2024年04月04日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#79 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 CA州漁業者は洋上風力発電から自らの身を守る]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
米国カリフォルニア州のモロベイ商業漁業者機構(MBCFO)とポートサンルイス商業漁業者協会(PSLCFA)は、洋上風力発電開発に関する漁業者の懸念に対応し長年取り組んできた。
2024年2月29日、カリフォルニア州土地委員会、カリフォルニア州沿岸委員会、連邦政府からリースを獲得した洋上風力発電開発事業者3社、そして調査会社1社を相手取り、サンルイスオビスポ上級裁判所に訴訟を起こした。
漁業者団体は、プロジェクトの影響が明るみに出て、強制力のある緩和策、モニタリング等が採用される前に、開発事業者らはこの開始を急ぐことに傾注していると主張している。
MBCFOとPSLCFAは、巨大な洋上風力発電所が実現する可能性があることを早期に知り、最初に提案した洋上風力発電開発事業者との交渉に何千時間を費やしてきた。
緩和策は現地調査が開始される前に開始され、建設、運営、保守、そして最終的な廃止措置まで継続され、その資金は企業がクレジットを取得する開発事業者の負担によって賄われることになっている。
緩和資金は「商業漁業の長期的持続のための可能な限りの支援、保護」に使用することが求められており、それには、インフラ改善、累積的影響の緩和、モニタリング、将来への対応が含まれる可能性がある予期せぬ影響への対応、労働力の育成、水棲生物資源への影響研究等が含まれている。
大西洋岸での経験が示すように、実際には風力エネルギーが発電されず、プロジェクトが放棄される可能性もある。
漁業者団体は、連邦政府がリース契約を「最高額入札者」に与えるが、必ずしも最善の緩和と監視を約束した企業に与えるわけではなく、今回の訴訟について、自らの身を自ら守るための行動である旨を説明している。