従業員同士の恋愛に頭を悩ませている経営者もいることだろう。
従業員間の恋愛関係が業務にプラスに働くケースも無いではないが、周囲の目をはばからずにいちゃついたり、当人同士の感情を業務に持ち込んだり、何かと業務に支障の出るケースの方が目立つからだ。
しかし、だからと言って、「社内恋愛は禁止」などと就業規則に定めるのは、“愚策”の部類に入るだろう。
なるほど、就業規則は、その内容も含め会社が一方的に制定することができるものには違いない(従業員の意見聴取にあたり反対意見が出されたとしても就業規則の成立には影響しない)が、現実にその規定を運用するにあたっては、そもそも「社内恋愛」を定義することからして難しく、まして、それを理由に懲戒を科すのは公序良俗違反として無効となる可能性が高いからだ。加えて、従業員間に、人間の自然な感情に会社が口出しすることへの是非論やそれをきっかけとする会社への不満が湧き出してしまうおそれすらある。
これが実際に、職場の風紀を乱したり、会社に有形無形の損害を与えたりしたなら、社内恋愛とは関係なく、その事実に対する責任を問うべきではある。それが就業規則の懲戒事由に該当するなら、それを適用して粛々と懲戒処分を科せば良い。無論、就業規則が適正に制定され、その内容が従業員に周知されていることが前提の話ではあるが。
さて、では、それが不倫関係であったらどうだろうか。
不倫すなわち配偶者がありながら他の異性と交際することは、社会的には非難されるべき行為であるとは言え、私的行為に他ならない。そのため、裁判所は、就業規則に違反しない限り、会社がこれに対する懲戒を科すことはできないとしている(旭川地判H1.12.27、類似:東京地判S45.4.13等)
とは言うものの、特に不倫関係の場合は、社内外で悪い評判が立ちやすく、関係者から苦情が入ることもありがちなので、そうした時こそ、就業規則に則って厳正に処分すれば良い。ただし、その場合でも、“懲戒解雇”となると、行為と処分とのバランスにより、その妥当性について裁判所の判断もケースバイケースで分かれている(肯定:東京高判S41.7.30、否定:岡山地判S41.9.26等)ので、要注意だ。
なお、通常の恋愛関係であれ不倫関係であれ、目に余るような行為があれば、上司や同僚がインフォーマルに、節度を保つようたしなめるのが、最良の対処法であろう。
もっとも、それが容易でないからこそ、頭を悩ましておられたのかも知れないが。
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