不動産や借金などプラス、マイナスどちらの遺産も受け継がない「相続放棄」が年々増え、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件が受理されたことが4月9日、司法統計で分かった。
人口減少や過疎化が進む中、専門家は空き家となった実家を手放したり、縁遠い親族の財産を受け取らなかったりする例が目立つと指摘。
放置された家屋や土地への対が課題で、行政が適切に管理できるよう制度設計を求める声もある。
民法は、人(被相続人)が死亡した場合、配偶者や子らが一切の遺産を相続すると定めており、マイナスの遺産も相続しなければならない。
これを避けるため、相続放棄を家裁に申し立てることができる。
司法統計によると、全国の家裁で受理件数が伸び、少なくとも2015年以降は毎年増加。
2015年は19万件弱だったのが2017年に20万件を超え、2019年は22万5416件、2020年が23万4732件、2021年が25万1994件だった。
相続に関する手続きを多く扱う弁護士法人「心」によると、親が亡くなり、子どもが地元を離れている場合、維持費や固定資産税の負担を嫌って実家の相続を放棄することが多い。
孤独死した人と疎遠な親族が遺産を放棄する例もある。
こうして老朽化した家屋などは「負動産」とも呼ばれ、空き家の増加に拍車をかけている。
倒壊や、ごみの不法投棄といった問題もあり、対策が急務とされる。
大阪経済法科大の米山教授によると、相続放棄の結果、放置された空き家は最終的に行政が代執行して取り壊すことがあるが、公金支出という負担が生じる。
相続放棄とは別に、不要な土地の所有権を国に返す「相続土地国庫帰属制度」が昨年始まったものの、更地でなければならないなど条件が厳しく、利用は広がっていない。
人口減少などにより、景観や治安の面で地域に悪影響を及ぼす空き家問題は今後も深刻化する可能性がある。
米山教授は「国庫帰属制度を拡充して多様なヶIスで引き取るなど、国は管理の行き届かない土地や不動産を減らすための施策を打ち出す必要がある」と提言した。
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