ご苦労さん労務やっぱり

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有期雇用契約を期間途中で解除するには

2023-02-13 09:59:09 | 労務情報

 期間を定めた雇用契約は、やむを得ない事由があるときは、各当事者は(労使とも)契約の解除をすることができる(民法第628条)。 そして、使用者は、やむを得ない事由が無いときは、期間満了前に労働者を解雇することができない(労働契約法第17条第1項)
 この「やむを得ない事由」というのは、例えば、会社が倒産の危機に瀕しているとか、当該労働者の重大な規律違反とか、つまり、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由であることが求められている(大阪地判H25.6.20、さいたま地判H26.4.22等)。
 期間を定めない雇用契約を解除する場合(いわゆる正社員の解雇)に必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる理由」(同法第16条)よりも厳格なものだ。

 ちなみに、証券アナリストとして有期雇用した外国人がその能力(特に日本語能力)の低さから解雇された事案では、裁判所は、即戦力の専門職として雇い入れたもののレポートの出来栄えが会社の期待に遠く及ばないこと、採用前に提出した日本語レポートは日本人である夫に見てもらっていたこと(およびそれを秘匿していたこと)、試用期間中の解雇であったこと等を勘案し、解雇を有効と断じている(東京地判H25.1.31)。 契約期間途中で解雇するには、ここまでハードルが高いと理解しておくべきだろう。

 したがって、やむを得ないとまでは言えないほどの理由(例えば余剰人員の増加等)では、解雇ができないので、当該労働者に退職を勧奨して合意退職に持ち込むしかない。 合理的な理由に基づき退職を勧奨すること自体には、何ら違法性は無い。 とは言え、勧奨しても本人が応じなければ合意退職は成立しないので、本人にとってのメリット・デメリットをきちんと説明して納得を得られるよう努めたい。

 一方、労働者の側から、やむを得ない事由なしに有期雇用契約を解除することはできないかというと、これに関して法は明文規定を置いていないので、議論のあるところだ。
 しかし、現実的には、有期雇用従業員から本人の都合で退職したいとの申し出があった場合に、これを会社が認めないのは難しい。 それは、本人の意に反する労働を強制することになってしまう(日本国憲法第18条「苦役からの自由」および労働基準法第5条「強制労働の禁止」に抵触する)からだ。
 こうなった場合、会社としては、それによって被った損害の賠償を求めるぐらいしか対抗手段は無い。
 もっとも、雇用契約に限らず、期間途中での契約解除はお互いに極力避けるべきであるし、そのためにも、契約締結前に熟考するべきであるのは、言うまでもないことだろう。


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