20年に一度の式年遷宮。関東地方でも連日、そんなニュースが届けられる。
名古屋で仕事を終え、「ちょっと行ってみようかな」。そんな軽い気持ちでわたしは近鉄特急に乗りこみ、伊勢神宮へと向かった。
平日にも関わらず、伊勢市駅を降りる人は多かった。
鳥居を超え、参道を歩く。
伝統と格式が垣間見られる老舗の店舗が軒を連ねる。道幅は広い。
わたしはついつい癖で居酒屋を探してしまうのだが、酒場は皆無だった。その代わり、「伊勢うどん」のお店が多く見られた。
しばらく歩くと、「麦酒」という文字が目に飛び込んできた。
気のせいかと思っていたが、気のせいではなかった。なんだろうと思って、そののぼりのある店舗に近づいてみると、観光客がビールを立って飲んでいた。
わたしの悪い癖である。
立ち飲みを見ると、居ても立ってもいられなくなる。
そこは、クラフトビールの店だった。「伊勢角屋麦酒」という酒蔵さんのアンテナショップという風情。
立ち飲みというより、ビールを飲ませるスペースがないため、必然的にお客が立って飲んでしまうという状況になっているとみえる。それにしても店は狭い。
だが、ここは熊猫、突撃しなければならない。
立ち飲みのために、そしてビールのために。
クラフトビールの店舗によくあるように、お試しセットが用意されている。
「神都麦酒」、「スタウト」、「熊野古道」、「伊勢ピルスナー」。
この4種で1,000円。
「神都麦酒」はピルスナー。このビールは明治期の一時期、伊勢の河崎に存在したビールを再現したという。
「熊野古道」は「ブロンドエール」。
1杯150ml程度のセルロイドのカップに入れられたそれぞれのビールは色とりどり。クラフトビールは目でも楽しませてくれる。
ビールのあては置いていない。あくまでビールだけ。
だが、店舗の隣に「若松屋」というお惣菜の店があった。協力関係にあるのだろう。立ち飲みのカウンター部の壁はなく、「若松屋」と繋がっている。恐らく、ここからお惣菜を頼むというケースを想定したのだろう。
「若松屋」も繁盛していた。
だから、わたしはビールをカウンターに置いて、隣の店舗に行き、ショーケースを覗きながら、「ひりょうず」(350円)という揚げ物を頼んだ。
「ひりょうず」とは聞きなれない食べ物である。
姿かたちは球形で、ばくだんのような揚げ物である。これは、後で知ったのだが、「ひりょうず」は漢字で書くと「飛竜頭」。不思議な伝説チックな名称だが、伊勢の名産のようだ。若松屋のHPには「関東でいうがんもどき」とあった。
だが、この「ひりょうず」と 伊勢角屋麦酒の組み合わせが素晴らしかった。
このクラフトビールが本格的だったからだ。フルーティさを重視する地ビールが多い中、それぞれずっしりと重量感がある。
「スタウト」も本格的だ。ほろ苦さはしっかりとした熟成感すら漂う。
上面発酵のエールも水っぽくなく、逞しい味わいがある。
「ひりょうず」がまた絶品だった。
ホクホクとしてうまい。油っぽくなく、さりとてぽろぽろしているわけでもない。塩分もほどよく、薄味なのがいい。
これから、参拝するのに、いきなりビール飲んじゃっていいのかしら。
しかし、うまいクラフトビールとそれにぴったりな最高のつまみにいきなり出会うなんて、なんと幸先がよい。
まさに神のマッチング。これぞ、お伊勢さんの新しい名物。
これは罰当たりじゃない。
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