羽田空港からの帰途は思いもかけず、気持ちが沈んでいた。
まさか、涙がこぼれるとは。
まだ梅雨明けもしない7月上旬のこの日、妻は出産のため、長女を連れて里帰りをした。この先、約2ヶ月半もの間、わたしは独身生活に突入し、自由な生活を謳歌する気持ちでいっぱいだったにも関わらず。
保安検査場の前での別れ際、なんの前触れもなく、たくさんの涙が突如として溢れてきたのだ。娘はそんな父親の顔を見ながら、不思議そうな面持ちで、出発ロビーの方へと消えていった。
なんだか少し、心に穴が開いたような頼りない気持ちだった。帰りの電車に乗り込もうと歩き始めたのだが、膝に力が入らなかった。
『酒でも飲めばなおるかな』。
昼間からやってる酒場があるのは、やっぱ蒲田か。そう思い、わたしは帰宅に使うモノレールではなく、京浜急行の車両に乗り込んだのだった。
京急蒲田駅西口を降りる。何年ぶりだろうか。京急蒲田に降りるのは。
京急蒲田西口から屋根つきの商店街が伸びる。かつて、この商店街の中華料理屋によくチャーハンを食べに来たっけ。 この商店街から一本道を隔てると飲食店が並ぶ小さな繁華街がある。そこなら、日曜日でも昼間から開いている居酒屋があるだろう。
商店街に入り、はじめの十字路にさしかかった。右に行けば繁華街だ。わたしが右に曲がろうとしたところ、左目の視界に居酒屋のネオンが入った気がした。
振り向くと、確かにそこに居酒屋があった。
黄色いシートの看板には『とり薪』と書いてある。どうやら、焼き鳥屋さんのようだった。
中を覗いて素通りした。まず、温泉に入って身を清めてから入店することにしたのだ。
風呂から上がって、店に入ってみた。挨拶こそあったが、少し陰気臭い。
どこに座っていいか分からず、カウンターの空いているところに腰掛けた。
日曜日の2時過ぎなのに店は賑わっていた。カウンター、テーブルともお客が埋めている。
わたしは、まず生ビールを注文した。ジョッキで出てきたビールはサントリーのモルツ。よく冷えた風呂上がりに相応しい一杯だ。
まずは、モツ煮込み(380円)。お手並み拝見といきましょう。しかし、さすが、焼き鳥の店、煮込みの部をわきまえている。出汁は鶏ガラベースの醤油味だ。つゆの色も黒く、このは味は珍しい。
鶏ガラの味だから、あっさりとしていて、実においしい。関東地方の雑煮を彷彿とさせる素朴な味だ。
だが、店の雰囲気はやや暗い。店の隅にあるテレビからは日曜日の競馬中継。地方開催は夏の始まりを告げるが、店のマスターはほとんどテレビに張り付きっぱなし。或いは、超強面の客と蒲田近辺の空きテナントの相談にのる。
その超強面、ニュートラを羽織り、スキンヘッドにサングラスといういでたちで。明らかにそっち系の御仁だ。
唯一、店の雰囲気を明るくしていたのが、ディアマンテスのボーカル、アルベルト城間に似た異国の従業員だ。ニコニコと笑顔を振りまき、黙々と働いている。そのキビキビとした動きは唯一、店の活力となっていた。
次に「ガツ刺し」(400円)を頼んだ。
本当は「モツ焼き」を貰いたかったが、目の前の保冷機にある串に刺さった「モツ焼き」を見て、どうも触手が伸びなかったというのが本音である。とりわけ、貧相な肉でもなかったが…。単なる気分の問題である。だから、同店自慢の「備長炭で炙る」モツ焼きを味わうことがなかった。だが、周囲の客はモツ焼きを頼む者が大勢おり、その人気ぶりは確かなようである。
「ガツ刺し」の肉も悪くなかった。日曜日だから、肉の仕入れは前日に行っているはずで、恐らく冷凍のものが出てくると思っていたが、さにあらず。これも保冷機で一晩冷蔵していたものであろう。
飲み物には酎ハイを貰った。これがちょっと甘い代物。恐らく、メーカーが作ったもので、自家製ハイボールではないと思う。
残念ながら、ビールも酎ハイも値段を控えてくるのを忘れたが、生ビール1杯に酎ハイ2杯、そして既述したつまみを頼み、2000円でお釣りがきたくらいだから、値段は良心的なお店だ。
しかも、日曜日の昼間から営業している点もかなり重宝。競馬にパチンコ。この店はギャンブラーが集う店とみた。
まさか、涙がこぼれるとは。
まだ梅雨明けもしない7月上旬のこの日、妻は出産のため、長女を連れて里帰りをした。この先、約2ヶ月半もの間、わたしは独身生活に突入し、自由な生活を謳歌する気持ちでいっぱいだったにも関わらず。
保安検査場の前での別れ際、なんの前触れもなく、たくさんの涙が突如として溢れてきたのだ。娘はそんな父親の顔を見ながら、不思議そうな面持ちで、出発ロビーの方へと消えていった。
なんだか少し、心に穴が開いたような頼りない気持ちだった。帰りの電車に乗り込もうと歩き始めたのだが、膝に力が入らなかった。
『酒でも飲めばなおるかな』。
昼間からやってる酒場があるのは、やっぱ蒲田か。そう思い、わたしは帰宅に使うモノレールではなく、京浜急行の車両に乗り込んだのだった。
京急蒲田駅西口を降りる。何年ぶりだろうか。京急蒲田に降りるのは。
京急蒲田西口から屋根つきの商店街が伸びる。かつて、この商店街の中華料理屋によくチャーハンを食べに来たっけ。 この商店街から一本道を隔てると飲食店が並ぶ小さな繁華街がある。そこなら、日曜日でも昼間から開いている居酒屋があるだろう。
商店街に入り、はじめの十字路にさしかかった。右に行けば繁華街だ。わたしが右に曲がろうとしたところ、左目の視界に居酒屋のネオンが入った気がした。
振り向くと、確かにそこに居酒屋があった。
黄色いシートの看板には『とり薪』と書いてある。どうやら、焼き鳥屋さんのようだった。
中を覗いて素通りした。まず、温泉に入って身を清めてから入店することにしたのだ。
風呂から上がって、店に入ってみた。挨拶こそあったが、少し陰気臭い。
どこに座っていいか分からず、カウンターの空いているところに腰掛けた。
日曜日の2時過ぎなのに店は賑わっていた。カウンター、テーブルともお客が埋めている。
わたしは、まず生ビールを注文した。ジョッキで出てきたビールはサントリーのモルツ。よく冷えた風呂上がりに相応しい一杯だ。
まずは、モツ煮込み(380円)。お手並み拝見といきましょう。しかし、さすが、焼き鳥の店、煮込みの部をわきまえている。出汁は鶏ガラベースの醤油味だ。つゆの色も黒く、このは味は珍しい。
鶏ガラの味だから、あっさりとしていて、実においしい。関東地方の雑煮を彷彿とさせる素朴な味だ。
だが、店の雰囲気はやや暗い。店の隅にあるテレビからは日曜日の競馬中継。地方開催は夏の始まりを告げるが、店のマスターはほとんどテレビに張り付きっぱなし。或いは、超強面の客と蒲田近辺の空きテナントの相談にのる。
その超強面、ニュートラを羽織り、スキンヘッドにサングラスといういでたちで。明らかにそっち系の御仁だ。
唯一、店の雰囲気を明るくしていたのが、ディアマンテスのボーカル、アルベルト城間に似た異国の従業員だ。ニコニコと笑顔を振りまき、黙々と働いている。そのキビキビとした動きは唯一、店の活力となっていた。
次に「ガツ刺し」(400円)を頼んだ。
本当は「モツ焼き」を貰いたかったが、目の前の保冷機にある串に刺さった「モツ焼き」を見て、どうも触手が伸びなかったというのが本音である。とりわけ、貧相な肉でもなかったが…。単なる気分の問題である。だから、同店自慢の「備長炭で炙る」モツ焼きを味わうことがなかった。だが、周囲の客はモツ焼きを頼む者が大勢おり、その人気ぶりは確かなようである。
「ガツ刺し」の肉も悪くなかった。日曜日だから、肉の仕入れは前日に行っているはずで、恐らく冷凍のものが出てくると思っていたが、さにあらず。これも保冷機で一晩冷蔵していたものであろう。
飲み物には酎ハイを貰った。これがちょっと甘い代物。恐らく、メーカーが作ったもので、自家製ハイボールではないと思う。
残念ながら、ビールも酎ハイも値段を控えてくるのを忘れたが、生ビール1杯に酎ハイ2杯、そして既述したつまみを頼み、2000円でお釣りがきたくらいだから、値段は良心的なお店だ。
しかも、日曜日の昼間から営業している点もかなり重宝。競馬にパチンコ。この店はギャンブラーが集う店とみた。
冒頭の記事の文に私もうるっとしてしまいました。それだけ愛情の絆の家族なんだなぁと思いました。
飲み行きたかったなー。でももうすぐ奥さん娘さんがお戻りですよねー。こんど熊猫先生と飲みにいけるのはいつの日か……。
再会でも泣く!!とみた! 違うかっ!(笑)
アーティストからお誉めの言葉を頂けるとは、ホント嬉しいです。
家族ってなんなのでしょうか。
浅羽さんもライブのMCで家族についてふれられていますね。
ボクにとっても家族は永遠のテーマです。
今までは親が体制でした。でも、子供が生まれて、今度は自分が体制側になってしまいました。恐らく、これから子供のことで多かれ少なかれ悩むことでしょう。
浅羽さんの楽曲からもそうした家族や人との関係の深いテーマが絞り出すようなエモーションで聞こえてきます。
今p、こんばんわ。
またもや、アーティストからのコメント。嬉しいです。
やっぱりバタバタしてましたか。
てっきり、黙殺されてしまったのかとも思いました。
今日、A見さんと話しをしていて、「アントニオ猪木酒場」の話題になり、「今pと行ってくれば?」と彼女はわたしに言いました(笑)。
さて、明日怪鳥と浅草の飲みますが、今pも都合がついたら是非おいでください。
これを逃すと、わたしは、しばらく居酒屋活動を無期限で停止します(サザンオールスターズのように)。
ちなみに娘との再会は泣く事はないでしょう。何度か、山口に行って娘と会いましたが、涙がうるうるするのは、決まって別れ際なのですよ。
二人目おめでとうございます!!
育ち盛りの娘さんと、奥さんが居ない家は、
し~んとしてたかもしれませんが、
みんなが帰ってきたらまた賑やかになるだろうな~と思います♪
男の子なんで、お父さん一人孤立しないで済みそうです。
家はシーンとしていましたが、これから賑やかになりそうでちょっと怖いです。
居酒屋活動は大幅に減りますね。
このブログも新たなテーマを見いだしていかなければならないようです。
日本酒好きの友達は、
まだ1歳のお子さんですが、お猪口をもって乾杯してくれるそうです。
なんてナイスな酒教育?!
今朝、朝食の食卓で上の子が「それお酒?」とコーヒーを指差して言いました。
しっかり、教育せねば。
姪っ子は夕食時になると、おじいちゃんにビールを持ってきてくれるそうです。
教育を間違えると「ウォータービジネス」の世界に入り込む恐れも?