【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

希望という名の改革列車

2010-07-24 17:11:17 | 心の宝石箱


     朝からじりじり照りつける太陽。ひとしきり啼く蝉。
    今日も昨日以上に暑くなる予感。

     その予感通り、午前10時の段階で、
    居間の気温は、何と32度。
    
     戸外と室内の優劣で最後まで迷いましたが、
    結局、今日の外出は取りやめに。それと言いますのも・・。

     この暑さで外出する服に迷い、色々着替え又、迷い・・。
    おまけに蜂蜜色の炎天下の中に出て行く、
    勇気も気力もなくなったという訳です。

     それにしても、この位の暑さなんて、一頃でしたらヘッチャラでしたのに。
    随分、暑さに弱くなったものです。



     さて、そんなこんなで・・ぽっかり空いた時間。
    こんな日は、木陰でミステリー・・と行きたい処です。
    少しは涼しくなりそうですもの。

     しかしながら高原ならいざ知らず、
    時折吹き抜ける風も、今日は熱風と化しています。

   やはり冷房の効いた室内で、熱い珈琲片手に読書と致しましょう。
  という訳で、今日も大好きなアガサ・クリスティーを。
    
   となれば、肩の凝らない短編がいいですね。
  そうそう、その前に。

   藤沢周平著 「漆の実のみのる国」、(上下巻)やっと読了しました。
  この小説は、彼の絶筆となった作品だそうですね。
  彼の作品には架空の藩の小説が多い中で、珍しく実在の藩。
  
   あるテレビ番組で、どなたかが 「上から目線の司馬遼太郎ではなく、
  下から目線の藤沢周平・・」 ~なんて言っているのを耳にしたものです。
  (それには異論もありますが・・)
  
   それで行けば、これも例外、上から目線です。
  尤も、農民の暮らしを1番に考える、名君の上杉治憲(後の鷹山)ですが・・。

   借金ばかりで貧しい藩の経済改革物語。
  結局、壮大な計画の下に始めた漆木の植え付け(漆蝋を取る)は、失敗。
  (西の櫨(ハゼ)蝋に負ける)

   何年にも渡る緊縮財政と疲弊する藩。付随する政治抗争。
  今の時代にも十分、通じる気がします。
  最後に。心に残ったフレーズを記して置きます。

・・・ 略 ・・・
外部からの借財がなければ表向き15万石の藩の国力は
せいぜい7万石から8万石程度のものであると見極めた事になる。
― 中略 ―
尤もそれは、言ってしまえばごくまっとうな理詰めの結論だった。
これに対して反対論を述べる事は恐らく何人なにびとたりとも難しい。
だから、藩の運営は志賀に委ねるしかないのだ。

―― しかし、いかにも華がないの。
と、今治憲は思っているのだった。
それが気がかりの正体だった。― 中略 ―

その不思議な温かみは何かと言えば、
まだ望みはあるという事だったように治憲は思う。
藩は今は疲弊している。

しかしいつかは枢要の地位に人を得、策の宜しきを得て、
藩はついに繁栄を迎えるだろう。
善政はその望みを、治憲の胸の内に残して行ったのである。
― 中略 ―
理に適ってはいるが、志賀の再建策から伝わって来るのは
冷え冷えとした感触である。

志賀は藩を袋小路から抜け出させようとして、
却って一層深い袋小路へと導こうとしているかのようにも見えた。
・・・ 略 ・・・
             藤沢周平 「漆の実のみのる国」 より