医療現場の課題解決に向けた技術の開発・実用化を推進する日本医療研究開発機構の医工連携事業に、広島大大学院医歯薬保健学研究院の阿部准教授(科補綴学)たちによる研究事業が採択された。
入れ歯の治療で使う抗菌性の粘膜調整材の開発・事業化が対象。
今後、臨床試験などを経て2019年の商品化を目指す。
粘膜調整材はプラスチック製の医療機器。
弾力性に富み、柔らかいのが特徴で、入れ歯の不具合で生じた粘膜の変形や傷を健康な状態に戻すために使う。
ただ、細菌などの微生物が付着し、ロ内環境の悪化につながる一因とされる。
そのため、飲み込んだり、せきをしたりする力が弱い高齢者たちの気管に細菌が入りやすくなり、誤嚥性肺炎の発症が高まる要因となっていた。
阿部准教授の研究チームは産業技術総合研究所四国センターなど協力。
殺菌剤「塩化セチルピリジニウム」を使った抗菌剤を粘膜調整材に活用し、微生物の付着や増殖を抑制できる効果に着目。
商品化を目指すことにした。
現在、国内の65歳以上の要介護高齢者は約600万人。
そのうち約7割は歯科治療が必要とされる。
日本人の死因3位を肺炎が占めており、国も高齢者の誤嚥性肺炎の予防に向けた口腔ケアの必要性を訴えている。
同機構からの補助金は2015~2017年度で約1億6千万円。
プロジェクトのサブリーダーを務める阿部准教授は「薬事の承認には多額の資金が必要なのでありがたい。 入れ歯を使う高齢者たちの感染症や肺炎予防の一助となるよう商品化を急ぎたい」と話している。
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