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小田急線の代々木八幡駅を利用する機会が多くなったことは先述した。代々木八幡には立ち飲み屋がなく、わざわざ隣の駅の代々木上原まで遠征したことも(「居酒屋 やまさん」の章参照)。
そこで、今回は代々木八幡の上り側の隣駅、参宮橋で立ち飲み屋を探しに出かけた。
参宮橋は地味な駅だった。電車は各駅停車しか止まらず、駅の改札は僅かにひとつだった。駅前の商店街も地味だった。そもそも、そこが商店街であるのかも怪しかった。何軒か軒を連ねる店を順々に眺めていると、居酒屋も何軒かあるのだが、立ち飲み屋はやはり見当たらなかった。
その中で、スペインのバル風の店に釘付けになった。もしかして、立ち飲みもOKかなと思ったからだ。
店頭には立ち飲みを匂わすようなことが書いてある。
もしかしてと思い店に入った。
白亜の外観と自由奔放に絵が書き込まれた店内。
明るいラテンの雰囲気がそのままに出ている。
若い男性が店番をしていた。
その若い男性の話が実に面白かった。
彼は父親の都合でスペインに住んでいたことがあり、そのときに父親から教えてもらったバルの流儀のようなものを披露してくれた。
その話によれば、バルには幾つか種類があるらしい。
マッシュルームの店や、あとは失念したが、様々な形態のバルがあるとのこと。大人たちは数人で出かけ、様々なバルをはしごしながら飲み歩くのだという。その際、ひとりがひとつの店で金を出すため、人数分の店をはしごするのが常だという。そのバルはたいていが立ち飲みで気軽に入れるのが特徴だそうだ。
そんな話を聴きながら、わたしは「生ハム」をつまみにスペインのビール「エストレーシャ・ガリシア」を飲んだ。
「エストレーシャ・ガリシア」は瓶詰めだったが、実にパンチの効いた、刺激的なビールだった。
いつも、思うのだが、ビールはその国の気候によく合ったものが出来ると思う。そうした環境がそれを生んでいるのだから、実に当たり前の話しなのだが、「エストレーシャ・ガリシア」は少し辛口の刺激的な味わいである。わたしはスペインに行ったことがないから、スペインの気候とビールの味わいを表現することはできないが、スペインの雰囲気としては、こんな刺激が往々にあるのではないかと思うのである。
生ハムとの相性も抜群だった。そして、ビールを飲み干し、赤ワインをいただくことに。このワインでいただく生ハムも最高で、風味が全く違う。そう、お酒で肴の風味が変わることを改めて感じたのである。
お酒とは本来、そういうものかもしれない。それを考えたら欧州の食文化の奥深さを改めて思い知ったのである。
彼は、面差しもどこかハーフのように見えた。恐らくスペイン人と日本人のハーフであると思った。だが、あえて彼には尋ねなかった。
この店、「アミーゴ・デ・サン・イシドロ」は店頭での立ち飲みもOKとのことだったが、わたしは結局、カウンターに座って、彼の楽しいスペインの話に耳を傾けた。
ワインを2杯飲んで外を見ると、雨は止んでいた。
わたしは、立ち飲み屋を探すために、参宮橋を物色していたのだが、彼には「雨宿りをするため」と言っていた。
「さて、帰るかな」とわたしが言うと、彼は「また、雨が降るといけないから、傘を持っていってください」とわたしに勧めた。
その親切をわたしは快く受けて店を出た。
「傘をお返ししながら、次は立ち飲みをしますから」と彼に告げて。
また、この店に来る口実が出来たと思った。
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