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8ヶ月ぶりの「サカエヤ」。こんなにインターバルが空くなんて、時が経つのは早いとともに極めて不本意だ。ただ、会社から徒歩18分は現実的には厳しい。往復36分は、実質的なランチの時間24分を意味する。それも「待ち時間0分」の「サカエヤ」だから成立する。料理を用意するのに5分とか、いや7,8分かかっていたら、ちょっときついだろう。
カウンター席について、目の前のマスターに注文を告げる。
「チキンと『わかめスープ』ください」。
すると、マスターは、「分かりました」と返す。実直な人なのだろう。食券の店はともかく、オーダーする店で、このような返しをきいたことがない。大概、「チキン、『わかめスープ』一丁」とか、「『チキンカレー』と『わかめスープ』をいただきました」とか言うはず。しかも、このコールって、対お客さんではなく、業務放送だ。だから、「サカエヤ」のマスターの言葉はとても新鮮である。実直さを感じるのはそれだけでなく、「カツカレー」をオーダーしたお客さんには、カツを揚げる時間をお客さんに告知する。これは「待ち時間0分」に対しての配慮だ。
ともあれ、「チキンカレー」(580円)に、「わかめスープ」が0分で目の前に用意された。揚げ足とりのために断っておくが、0分=0秒ではない。用意する時間は1分未満ということは肝に銘じておくべきである。カレーとスープで僅か700円。極上のスープがついてこの価格だから驚かされる。
「サカエヤ」において、スープは決して脇役ではない。冬季に提供される「けんちん汁」は主役を喰ってしまうほどの存在感だ。だが、夏場の「わかめスープ」はどうなのか。実は今回、初めて「わかめスープ」をオーダーしたのだが、「けんちん汁」に負けず劣らずのうまさだった。「サカエヤ」のスープはカレーの旨味を増幅させる働きを持つ。とろみのある「けんちん」の旨味がチキンカレーの旨味を引き出し、「サカエヤ」ワールドのハーモニーを奏でる。冬の寒い時期にいただく、そのハーモニーは体を温め、食後しばらくぽかぽかと余韻を残す。それがうまいのだ。だが、夏期の「わかめスープ」 はどうなのか。猛暑の中、ホットなスープはどうかなという猜疑心は一口いただいて吹っ飛んだ。わかめの風味が爽やかなのだ。若干の胡麻油を隠し味に、ふんだんに使われたわかめの旨味が、やはりカレーに一定のアクセントをつける。やっぱりうまい。「サカエヤ」のカレーとスープの組み合わせは夏も健在。「わかめスープ」をオーダーしてよかったと思わせる絶妙のコンビ。冬場の「けんちん汁」も待ち遠しいが、去り行く夏、「わかめスープ」をを存分にたのしみたい。
こんにちは。
鋭いご指摘ありがとうございます。
実は出汁に何を用いているのか自信がなく、本文では言及していません。
味はさっぱりしているのですが、複合的に出汁を合わせているように見受けられます。フュメ・ド・ポワソンではないのは確かですが、単体の出汁ではないですね。
お店の歴史は古く、改良を重ねて今の味に落ち着いたと思われます。スープが看板なので、簡単に真似できるものではなく、不明ということで勘弁してください。
まさかワカメスープにフュメドポアソンなんかは使わないとは思いますが、この店のはどんな出汁なんですか?