内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

集団的同一性問題 ― ヴァンサン・デコンブの対談を読む(19)

2015-07-16 02:38:00 | 読游摘録

 さあ、いよいよ本題である集団的同一性について考察していこう。ここでまず立てられるべき問いはこうである。
 どのようにして、あるグループの単なる論理的同一性から、そのグループ自身による集団的自己同一性の言明・宣言・要求への移行が発生するのか。それは次のようにして起こるとデコンブ氏は考える。
 話を少し元に戻そう。
 もし私たちが方法論的個体主義者であるならば、私たちに知りうる全体性とは、ばらばらな要素の単なる全体集合である « omnis » としての全体性でしかない。それら多数の要素をそれぞれ同定するという意味以外の全体の同一性は、そのかぎり存在しない。したがって、集合的同一性という問題を、存在論的レベルであれ、社会心理学的レベルであれ、立てる必要はない。
 しかし、私たちはすでに、この原理的個体主義の破綻を認め、« omnis » の次元に議論を限定して全体性に関する議論にけりを付けることはできないという点で合意した。
 社会存在の哲学の諸問題を考えるためには、やはり « totus » という意味での全体(性)が必要なのだ。その必要性を認めるとき、問題次元が変わる。