ようやく来ることができた。
名酒場の誉れ高い月島の「岸田屋」。
その名声は、もはやわざわざ説明するまでもない。
実は今回、初めて暖簾をくぐったのである。これまでも何回か店の前を通り過ぎたことはあったが、どうにも敷居が高い。結局、今日に至るのである。
ビッグサイトからの帰り道、豊洲にいい酒場はないし、それならちょっと歩いてみたら、月島に出てしまったのだ。それなら思い切って、長年の課題だった「岸田屋」へ行こうと思った。
暖簾をくぐる瞬間はちょっと緊張した。そして引き戸を開けた時、感じたのが、「狭っ」だった。てっきり、門前仲町の「魚三酒場」くらいあるのかと思っていた。いや、そんなことは建物の幅を見れば、大体想像がつくのだが、何故か勝手なイメージを自分なりに膨らませていたのだ。
時刻は16:45。
コの字カウンターは既にいっぱいで、自分は壁際のカウンターに通された。出来れば、お客さんの面々を眺めながら、一杯飲りたかったが、今目の前にあるのは壁である。
まずは「チューハイ」(550円)をちょっと艶っぽいお姉さんに告げる。そして、頭上にある札メニューを眺めながら、料理のチョイスに入った。
まず、「牛にこみ」(700円)は外せないよな。
などと考えながら、あれこれ思案してると、艶っぽいお姉さんが来て、「お飲み物はどうする?」ときいてきた。
「あれ? さっき頼んだけど」と言うと、「あ!」と言って、笑いながら体をぶつけてきた。快活なお姉さんである。中学の頃とか、なんだかやけに馴れ馴れしくボディタッチをする子がいて、なんだか好きになっちゃったことがあった。こういうお姉さんは危険である。
ともあれ、まずは「チューハイ」が無事に来た。そして、「牛にこみ」を正式にオーダーする。
太田和彦さん提唱の三大煮込みのひとつ。いや、それより前に、漫画「美味しんぼ」で絶賛された煮込み。その煮込みが眼前に置かれた。これで三大煮込みをようやくコンプリートした。
煮込みは皿に盛られており、とろっとろ。牛を使っている点からすると、「大はし」と同じスタイルだ。コクがあるけど、和食っぽく、やはりうまい。
「大はし」はボールによく合う味付けで濃いめの煮込みつゆだが、「岸田屋」はどちらかといえば、日本酒でもいけるような気がした。
そこで2杯目から、「菊正宗」にスイッチ。
メニューも和食の酒肴が並んでいるし、古い建物と雰囲気で、日本酒へと誘導された。2品目は筋子奴みたいな料理を選択。豆腐は大好きだし、筋子とはまた珍しい。日本酒との相性も抜群で、久々のベストチョイスになったと思った。その予感は的中し、本当においしかった。
しおからい筋子をちょびちょびつまみつつ、豆腐をいただく。この相性の良さは新発見。
その後艶っぽいお姉さんは出てこなかった。もしかすると17時でシフトを交代したのかもしれない。
「菊正宗」をもう一合おかわりして、店を後にした。
雰囲気は抜群、酒肴がよく、しかもお店の人も優しい。名店になっても驕ることなく、仕事をする。いい酒場だ。
また是非、ここには来たい。
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