
目黒駅から東へ向かうと、すぐに首都高速が走っていた。
高級住宅地に高速道路が横切っているのはなんとも不思議な感じだった。空気が悪い。騒音もある。ボクは途中で横道に逸れ、住宅街を歩いた。
行先は決まっていた。
ヱビスビール記念館。立ち飲みラリー山手線編は目黒から恵比寿へ舞台を移すのである。
実は、「居酒屋さすらい」ではこれまで「ヱビスビール記念館」を4回訪れ、掲載してきた。これは1か所としては最多タイだった。今回の掲載で5回目となり、単独首位になる。
元来、キリンビールの方が好きな自分にとって、これは意外なことだった。
でも、テイスティングサロンでは1杯400円でおいしいビールをいただくことができるし、お洒落な各種おつまみも僅か400円だ。しかも、サロンの居心地は抜群にいいし、ビールを注ぐスタッフは皆美しい。
だが、何故立ち飲みラリーにヱビスビール記念館なのだろうか。
実は前回訪れたとき、気が付いたのだが、ここには立ち飲みスペースがあった。テーブル席とは逆サイドに背の高い丸テーブルがあって、そこで西洋人がひとり立って飲んでいるのを発見した。
立ち飲み屋ではないが、立ち飲みスペースがある。最近は、そんな店がかなり増加してきたような気がする。
ともあれ今回、ボクは立って飲むためにここを訪れた。
まず、ベンダーでコインを買い、そのコインを持ってフロントに並ぶ。
「ヱビス スタウトクリーミートップ」と「ホットドッグ」を注文した。各400円。
スタウトの生はこことヱビスバーだけでしか飲めない。
プレーンのヱビスは甘くて好きではないが、スタウトのほろ苦さがボクは好きだ。
そして、この欄ではもう何度も紹介した、ビールをタワーから注ぐ女性の手つき。これだけ楽しめて1杯400円は安い。
懸念していたのは立ち飲みスペースの問題。テーブルに先客がいたら、しぶしぶ座り席へ行かなければならない。
だが、ボクの心配は杞憂だった。
立ち飲みスペースの丸テーブルには誰もいなかった。
それもそうだ。座り席が空いているのに、誰がわざわざ立って飲むのだろう。
だが、ボクはそのわざわざの側に向かった。そして立ったまま、スタウトのタンブラーに口をつけた。
うまい!ダントツにうまい!
コクのある苦味。鼻腔をくぐりぬけていくスモ―キーな薫り。喉越しもなめらかでシルクが喉をすり抜けていくようだ。
そしてホットドッグ。パンの柔らかな感触を愉しみ、恐る恐る口に含む。ソーセージにかぶりつくとカシュッと折れ、プチンと汁が流れ出てくる。なんてうまいんだろう。ピクルスのみじん切りが口に入ると、酸味によって、食欲は増幅する。
そのままタンブラーを掴み、ビールを飲む。いばらくその繰り返しをした。
なんという至福な時間。
わざわざここへきてお金を払う価値がここにはある。
だから、ボクはここについつい足を運んでしまうんだろう。でも、やっぱりここは座って飲むに限る。
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