夫以外の第三者から提供された精子を用いる人工授精(AID)について、実施を公表している慶応大のほかに、京都大や広島大など、少なくとも7大学病院で過去に行われていたことが、精子提供者らの証言や専門誌への報告で8月16日、分かった。
これまで不明だった大学病院の実施状況の一端が明らかになった。
一方、共同通信が全大学病院を対象に行ったアンケートでは「過去に実施していた」と回答した病院はなく、公表に消極的な姿勢も鮮明になった。
出自を知る権利を訴える人が増え、関連する生殖医療法案が検討される中、専門家からは過去の実施状況の検証が必要との指摘が上がっている。
AIDによる出産は、1949年に慶応大で初めて誕生して以降、1万人以上が生まれているとされる。
一部の民間クリニックも行っており、実際は数万人に上る可能性がある。
第三者が関わる生殖医療のルールに関する法整備はなく、倫理的課題も多いことから水面下で行われてきた。
取材によると三重県立大(現・三重大)、京都大で精子提供者が、大阪市立大(現・大阪公立大)で出生者が、広島大で担当医がそれぞれ証言したほか、札幌医大、新潟大、京都府立医大で実施を報告した専門誌が見つかった。
実施期間は1950~1980年代に含まれる。
アンケートは国公立と私立の全82大学病院を対象に5月に行い、うち64大学が回答。
実施が判明した7大学を含めいずれも「実施していない」か「回答を差し控える」との回答だった。
京都大で1950年代後半に精子提供した医師は「学生寮に住んでいて声がかかり、10回ほど提供した」と話しているが、京都大産科婦人科の担当者は「調べた範囲でAIDを実施していたとの記録はない」と答えた。
生殖医療の倫理問題に詳しい柘植・明治学院大教授は「ほかにも多くの大学病院で行われていたのではないか。
どのように精子提供者を募ったのか、感染症や遺伝病の予防はどうしていたのか、不明なことが多い」と話している。
慶応大病院は2018年に新規患者の治療受け付けの停止を公表、7大学病院の実施状況の詳細は不明。
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