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BASEBALL馬鹿 BLOG

わたしが見た「Number626 日本野球の25人ベストゲームを語る」~長嶋茂雄編~

2005-05-06 23:14:00 | Weblog
長嶋茂雄氏が選んだベストゲーム
「94年10月8日 中日VS讀賣」

 ペナントレースの最終戦、どちらか勝ったほうが優勝という、ドラマのような、いやいやドラマでも恥ずかしくてできないようなゲームを指して、長嶋監督(当時)は「国民的行事」と表現した。確か、テレビのインタビューで発言したのを見た記憶があるのだが、今となっては果たしてホントにそういったのか、疑いたくなってくる。
 長嶋氏ならばきっとこういったのではないか。
 「ナショナル・パスタイム」と。

 いずれにせよ、国民的行事といういささか仰々しいまでの表現が適切か否かは別として、このゲームが当時の野球ファンにとっては大きな関心事であったことは確かだろう。

 その日、わたしは夕刻から仕事場でラジオを鳴らし、ニッポン放送の「ショーアップナイター最前線」にダイヤルを合わせ、球史に残る試合を今や遅しと待ち構えた。確か、テレビ中継もいつもより早い時間から始まったと記憶している。

 戦前、わたしは中日が有利であろう、と予想していた。首位を独走していた讀賣が最終戦で肩を並べられたからだ。追われるものより追うものに勢いはあるだろう。しかも、決戦の場はナゴヤ球場。多くの観衆はドラゴンズファンで埋まるはずだ。
 先発投手には讀賣を得意とする今中慎二投手をたてることができる。登板間隔は中4日だったか。充分な間隔とまではいかないが、スクランブル態勢下ではあり得る状況だ。中日の先発は今中投手でほぼ決まりの状況だった。

  しかし、一方の讀賣の先発投手は予想が難しかった。
 わたしは、この年いい働きをしていた桑田真澄投手を想定していたが、中1日で槙原寛巳をもってくるのを聴いて、かなり驚いたことを今でも覚えている。

  長嶋監督の采配には予測不可能な場面がたびたび起こる。こうしたシーンが功を奏したとき、マスコミはこぞって「勘ピュータ」といった表現を用いて長嶋采配を評した。
  だが、果たしてそれらは長嶋監督の頭の中だけで弾き出された偶然と運だけの産物だったのだろうか。

 今中、槙原両投手とも立ち上がりはとても固かった。それはテレビの画面で見ていても明らかだった。
 特に、槙原投手の場合、いきなり先頭打者に安打され制球を乱した。中日側としては的を小さく絞って、極力ボール球に手を出していけない場面である。だが、ボール球を振り、バッテリーエラーでは二進できず、挙句の果てに併殺打を打つ。手を伸ばせば届きそうな先制点は中日の拙攻で自ら逃した。槙原投手以上に中日ナインも固くなっていたようである。

 チャンスを自ら逸すると、相手チームに得点機はいく。それが野球というスポーツの特徴である。
 主砲落合博満が右翼スタンドに技ありの一発を放つ。厳密にいえば、右翼にあるフェンスに当たる本塁打であった。「これこそ落合」というきれいな流し打ち。落合は紛れもなく狙ってうった一発であったろう。

  しかし、その裏槙原は立ち上がりの綻びを修正できず同点に追いつかれる。なおも続くピンチに長嶋監督は投手の交代を告げた。
 二番手投手は斉藤雅樹。場内もテレビの実況席も、そしてわたしの職場も驚きにどよめいた。
 通常なら、先発投手が二回を持たずに降板した場合、ゲームプランは大きく崩れ、後の展開を有利に進めていくことは困難となっていくだろう。斉藤雅樹投手投入この場面での投手交代に長嶋監督はよほどの自信があったに違いない。
 2回裏、斉藤は見事に後続を断ち、しかもその後試合の中盤まで失点を僅か1で切り抜け、7回から桑田真澄にスイッチする。
 試合はそのまま桑田投手がぴしゃりと抑え、敵地名古屋で長嶋監督は宙に舞った。
 
 長嶋氏はNumber誌に対して、このように語っている。
「私は、ただ勝つだけでなく、お客様がどういう野球を見たいのか、どういう野球を見せれば納得できるのかを、つねに感じ、考えながらプレーしてきました」

 真剣勝負とエンターテインメント。長嶋氏が追求した野球とは単なる「勘ピュータ」などで済まされる次元のものではない。
 槙原、斉藤、桑田のリレーはこうした長嶋采配の真骨頂だったといえる。国民的行事と表現された試合は実にプロ野球最後の伝説となったのかもしれない。
 現代の野球はあまりにも無味無臭なのだろう。

  ちなみにこの試合、松井秀喜選手の送りバントより、終盤コトー選手が左翼席に運んだダメ押しの本塁打の方が印象に残っている。
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