「BBB」

BASEBALL馬鹿 BLOG

緊急連載 「明日の広島カープを考える」♯2 ~チーム編成について~

2007-11-17 15:44:21 | Weblog
 黒田投手は新井選手のFA宣言を聞いてこういったとされる。
 「新井がいないと広島の優勝は考えられない」(11月10日付け日刊スポーツより)。
 黒田投手がカープのチーム運営、殊にチームの補強について真剣に考えていたことがよく分かる言葉だ。
 一方、新井選手についても、黒田投手はこう慮っている。
 「新井は間違いなく、チーム全体のことを一番考えていた。(中略)それでも決断をしたのだから悩みは深かったのだろう」(同)。
 新井選手が抱えていた悩みとは一体何だったのか。
 先の記者会見で新井選手は「優勝争いがしたい」と言った。
 彼が胸を痛めていたのは、チームの編成についてではなかっただろうか。

 黒田投手と新井選手のFA宣言は、チーム内にそうした不満が今まで燻ってきた証である。
 そうした鬱積したものが、突如爆発したのが、今回のエースと4番打者のFA宣言だったとも考えられる。

 ご存知の通り、広島カープは独立採算制のチーム経営で、資金を無尽蔵に持っていない球団である。
 自ずと、チームの補強にはかなりの制約があり、基本的には選手を育成する考えの球団だ。
 このため、FA宣言に関しても、去るものは追わず、去らないものはFA宣言を行うことをよしとしなかったのである。
 結果的にカープは逆指名制度、FA制度の狭間でチーム力を弱体化させてきた経緯がある。
 昨年、表面化した黒田投手のFA宣言においても、恐らく「優勝に向けたチーム作り」を双方確認したことだろう。
 だが結局、チームは早々と優勝戦線はおろか、クライマックシリーズの出場権さえ得ることなく、最下位争いに甘んじたのだった。

 昨年のカープは高校生ドラフトで将来性溢れるPL学園高校の前田健太投手を指名、大学・社会人ドラフトでも即戦力投手を指名した。
 特に大学・社会人度ドラフトで指名した上野弘文投手は千葉ロッテマリーンズと相思相愛といわれた中を強行氏名。入団に漕ぎ着けるなど、近年のドラフトにはないアグレッシブさを感じさせた。
 だが、優勝を本気で狙う補強とはお世辞でも言えない。

 ここ15年ほどのカープのドラフト戦略はなるべく他球団との重複を避ける傾向にあった。
 せっかくスカウトが長年追っかけてきた選手でも、他球団が獲得に乗り出すと、カープがその選手の指名を自ら降りることがしばしばあった。
何に気を使っているのか、ファンもカープの選手も忸怩たる思いを幾度となくしてきたことだろう。それは、南海ホークスがダイエーに球団を譲渡して、ダイエーが本拠地を福岡に移してきた頃から顕著になった。
それまでのカープは九州出身の選手を多く獲得してきたが、それを境に減少傾向を見せるようになる。
 もちろん、ダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)のスカウト網が当然のことながら九州に力点を置いたことが大きな理由だが、インターネットの普及などで情報が瞬時に伝わるように社会が変化してきたこととも無関係ではない。
 とにかく、ダイヤの原石を探すことはかつてほど難しくはなくなったのだ。

 ともあれ、こうした背景からカープのドラフト戦略は大きな見直しを迫られたのである。
 だが、何故カープはドラフトでの競合を避けるようになったのだろうか。誤解を 恐れずに敢えて言うのならば、裏金にまつわる問題だろうか。
 ダイエーホークスが誕生した頃から球界は裏金の存在が度々指摘されるようになってきた。
 例えば、オリックススカウトの三輪田勝利氏が「ドラフト制度改革、逆指名制度はナンセンス」という走り書きを残して自死したことに象徴されるように、球界は裏金が横行する。
 昨年、クローズアップした裏金の問題は、ここでもカープを蚊帳の外にしたのである。

 さて、黒田投手と新井選手がチームを去ろうとしている今、球団運営は変化していくのであろうか。
 もっと直接的に言えば、チーム編成に積極性が現れるのだろうか。
 球団が独立採算で経営している以上、大枚をはたいた選手獲得は有り得ないが、少なくとも投資に見合った活躍をする選手ならば、いくらかの金をかける補強もありえるのではないか。
 現に、19日に行われる大学・社会人ドラフトでは今秋の目玉とされる超即戦力候補の呼び声高い、慶応義塾の加藤幹典、愛知工大の長谷部康平両投手の指名を予定している。高校生ドラフトでは成田高校の唐川侑己投手を競合しながら指名した。
また、松田元オーナーはぽっかり空いたホットコーナーのポジションには、「まず全力を尽くして外国人を獲りに行く。力と年俸のバランスがよければ、高くても金を出す」(11月9日付け日刊スポーツ」と明言した。
 そして、かつてのブラウン監督の教え子、メジャーリーグでも勝ち投手となった多田野数人投手もこのドラフトで指名する方針との情報もある。3巡目の指名を予定しているという情報が正確であれば、もう一方で獲得を目指しているとする日本ハムを抑えて獲得できるはずであろう。

 更に、これまでFA制度で放出した見返りとして人的補償を求めてこなかったが、新井選手に関しては人的補償を移籍球団に要求する方針。
 この状況もこれまでカープには見られなかった姿勢である。

 だが、こうしてチーム編成に本腰を入れた今、全ては遅きに失したといってもいい。
 その代償はおまりにも大きすぎたことは間違いない。


<次回のテーマは『人的補償は誰?』です。5回シリーズに渡ってお届けする当連載は毎週土曜日頃に掲載します>

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 居酒屋放浪記NO.0146 ~うっ... | トップ | 居酒屋放浪記NO.0147 ~立ち... »

コメントを投稿