内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

集中講義を終えて

2015-07-29 22:20:00 | 講義の余白から

 今日が集中講義の最終日だった。
 なんとか田辺元の論文「種の論理と世界図式」を読み終えた。出席者三名は、この猛暑の中、五日間、最後まで欠席することなく、よくついてきてくれた。毎回、難解なテキストと格闘しつつ、私が要求した書式にしたがって要旨を準備し、それに基づいた報告をよく果たしてくれた。
 難渋する読解作業を通じて、田辺の哲学的思考が、今まさに自分たちが生きる現実世界とどこでどう切り結ぶのか、それぞれに手掛かりを攫んでくれたようである。いい質問も毎回出たし、活発とまではいかなかったが、いくらかは実りある議論もできたと思う。
 最終日の今日は、少し早めに切り上げ、大学近くの喫茶店で彼らの労を労いつつ、哲学教育の社会的意味、実践的語学学習法、就活最前線などについて、一時間ほど歓談した。
 遥遠かつ多難であろう彼らのこれからの人生に幸あれと願いつつ、皆で読んだ論文の中から次の一節を彼らに贈ろう。

哲学はただ主体の実践的歴史的行為における相対即絶対の統一の自覚覚醒に外ならない。その体系は歴史の発展における絶対否定的主体の自覚の内容である。その否定的媒介として歴史的基体の相対性が介入する故に、永久に完結した体系というものは初めから問題にせられない。不断に更新する運動に即する活動のみが哲学の生成的存在である。(「種の論理と世界図式」『田辺元哲学哲学選Ⅰ』267頁)