アメ横の立ち飲み街から、一本昭和通り側の筋には、今も懐かしい雰囲気の純喫茶が並ぶ。
「王城」。
「マドンナー」。
そして、「六曜館」。
「マドンナー」には行ったことはないが、豪華なシャンデリアが素晴らしい「王城」と、地味な佇まいではあるものの雰囲気満点、昭和の喫茶店だ。
「六曜館」は地下にあるお店。
階段から、もう雰囲気がある。コーヒー豆の麻袋が壁に貼られ、ランプを模した電灯が灯る。階段の踊り場には、大きな樽が置かれている。
なんとなく「カリブの海賊」っぽい。けれど、店に入ると、お店はフレンチテイストであることに気づく。
ミュシャのポスターが額に入れられ、あちこちに飾られている。ランプのような電灯が灯り、妙に優しい。
テーブルは木の温もりだ。
王公気分を味わう「王城」とは、コンセプトが違う。
根を詰めて、原稿を書いた日は、「六曜館」に行くことにしている。14時近くになると、お店はかなり空いている。4人掛けのテーブルにどっかと座り、「ナポリタン」を注文する。
「六曜館」のナポリタンは最強だ。多分、上野で一番おいしい。
大鍋でパスタを湯がくのではなく、最初からフライパンで湯がいて、炒めて和える。だから、味が馴染んでいる。濃いめのケチャップがパスタに絡んでいる。
だから、うまい。いや、とびきりうまい。
添えられたゆで玉子をいつ、どのタイミングで食べるか。いつもボクを悩ます。最初じゃないし、最後でもない。割られたゆで玉子の片方は、前半戦で、もう片方は終盤戦で。そんな彩りが嬉しくなってくる。
これにコーヒーがついて、850円だから安いものである。
食後のコーヒーはすっきり。酸味の少ない、ブレンドだ。かわいいコーヒーカップも楽しみのひとつ。その日によって、カップが違うのだ。
このナポリタンとコーヒーの組み合わせが、まるでひとつの物語を見るように胸に迫ってくる。エンディングのためのコーヒー。余韻のエンディングではなく、ナポリタンの序曲と対になった組曲である。
ある部分ではハーモニー、あるパートではユニゾン。この組曲に、ボクはいつも癒される。
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