昨今は企業内で組織される労働組合は少なくなっているが、その反面、合同労組(※)が労使紛争に関与するケースが増えている。むしろこういう状況下にあって、かつては組合対策など考える必要の無かった中小・零細企業を含め、すべての企業において、団体交渉を申し入れられる可能性が高まっているとすら言える。
(※)「合同労組」とは、企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する労働組合を言う。具体的には「合同労組」・「一般労組」・「地域ユニオン」等と呼称され、主に中小企業の労働者が個人加盟しているのが特徴。
さて、労働組合(企業内労組であるか合同労組であるかを問わず)から団体交渉を求められた場合、その開催場所はどのように決めるべきだろうか。
団体交渉の開催場所は、労使双方が話し合って決めるべきものである。したがって、組合側が指定した場所とする義務は無いし、「社外開催が望ましい」と主張する識者(特に経営者側弁護士)も多い。
しかし、会社が開催場所を指定し、合理的な理由なくそれに固執してしまうのは、不当労働行為とみなされるケースもあるので気を付けたい。国立大学の地方キャンパス(以前は別の大学であった)の教職員のみで組織する労働組合との団体交渉に関し、「大学本部で開催し、交渉時間は昼休みの1時間に限る」とした大学側の対応を、中央労働委員会が「不誠実団交」(労働組合法第7条違反)と断じた(平成23年(不再)第18号)のは、覚えておきたい事例の一つだ。
一般的に団体交渉は、労働者側に過度の負担を強いないよう、労働者の就労場所の近くで開催するべきであろうし、また、費用支出(社外開催における会場費等)が発生する場合は会社側が負担すべきであろう。これは法律上の義務ではないが、組合から「団体交渉拒否」とのそしりを受けないための防衛策と考えるべきだ。
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