野球選手が賭博行為で所属球団から契約解除されたり、鉄道会社における賭博行為が発覚したりと、ここのところ、賭博に関するニュースが取り沙汰されているが、一般の会社で、賭博行為に手を染めた従業員がいた場合に、それを懲戒することはできるのだろうか。
これに関しては、その賭博行為が「職場外」で行われたのか、「職場内」で行われたのか、によって、若干扱いが異なってくる。
まず、「職場外」で行われたものについては、原則として、懲戒の対象とすることができないものとされる。会社が懲戒権(従業員を懲戒できる経営上の権利)を有するのは職場秩序を維持する目的があるからであって、職場外の私的行為について会社は関知するべきでないからだ。
とは言え、会社のレピュテーション面での悪影響が生じた場合等には、懲戒できるケースもある。
職場外の違法行為を懲戒の対象にできるケースについて裁判所は、「当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等、諸般の事情から綜合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合」(最二判S49.3.15)という判断基準を示している。
それこそ「野球選手の野球賭博」くらいの悪質さがあった場合にこれに該当すると考えられよう。
一方、「職場内」で行われたものについては、懲戒の対象とすることができる。事実、職場秩序を乱したのだから、「懲戒できる」と言うよりも、「懲戒するべき」とすら言えよう。もちろん、就業規則等に「違法行為は懲戒の対象とする」などの規定を設け、また、憶測でなく事実に基づいて判断する必要はあるが。
しかし、これが、単なる「懲戒」にとどまらず「懲戒解雇」となると、簡単な話ではない。従業員を解雇する場合は、それが懲戒解雇であろうとも、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効」(労働契約法第16条)とされているからだ。
会社としては「職場秩序を維持するため」と一応の合理性を主張するかも知れないが、これを裁判所が認めるかどうかは微妙であるし、片や相当性の判断においても、「1回の賭博行為をもって解雇」はさすがに「厳しすぎ」との誹りは免れまい。「会社から数度にわたり注意指導を受けたにも関わらず悔悛の情が見られない」といった事情でもない限りは、解雇(懲戒解雇であれ普通解雇であれ)に処するのは難しいと考えておくべきだろう。
それよりも、職場内で賭博行為が行われていたとすれば、会社の責任も問われかねない。従業員の懲戒も必要かも知れないが、会社としては、コンプライアンスの徹底と職場風紀の改善をまず先に考えるべきだろう。
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