2年ほど前、労働基準法の改正案が国会に上程されて物議を醸したのは記憶に新しい。中でも、働き方を大きく変える制度として、「ホワイトカラー・エグゼンプション」と並んで賛否両論が交わされたのが、「年次有給休暇(以下、「年休」と略す)の取得義務づけ」だ。
改正案によれば、会社は、年間10日以上の年休を与えるべき従業員に、
①本人が希望した時季に与える、
②労使協定に基づき計画的に付与する、
③個別に時季を指定する、
のいずれかにより、年間5日以上の年休を取得させなければならないものとされ、これに違反した場合の罰則(30万円以下の罰金)まで設けられている。
結局この法案は継続審議となったが、そう遠くない将来には成立すると思って、各社で準備を進めておく必要があるだろう。
さて、では、その年間5日をどうやって取らせるかであるが、会社にとっては、上に挙げた3つのうちでは、②の「計画的付与」が最も使いやすい制度と言えそうだ。
現状年休消化率が低い職場で①を期待するのは無理であろうし、「取らせない」という選択肢が無い以上、③により現場任せ・成り行き次第にするくらいなら、予め業務に支障の無い時季を設定しておくのが賢明だからだ。加えて、年休の計画的付与には、「誰がいつ休むか分かっているので業務分担等の計画が立てやすい」、「(特に退職時など)年休をまとめて消化するのを防げる」、「部門単位・フロア単位などで導入することにより、省エネ効果も期待できる」などといった副次効果もある。
この制度をこれから導入しようと考えている会社は、まず労使協定の締結が必要(労働時間等設定改善委員会の決議をもって代えることも可)なので、従業員の意見の集約に向けて今から準備に取り掛かっておくと良いだろう。
ところで、皆さんの会社では、「年休管理簿」は整備されているだろうか。
そもそも、各人ごとに「どれだけの年休があり(付与日数)、どれだけ使ったか(取得日数)」を記録しておかなければ勤怠の管理すらできないはずだが、それを備えていない会社も少なからず見受けられるところだ。それでは、「年休を取得させないことを前提としている」と誹られてもやむを得まい。
今般の労働基準法改正案でも年休管理簿の作成・保管が義務づけられることになっているが、それ以前に、労務管理上の必須帳簿として整備しておくべきものとの認識が必要だ。
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