日本語ボランティア講習の帰り道、今日もどこかで寄り道酒を洒落こもうとワクワクしながら権現坂を自転車でかけ降りていた。
3週連続で「立ち飲み 日高」は面白くないなと考え、いろいろ思案していると突然「山田屋」の名前が思い浮かぶ。
北区に住み始めてはや3年4ヶ月、しかし未だ「山田屋」の縄暖簾をくぐっていない。
こういう機会でないとなかなか行けず、思い立ったが吉日、ということで、急遽「山田屋」に向うことにした。
「山田屋」については、今更ここに記すまでもないだろう。
大衆酒場のバイブル「下町酒場巡礼」や居酒屋ファンのカリスマ、浜田信郎さんの「居酒屋礼賛」などに詳細が記されている。
恐らく、この店は取材などには応じないのだろう。近年、多くの居酒屋関連本が出版されているのに、ほとんど登場しないからだ。
寺門ジモンさんではないけれど、「取材拒否の店」だとわたしは想像している。
もしかすると、太田和彦さんの「居酒屋味酒欄」に「山田屋」が掲載されていないのも、そういう理由があるのかもしれない。
なにしろ、その酒と肴の安さといったら折り紙つきである。しかも、店内のディープな雰囲気も重要文化財級である。
東京を代表する居酒屋といっていい。
酒肴の中心は240円と格安。
「ねぎぬた」から「しらすおろし」といった定番居酒屋メニューから「あじフライ」「メンチカツ」や「コロッケ」といった食事系。「すじこ」や「とり貝」の海鮮系ととにかくメニューの幅が広い。
中には「クリームチーズやっこ」とか「チーズ入り牛かつ」といったものもあり、古典的なメニューだけではない実験的な挑戦もしている。
このお店、親子三代が脈々と経営する日本でも稀有な居酒屋なのである。
店内に入ると、カウンター近くでお父さんが、まるで見張りでもしているようないかつい顔で客を眺める。お婆ちゃんはもっぱら客の御用聞きだ。
この二人だけでも鉄壁なディフェンスである。
わたしが店に入り、さてどこに座ろうかと手前にある長テーブルの上座方向に腰掛けると、すかさずお父さんがとんできて、ここはダメだからもう少し後ろに下るように促された。
これと同じことをわたしは田端の立ち飲み屋「立飲スタンド 三楽」で経験済みである。
そうやら常連さんの席らしいのだ。
そうやって、席に腰掛けたはいいが、お婆ちゃんがオーダーを取りにくることはない。自らがそのタイミングを計り、声をかけなければ永遠に何も出てこないだろう。
このタイミングがなかなか難しい。
お婆ちゃんは、絶えず動いており、なかなかわたしの近くに来ないのである。古典酒場にはよくある光景だが、この間合いを計るのはやはり場数を踏まなければならないだろう。
しかし、その間合いをなんとか読んでようやくお婆ちゃんに「生ビール」(390円)と「にこみ豆富」(230円)を注文したのは、入店から8分も経った後だった。
豆腐料理に関しては、全て同店は「豆富」と表記されていた。
先述した「にこみ豆富」、「やっこ豆富」「湯豆富」「豆富サラダ」。
もちろん、豆富と表記する店はそれほど珍しくもないが、こうした点にも同店のこだわりが垣間見える。
飲物の豊富さも特筆ものである。
生ビールはサッポロ。瓶ビールはキリンとサッポロのダブルネームである。
瓶ビールにキリンの「スタウト」やヱビスの黒もラインナップしており、この点でも酒飲みの配慮を感じさせてくれる。
焼酎は「いいちこ」に「ぶんご太郎」、清酒は「八重壽」に「白鷹」、そして左党を泣かせる「鶴齢」の純米を格安で飲ませてくれる。
ウイスキーは「ブラックニッカ」「ベール」「オールド」、泡盛は「瑞泉」を揃えて、酒飲みのニーズをほぼ満たしているといっていい。
「にこみ豆富」は素晴らしい一品だった。
スープが少ないドロ系の煮込み。中央にデーンと構えた豆腐にシロ中心のもつがプルプルになって出てきた。白味噌ベースの東京風味。
この味は大鍋でないと出ない火力の煮込み具合。
最高である。感無量である。
ビールを終えて「鶴齢」を頂く。
1合がわずか360円。
つまみに「ねぎぬた」(240円)。
最高の取り合わせである。
もはや、わたしのような素人があれやこれやと口を挟める世界ではない。
わたしは開店後10分に入った。開店時間は16時半(通常は16時)だから16時40分に店に入った訳だが、既に客の入りは8割。その後瞬く間に満員となった。
常連さんも次々に長テーブルに腰掛け、店内は酒飲みでさんざめく。
だが、決して騒々しいわけではなく、節度をわきまえて飲んでいる酔客が印象の店である。
この店を見ていると、居酒屋とは地域に生きる店であることがよく分かる。
夕方になってちょっと酒を飲むこと。それが日課とすることはなんと贅沢で満ち足りた毎日か。居酒屋は地域と文化の融合であることを同店は黙ってわたしに示してくれる。
3週連続で「立ち飲み 日高」は面白くないなと考え、いろいろ思案していると突然「山田屋」の名前が思い浮かぶ。
北区に住み始めてはや3年4ヶ月、しかし未だ「山田屋」の縄暖簾をくぐっていない。
こういう機会でないとなかなか行けず、思い立ったが吉日、ということで、急遽「山田屋」に向うことにした。
「山田屋」については、今更ここに記すまでもないだろう。
大衆酒場のバイブル「下町酒場巡礼」や居酒屋ファンのカリスマ、浜田信郎さんの「居酒屋礼賛」などに詳細が記されている。
恐らく、この店は取材などには応じないのだろう。近年、多くの居酒屋関連本が出版されているのに、ほとんど登場しないからだ。
寺門ジモンさんではないけれど、「取材拒否の店」だとわたしは想像している。
もしかすると、太田和彦さんの「居酒屋味酒欄」に「山田屋」が掲載されていないのも、そういう理由があるのかもしれない。
なにしろ、その酒と肴の安さといったら折り紙つきである。しかも、店内のディープな雰囲気も重要文化財級である。
東京を代表する居酒屋といっていい。
酒肴の中心は240円と格安。
「ねぎぬた」から「しらすおろし」といった定番居酒屋メニューから「あじフライ」「メンチカツ」や「コロッケ」といった食事系。「すじこ」や「とり貝」の海鮮系ととにかくメニューの幅が広い。
中には「クリームチーズやっこ」とか「チーズ入り牛かつ」といったものもあり、古典的なメニューだけではない実験的な挑戦もしている。
このお店、親子三代が脈々と経営する日本でも稀有な居酒屋なのである。
店内に入ると、カウンター近くでお父さんが、まるで見張りでもしているようないかつい顔で客を眺める。お婆ちゃんはもっぱら客の御用聞きだ。
この二人だけでも鉄壁なディフェンスである。
わたしが店に入り、さてどこに座ろうかと手前にある長テーブルの上座方向に腰掛けると、すかさずお父さんがとんできて、ここはダメだからもう少し後ろに下るように促された。
これと同じことをわたしは田端の立ち飲み屋「立飲スタンド 三楽」で経験済みである。
そうやら常連さんの席らしいのだ。
そうやって、席に腰掛けたはいいが、お婆ちゃんがオーダーを取りにくることはない。自らがそのタイミングを計り、声をかけなければ永遠に何も出てこないだろう。
このタイミングがなかなか難しい。
お婆ちゃんは、絶えず動いており、なかなかわたしの近くに来ないのである。古典酒場にはよくある光景だが、この間合いを計るのはやはり場数を踏まなければならないだろう。
しかし、その間合いをなんとか読んでようやくお婆ちゃんに「生ビール」(390円)と「にこみ豆富」(230円)を注文したのは、入店から8分も経った後だった。
豆腐料理に関しては、全て同店は「豆富」と表記されていた。
先述した「にこみ豆富」、「やっこ豆富」「湯豆富」「豆富サラダ」。
もちろん、豆富と表記する店はそれほど珍しくもないが、こうした点にも同店のこだわりが垣間見える。
飲物の豊富さも特筆ものである。
生ビールはサッポロ。瓶ビールはキリンとサッポロのダブルネームである。
瓶ビールにキリンの「スタウト」やヱビスの黒もラインナップしており、この点でも酒飲みの配慮を感じさせてくれる。
焼酎は「いいちこ」に「ぶんご太郎」、清酒は「八重壽」に「白鷹」、そして左党を泣かせる「鶴齢」の純米を格安で飲ませてくれる。
ウイスキーは「ブラックニッカ」「ベール」「オールド」、泡盛は「瑞泉」を揃えて、酒飲みのニーズをほぼ満たしているといっていい。
「にこみ豆富」は素晴らしい一品だった。
スープが少ないドロ系の煮込み。中央にデーンと構えた豆腐にシロ中心のもつがプルプルになって出てきた。白味噌ベースの東京風味。
この味は大鍋でないと出ない火力の煮込み具合。
最高である。感無量である。
ビールを終えて「鶴齢」を頂く。
1合がわずか360円。
つまみに「ねぎぬた」(240円)。
最高の取り合わせである。
もはや、わたしのような素人があれやこれやと口を挟める世界ではない。
わたしは開店後10分に入った。開店時間は16時半(通常は16時)だから16時40分に店に入った訳だが、既に客の入りは8割。その後瞬く間に満員となった。
常連さんも次々に長テーブルに腰掛け、店内は酒飲みでさんざめく。
だが、決して騒々しいわけではなく、節度をわきまえて飲んでいる酔客が印象の店である。
この店を見ていると、居酒屋とは地域に生きる店であることがよく分かる。
夕方になってちょっと酒を飲むこと。それが日課とすることはなんと贅沢で満ち足りた毎日か。居酒屋は地域と文化の融合であることを同店は黙ってわたしに示してくれる。
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