労働基準法は、「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義している。
この“労働者性”は、
(1) 仕事の依頼や業務の指示等に対する諾否の自由の有無
(2) 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
(3) 勤務場所・時間についての指定・管理の有無
(4) 労務提供の代替可能性の有無
(5) 報酬の労働対償性
(6) 事業者性の有無(機械や器具の所有や負担関係や報酬の額など)
(7) 専属性の程度
(8) 公租公課の負担(源泉徴収や社会保険料の控除の有無)
等を総合的に考慮して判断される。
この定義および判断要素によれば、例えば「子会社の従業員」や「取引先である個人事業主」などは、労働基準法および労働基準法を基礎とした法律(労働安全衛生法、最低賃金法、労災保険法、労働者派遣法等)では「労働者」として扱われない。
ところが、労働組合法は、これと異なり、「労働者」を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義している。 これは、憲法第28条の「勤労者」と同じ範囲を示すものと解され、労働関係調整法も同じ定義を用いている。
労働組合法や労働関係調整法は労使が対等な関係で労働条件を決めることを促すのが目的であるため、取り締まり法令である労働基準法よりも「労働者」を広くとらえているのだ。
これに関し、厚生労働省に設置された労使関係法研究会はその報告書で、労働組合法上の労働者性については以下の要素を用いて総合的に判断すべきである旨をとりまとめた。
① 事業組織への組み入れ
② 契約内容の一方的・定型的決定
③ 報酬の労務対価性
④ 業務の依頼に応ずべき関係
⑤ 労働力の処分権を契約の相手方に委ねているかどうか
⑥ 顕著な事業性
※①・②・③:基本的判断要素、④・⑤:補充的判断要素、⑥:消極的判断要素
【参照URL】https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001juuf.html
さて、企業経営者にとってこれが問題となるのは、自社の従業員でない者(上に挙げた「子会社の従業員」や「取引先である個人事業主」など)に係る労働条件について労働組合から団体交渉を要求された時だ。
こうした場合は、まず、当社が団体交渉の相手先たる理由をその労働組合に尋ねるべきだ。 その回答を上述①~⑥に照らして自社に“使用者性”があるかどうかを見極めたうえで、会社としての対処を考えなければならないことになる。
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