”で、独自の対応をとるべきである。)