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さすら碑 010 - カープの聖地 -「勝鯉の森」(広島市中区基町)

2023-11-03 07:28:19 | さすら碑

広島からの帰りは11時の新幹線を予約していた。

人によって広島は飛行機を選ぶ人も少なくないし、自分も一度だけ飛行機を使ったことがある。けれど広島の空港はアクセスが悪く、使い勝手が悪い。多少時間がかかっても広島までは新幹線で行くようにしている。新幹線の車内で仕事もできるし。

さて、まだ時間があるのでちょっとお散歩でも。旧広島市民球場は今どうなっているのか。

旧広島市民球場には3回行ったことがある。成績は3勝0敗。そのうち1試合はサヨナラ勝ちである。黒田博樹投手が完封勝ちをした試合も観た。いい思い出しかない。

そして。

かつて旧広島市民球場があった空間はだだっぴろい公園になっていた。両翼91.4mの小さな球場だったが、とても広大に見える。

人がたくさん集まった場所には人の念が多く残留している。そういう場所の跡地には穏やかな公園や森を作り、その念を鎮めた方がいい。個人的にはそう思う。しかも、ここはかつての爆心地のすぐ近く。念は二重に三重にも重なっている。

そして勝鯉の森。

旧広島市民球場の一角には鎮守としての聖地がある。

カープ初優勝を記念して建てられた記念碑に、日本シリーズ優勝の記念碑。そして衣笠祥雄さんの連続試合出場の世界記録樹立を記念したモニュメントがある。

昨日観戦したクライマックスシリーズで始球式に登板したのは山本浩二さんだった。48年前の昨日、カープは球団創設以来、初めて優勝した。その年のMVPが浩二さんだった。その日から4周りとなる記念日にカープの試合を観て、そしてこの勝鯉の森に来られたのも何かの縁である。

セントラルリーグ優勝記念碑の石板は2018年の優勝で新たに碑がひとつ加わっていた。刻みきれなくなったからである。新たな石板の次の一行はいつだろうか。

日本シリーズの記念碑の碑文は1984年で止まっている。実はカープは12球団で最も日本一から遠ざかっているチームだ。最後に勝ったのは自分が中2の時。かれこれもう39年にもなる。次の一行はこっちの方が切実である。自分が生きている間に果たして見られるだろうか。

衣笠さんの記録は言わずもがな。2215試合連続出場は当時の世界記録だ。個人的には衣笠さんも世界遺産だと思っている。骨折した翌日も代打で出場したことばかりがクローズアップされるが、お母様を亡くされた日も先発出場していた。衣笠さんの父親は外国人といわれている。ご本人も父親を知らないという。母親の人生を尊重し、彼は父親のことを一切聞かなかったらしい。そのご母堂が亡くなられた日は確か讀賣戦で関東地方でもテレビ中継されていた。普通に試合に出ていた衣笠さんのことを今でもよく覚えている。

戦いの舞台がマツダスタジアムになり、勝鯉の森は穏やかにたたずんでいる。

今年は北別府学さんも古沢憲司さんも逝ってしまった。

ここは今、鎮守の聖地なのだ。

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