新型コロナウイルス感染症の病態解明や治療薬開発に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用する取り組みが国内外で始まっている。
体のさまざまな組織に変化する万能細胞としての性質を利用して、患者に負担をかけず研究を進められるのが強みだ。
既に欧米のチームが成果を上げたと報告。
国内でも京都大が研究を開始した。
スウェーデンやカナダなどの国際チームが4月24日付の米科学誌セル電子版に発表した内容によると、iPS細胞から血管の組織を作って新型コロナウイルスに感染させた。
ウイルスが細胞表面のタンパク質「ACE2」に結合して感染していることを確認。
さらに結合を妨げて感染を防ぐ可能性のある物質を見つけたことを示した。
チームは「新しい治療薬のヒントが得られた」としている。
日本では京都大医学研究科の平井教授(呼吸器内科学)らのチームがiP
S細胞から肺の細胞を作り、感染の仕組みや肺炎が起こる原因を探る研究を今春開始した。
新型コロナウイルスの感染実験は厳重な管理が必要なため、ウイルスを扱える施設と共同で進める。
「治療の方針を立てたり、薬の候補を探したりしたい」と意気込む。
米コーネル大などのチームは、同じく万能細胞の胚性幹細胞(ES細胞)から作った肺の小さな組織を活用したコロナ研究の論文をウェブ上で公開している。
感染で影響を受ける組織や細胞を作って病気を再現する試みでは、病態の解明や治療薬、ワクチン候補の安全性、効果の検証に期待がかかる。
京大の平井教授は「新型コロナウイルスに感染しても軽症や無症状の人がいる一方で、重症化する患者もいる。
患者によって症状が出る臓器も異なる。
これらの原因解明にさまざまな専門の研究者と協力して取り組んでいきたい」と話している。
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