朝からじりじり照りつける太陽。ひとしきり啼く蝉。
今日も昨日以上に暑くなる予感。
その予感通り、午前10時の段階で、
居間の気温は、何と32度。
戸外と室内の優劣で最後まで迷いましたが、
結局、今日の外出は取りやめに。それと言いますのも・・。
この暑さで外出する服に迷い、色々着替え又、迷い・・。
おまけに蜂蜜色の炎天下の中に出て行く、
勇気も気力もなくなったという訳です。
それにしても、この位の暑さなんて、一頃でしたらヘッチャラでしたのに。
随分、暑さに弱くなったものです。
さて、そんなこんなで・・ぽっかり空いた時間。
こんな日は、木陰でミステリー・・と行きたい処です。
少しは涼しくなりそうですもの。
しかしながら高原ならいざ知らず、
時折吹き抜ける風も、今日は熱風と化しています。
やはり冷房の効いた室内で、熱い珈琲片手に読書と致しましょう。
という訳で、今日も大好きなアガサ・クリスティーを。
となれば、肩の凝らない短編がいいですね。
そうそう、その前に。
藤沢周平著 「漆の実のみのる国」、(上下巻)やっと読了しました。
この小説は、彼の絶筆となった作品だそうですね。
彼の作品には架空の藩の小説が多い中で、珍しく実在の藩。
あるテレビ番組で、どなたかが 「上から目線の司馬遼太郎ではなく、
下から目線の藤沢周平・・」 ~なんて言っているのを耳にしたものです。
(それには異論もありますが・・)
それで行けば、これも例外、上から目線です。
尤も、農民の暮らしを1番に考える、名君の上杉治憲(後の鷹山)ですが・・。
借金ばかりで貧しい藩の経済改革物語。
結局、壮大な計画の下に始めた漆木の植え付け(漆蝋を取る)は、失敗。
(西の櫨(ハゼ)蝋に負ける)
何年にも渡る緊縮財政と疲弊する藩。付随する政治抗争。
今の時代にも十分、通じる気がします。
最後に。心に残ったフレーズを記して置きます。
・・・ 略 ・・・ 外部からの借財がなければ表向き15万石の藩の国力は せいぜい7万石から8万石程度のものであると見極めた事になる。 ― 中略 ― 尤もそれは、言ってしまえばごくまっとうな理詰めの結論だった。 これに対して反対論を述べる事は恐らく何人たりとも難しい。 だから、藩の運営は志賀に委ねるしかないのだ。 ―― しかし、いかにも華がないの。 と、今治憲は思っているのだった。 それが気がかりの正体だった。― 中略 ― その不思議な温かみは何かと言えば、 まだ望みはあるという事だったように治憲は思う。 藩は今は疲弊している。 しかしいつかは枢要の地位に人を得、策の宜しきを得て、 藩はついに繁栄を迎えるだろう。 善政はその望みを、治憲の胸の内に残して行ったのである。 ― 中略 ― 理に適ってはいるが、志賀の再建策から伝わって来るのは 冷え冷えとした感触である。 志賀は藩を袋小路から抜け出させようとして、 却って一層深い袋小路へと導こうとしているかのようにも見えた。 ・・・ 略 ・・・ 藤沢周平 「漆の実のみのる国」 より |