goroの徒然なるままに・・・

日々の記録と言うか自分の日記や備忘録として書き連ねるつもり。

小説の裏話、その肆

2006年12月01日 | novels
じつは、この小説はここまでしかアップできない。

つまり完成していないのだ。

続きも多少は書いているのだが、小説家ではないので、よほど気分がのらないと書き続けることが出来ないようだ。

仕事が忙しくては、なかなか満足の行く作品には仕上がりそうもないので、しばらくはおあずけ?

(>_<)

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ピンクのバンダナ特別編 第四章

2006年12月01日 | novels
第四章 自由時間・・・Free time

ホテルでもらった案内図は珍しく縮尺もきちんとして迷うことなく目的のショッピングセンターに到着した。

さすがにアメリカ郊外のショッピングセンターだ、建物も駐車場も想像以上に大きい立派なもので、まさにバカでかいと言う形容がピッタリだ。

中に入ると一日いても飽きないくらいの品揃えで本当に何でも揃うと言った感じだ。

多少の時間があることを確認して僕は真っ先に工具コーナーへ向かった。

どうしてもため息が出てしまう・・・

日本では簡単に手に入らないような工具が所狭しと・・・イヤイヤ、ゆったりとディスプレイしてあり、しかも価格も手ごろだ。

日本製工具の品質にうんざりしている僕にとって天国のようなところだ。

アメリカの整備士は自分の仕事に誇りを持っていて、仕事場で使う工具はすべて自前だと言う。

会社からすべての工具が支給される日本とはまったく違った環境だ。

そのおかげで工具メーカーやショッピングセンターで多くの種類の工具が売られている。

店内の時計を見た僕は我に帰った。

そろそろ約束の時間だ、工具に見とれて時間の経つのを忘れてしまっていたようだ。

約束のバーにはショッピングセンターから歩いて15分くらいのところにあり、ほどなくして小さな看板が目に入ってきた。

都会とは違い、アメリカの田舎町を地で行っているような良い外観をもったバーだ。

約束の時間まではまだ30分くらいあったが僕は店の中に入った。

店内も使いこまれたテーブル、椅子が本当に良い雰囲気を出している。

僕が店内を見まわしているとウエイトレスが近づいてきてToddの名前を告げ、カウンターを指差した。

どうやらカウンターでビールを飲んでいる男がToddらしい。

たぶんいつもここで飲んでいるのだろう。

僕が近づいていくと彼も僕に気が付き振りかえった。

直接合うのは初めてだがメールでお互いの趣味などを知っていたので一杯のビールを飲み干す頃には昔からの友人の様に僕らは話していた。

彼もオートバイが好きでレストアや旧車レースを楽しんでいる。

ただ、大きく違っているのは周囲のオートバイに対しての環境だ。

日本のようにオートバイや自動車が実用車としてだて育ってきたのではなく、モータースポーツとしての歴史を刻んできているので根底から違っているようだ。

周囲には安全にレースやスポーツ走行を楽しめるサーキットが整備され、かなりの人が自宅のガレージで旧車(親の代から愛車)を維持しているとのことだ。

本当にうらやましい環境だ。

「自分は父親から受け継いだエルカミーノ乗っている」

「当時の部品も問題なく手に入るので維持するのに特に大きな苦労はないよ」

なんとも簡単に言ってくれる。

「日本で60年代いや、70年代の国産車を維持するのもそれなりの覚悟必要だし、部品なんてまず手に入らない」

「ディーラーも自分の会社の製品に愛着がないのだろうか? なかなか快く整備をしてくれないよ」

と言うと彼は心底不思議だというリアクションをした。

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小説の裏話、その参点伍

2006年10月10日 | novels
先にも書いたが、この「ピンクのバンダナ特別編」は、「ピンクのバンダナ」に手を加えた作品だ。

もともと短編だった内容に、付け足した形で書き続けていたので、実は現時点で完結していない。

第7章の途中から先へは進んでいない。

つまり、どんどん掲載すると、途中だと言うことがばれてしまう!
何年ぶりかで、書き足し始めようかと思ってはいるが・・・

もともと、文章は苦手で世間で言う「筆不精」だったのだが、社内報をきっかけに全開で書いた文章がこのシリーズになっている。(じつは、他にも数作品あったりする)

RZ350を購入した頃から、オートバイに対する感覚が変わってきたと感じ始め、23歳くらいからバタバタと海外出張が続き、ある小説家の作品と自分を(なかば強引に)ダブらせて考えていた・・・多くのオートバイ乗りと同じように

近いうちに第肆章をアップする予定!

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小説の裏話、その参

2006年10月08日 | novels
もともとホテルに戻ってメイルを受信するところからは、第四章になっていた。

一日の出来事を一章にまとめたかったので、三章と四章が一体となった文章に変更した。

「IE社」とは実在のメーカの名前に手を加えて、お借りしている名称だ。
スタンリーキューブリック監督「2001年宇宙の旅」の裏話を知っている方は、想像が出来ると思う。(例のBrowser softwareではない)

2ストロークエンジンがフィーリングを保ったまま、元気に走れるようなマフラーが出来れば良いと思っているが、ディーゼルエンジンと同様に低公害の2ストロークエンジンが開発されても、日本ではなかなか認められないかも知れない。

博物館のことが書かれているが、自分自身、博物館は大好きだ!

海外出張だけではなく、国内で遠出をしたときは、博物館(民族資料館や水族館、美術館を含む)を見つけると、時間の許す限り訪問することにしている。

日本語では、適切な単語が無いと思うが(強いて言えば「館」?)、英語で「Museum」と名の付く場所だ。

オタワ(カナダ)では、1日で3館を制覇したし、ロンドンでは1日で・・・タクサン行った!

特にMuseum内のカフェがお気に入り!

写真は、オタワの国立美術館の中にあったカフェだ!
開放的で、太陽の光がサンサンと降り注ぐ、気持ちよいカフェだった!
ちょっと眩しかったが・・・

海外での朝食は、早起きするせいもあるが、本当にゆっくりと食べることが多い。

なによりも、時間がゆっくり流れている気がする。

ちなみに文中の「Todd」は、英国のBBSで知り合ったHS-1ライダーだ。(ってことは、アメリカ人じゃないじゃん!)

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ピンクのバンダナ特別編 第三章

2006年10月08日 | novels
第三章 New morning in the new town ・・・ 新しい町での新しい朝

6:00am 枕もとの時計が調子はずれのアラーム音を発した。

時差の関係か、早朝にもかかわらず思いのほか寝起きは楽だった。

僕は、朝食の前にホテルの周りを歩いてみることにした。
昼間の気温は温かいと聞いていたが、さすがにこの時間はひんやりとしている。
日曜日の早朝と言うこともあって、街は静まりかえっている。

朝日にきれいな町並みが照らしだされていた。
町並みと言ってもしっかりとビルディングも並んでいる普通の地方都市と言う感じだ。

僕が今日から3年間を過ごす街、綺麗に整備された町並、緑も多く適度に都市を感じさせる建物とうまく調和している。

交通量の少ない広い道路を、まったくノーマルのままのヘリテイジ・ソフテイルが、ノーマル然とした排気音を響かせて走り抜けていった。
東京ではノーマルマフラーのヘリテイジなんてかえって珍しいのだが・・・ここではふつうの国産オートバイだからだろうか?

最初の交差点にあったコーヒーショップでカプチーノを買って、近くの公園のベンチで初めての街での朝を過ごした
冷えきっている朝の空気に、温かいカプチーノはほっとさせてくれる。

今回僕がこの都市に来たのもIE社の開発部門からの誘いがあったからだ。
どうやら今までの大排気量ではない小排気量車を開発する計画があるようだ。
しかもエンジン形式は2ストロークだ。

いまさら2ストなんて、とみんなが思っているようだが、燃焼効率を考えると2ストの優位性も忘れてはならないはずだ

そして、日本で僕が開発していたのが中間排気量車用のマフラーだった。
排気ガス規制の関係か、世間から冷たい目で見られていた2ストロークエンジン用だったが
僕自身、昔から2ストエンジンが好きで所有していたオートバイはほとんどが2ストロークエンジンを搭載しているものだった

最初はエンジンのフィーリングだけで2ストロークエンジン車を選択していたのだが、次第に世間で2ストローク車が敬遠されるようになってきたのが気になり、新しいマフラーの開発に着手したのだった
一般的には4ストロークエンジンのほうが環境にやさしいなんて言われるのが悔しかったことも要因の一つだ

実際に、僕の開発したマフラーはフィーリングの向上だけでなく、エンジン性能の向上と排気ガスの低減という相反するものを両立できるものだった。
環境に対して非常にシビアな認識を持っているアメリカ、そのアメリカで永い歴史を持つIE車が僕のマフラー理論を認めてくれたのもわかる気がした。

ホテルに戻り、僕は愛用のラップトップでメイルを確認した

最近のホテルは備え付けの電話に通信用のモジュラージャックが装備されているので複雑な接続が不要になった、といっても国際電話を掛けることになるには変わりはない。

移動が続いていたので2日ぶりのメール受信だ。
予想どおり友人達から無事に到着したのか?とのメールが何通か届いている。

なかには彼女からのメールもあった。
日付を見るとどうやら僕が日本を出発した日に送ったもののようだ。
どうやら彼女のセンスが認められ、副都心に新しく建設予定のオフィスビルの一部のデザインがまかされたとのこと。

バブル時代に金銭をつぎ込むことが美徳とされていた頃から自然と人間の環境を考えたデザインを行ってきた彼女だ
仕上がりが楽しみだが、完成のときに立ち会えない場所にいることが残念だ。

3年後、日本に戻ったときを楽しみにしているとの返事を送り僕はシャワーを浴びた。

朝食をとりにレストランへと向かった。

地方都市のホテルだ、思いのほか人気の少ないレストランで、コーヒーにパンとソーセージを注文しゆっくりと朝食を楽しんだ。
そういえば、このようにゆっくりと朝食をとるなんてほんとに久しぶりだ。
輸入業務を手伝っていた頃は時間に追われる毎日で精神的にも参っていたことは確かだ。

IE社を尋ねるのは月曜の朝なので、今日は終日フリータイム。
ゆっくりと朝食をすませ、シャワーを浴びに部屋に戻った。

時計を見るとすでに11:00をまわっていた
フロントでもらってきた街の案内を見て近くにナショナルミュージアムがあるのを確認し僕は部屋を出た

何度となく海外での生活を経験したが、初めて訪れた街では最初に必ずミュージアムに行くことにしている
日本で言う「民族資料館」のようなものがあると、知らない街の歴史も良くわかるから、と言う理由もあるが、ミュージアムの雰囲気自体が好きだった。

ホテルを出て15分くらい歩いただろうか。
並木道の先に目的のミュージアムが見えてきた。

地方都市にしては立派なつくりで見応えのありそうなミュージアムだ。
この街自身も綺麗に整備されてはいるが、長い歴史のある街だという事もわかったし、何よりもIE社の存在がこの街に大きな影響を与えていることも紹介されていた。

内燃機関を作りつづけて100年以上の歴史のあるIE社だ、ここまで社会に認められるのは環境への配慮も怠っていなかったのだろう。

専門のコーナーが設けられていたことからも、影響力の大きさと信頼を物語っている。

休日でも見学者も少なくゆっくりと見物した後、僕は館内のティールームでゆっくりとコーヒーを飲んだ。

博物館を出ると時間はすでに15:00だった
今日の夕方に友人と会うことになっている
友人と言っても僕とIEの間に入ってくれていろいろと面倒を見てくれたToddだ
彼は僕のwebを見てメイルをくれて以来の友達だ
もちろん会うことは初めてだし話すことも初めてだ
でも、メイルと言うものは便利なもので、顔写真を添付してくれたのでなんとなく印象はわかっているつもりだ

約束の時間まではまだたっぷりあるので僕は徒歩で近くのショッピングセンターに向かった

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小説の裏話、その弐

2006年10月07日 | novels
裏話その壱でも説明したが、執筆当初は第一章で完結していた。

この第二章は、2001年に仕事でアメリカはラスベガスの展示会に行った際、ある会社を訪問するため「Santa Ana」に行った経験を書き足したものだ。

もともと2ストの排気ガス規制で、日本国内メーカに元気がなくなってきたと感じていたこともあり、主人公がアメリカで有名なオートバイメーカからの誘いで、自分の持っていた理論をベースにした2ストロークエンジン用新型マフラの開発を、はじめると言った内容だ。

実際に「こんなことが出来ると良いなあ」と自分でも思っていた時期があったので、帰りの飛行機のなかで、勢いで書き足してしまった。


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ピンクのバンダナ特別編 第二章

2006年10月07日 | novels
第二章 New town in US ・・・ 新しい都市

  「ロス・・・Loss か」

Santa Ana に向かうタクシーの中で僕はつぶやいていた。
日本を離れると決まったとき、電話口で彼女が口にした言葉だった。

薄暗い車内でダッシュボードのデジタル時計が緑色の文字で21:00をまわったことを知らせてくれた。

  「それにしても遠いな」

ハイヤーは空港を出てすでに1時間以上もハイウエイを飛ばしているのに、まだかかりそうだ。

  「とんでもないところに来てしまったのかもしれないな」

特にアメリカにこだわりがあったわけではないが、今までのしがらみを捨てるのにはなぜか適している気がしたからだ。
それと自分の技術を生かせそうな会社からのコンタクトがあったことも要因のひとつだ。

実力社会のアメリカで、自分自身がどこまで通じるかを試すのには年齢的にもそろそろ無理のきく限界ではないかと考え、思いきって日本を飛び出した。

僕はオートバイショップをはじめた頃から、オリジナルマフラーの理論を考えていた。

2ストロークエンジンの強烈な加速と、マフラーから排気されるオイルの焼けた匂いに感動していたが、時代が環境問題を唱え始め、気に入っていたエンジンフィーリングが「野蛮」と評価され、排気煙が「公害」と批判されるようになった。

このままでは2ストロークエンジンが消えてしまう可能性に危惧を感じ、2ストロークエンジンの有利性を世間に理解してほしいと思い、このマフラーを開発をはじめた。

ここアメリカでも2ストロークエンジン搭載車の新車販売が出来なくなっていると聞く。

確かに4ストロークエンジンは確立された理論で吸気排気を行い、クリーンなイメージがあるが、2ストロークエンジンも内燃機関としては、シンプルでフリクションも少なく、効率よく燃焼させれば、4ストロークエンジンに負けはしない。

ハイウエイを降りたのは21:30をまわった頃だった。
時間が遅いこともあるとは思うがまわりに明かりが見えないのが気になる・・・

  「かなりの田舎町のようだなあ」

観光案内には大きなショッピングセンターやビーチもあると書いてあったんだが。

  「どのみち明日の朝になってみないとわからないな」

ハイウエーを降り15分も走ると今晩のホテルが見えてきた、初めての都市なのでホテル看板が見えてきたと言うのが正確な言い方だ。

チェックインをして部屋に入ると、すぐに異様に大きいベッドに横になった。

日本を出発して、経由地での滞在を含めて15時間以上も体を伸ばせなかったので、ただベットに横になるだけでも、本当に開放感を感じられた。

シャワーを浴び、エアポートで買った硬いベーグルサンドをかじりTVの電源を入れると、ケーブルテレビだろうか?
二輪のダートトラックレースを放送している。

日本のTV放送で二輪車のプログラムはあまり見たことがないので新鮮に感じる。
他のチャンネルではNAS CARレースを放送していた。

やはりこの国自体にモータースポーツが浸透している。

第三章へ・ ・ ・

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小説の裏話、その壱

2006年10月01日 | novels
書き上げた当初(すでに20年以上も前の話だが)の話をちょっとばかり・・・

文章的には今回掲載した第一章の70%位しかなく、オートバイも水冷の350ccだった。(つまりRZ350)
オートバイにのめりこむきっかけだった、RZをどうしても登場させたくて、勢いあまって数作品をあっという間に書き上げた記憶がある。

原文には、亡くなった友人の話は無く、当時はまだオートバイショップを経営していたわけではないので、書き足した文章だ。

また最後は「ロス・・・Lossね」で締めくくられていた。

社内報のページ数も限りがあったので・・・

走っている道の情景ももう少し、詳しく書いていたが、目的地がはっきりと分かってしまうので、多少手を加えて架空のハーバーにしたつもりだ。

実際の場所は、葉山マリーナだったが、その後実際にディンギーを購入して、三崎の先に置艇していたので、両方が入り混じった場所にしたつもりだ。

葉山マリーナに実際ある、カフェで海側のカウンターは、天気が良いと本当に気持ちよい場所で、大変気に入っていた。(いまでもあるのだろうか?)
すぐ横にある「あぶずり漁港」という非常に小さな漁港があって、毎回オートバイを乗り入れて、のんびりしていた。

RZの前はXL250に持っていて、亡くなった友人と一緒に\180ツーリングと称して東京から葉山近辺まで、有料道路を全て通るコースを何度と無く走っていた。
たしか当時の横浜新道は二輪車\10(\30だったか?)だったような記憶があるが・・・

このツーリングに関しては、いつか書いてみたいと思う。

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ピンクのバンダナ特別編

2006年09月30日 | novels
第一章 One month before ・・・ 1ヶ月前

東京を出発するときにリセットしたトリップメーターは既に50Kmを回ろうとしていた。
適度な緊張感と適度なスピードが、気持ちの良いクルージングを満喫させてくれる。

2ストローク2気筒の空冷エンジンは春先の少し高めの気温でも気持ちよく高回転をキープして走ることが出来る。

4ストロークマルチエンジンに比べると、ジェントルとは言えないかもしれないが、絶妙なボアストローク設計のお陰か、心地よいビートを感じる良いエンジンだ。

僕はこのオートバイとつきあって既に20年以上が経過している。
25,000km強を示しているオドメーターの割には元気の良い加速をしてくれる良くできたエンジンだ。
友人たちはほとんどが大排気量車に乗り換えてしまったが、僕はいまだに中間排気量車の軽快さと2ストロークエンジンのフィーリングが気に入って乗り続けている。

  「2ストロークエンジンだってきちんとセッティングをしてやれば綺麗に燃え、白煙を撒き散らすことはないよ」

大排気量車に移行していった友人達に、よくこう言ったものだ

事実、独自の理論に基づいて手を加えたマフラーと、完璧なセッティングを行った車両はみんな元気に走り、白煙を撒き散らすことはなかった。

そろそろ潮の香りがしてくるはずだ。
天気も良いし、ツーリングには最適の天候だ。
緩やかな坂道を下っていくと目前に海岸が見えてきた。
この先の交差点を左折するとしばらくは海岸を右側に見ながら走ることになる。

僕は点滅する左ウインカーを見つめて、昔のことを思い出していた。

  「ここにくるのは1年ぶりだろうか?」・・・と僕はヘルメットの中でつぶやいた

交差点を左折して曲がりくねった狭い道を20分くらい走ったろうか、海岸線に目的のハーバーの白い壁が見えてきた
目的のハーバーに到着し僕は駐車場に愛車を乗り入れた。

  「行きつけ・・・と言うには随分とご無沙汰している」

でも、お気に入りであることには違いないハーバーの喫茶店、窓際のカウンター、左から3番目が僕の指定席だ。

1年以上は来ていなかったが、なじみの若いウエイターは僕に気がついて軽く会釈して近づいてきた
相変わらず、きれいに日焼けしている。

  「ご無沙汰しています」
  「今日はお一人なのですね」と短い挨拶をし、注文を聞いていった

そう、本当に久しぶりのこの店も、いつもは友人と2台で来ていた。
その友人はもういない・・・正確にはこの世にいないのだ。

2年前の10月に病気でこの世を去った
40歳 二人の子供とカミサンを残して・・・

ほどなくして注文した温かいカプチーノがカウンターに置かれた。
今日は気温も高くアイスでも良い感じだが、春先にオートバイで長距離を走ったあとには、温かい飲み物がうれしいものだ。

係留してあるクルーザーやディンギーを目前に見ながら、僕は友人のことを思い出していた。
性格はあまり似ているとは言えなかったが、オートバイと言う共通の趣味で中学時代からの友人だった。

彼と僕は長年勤めていた会社をほぼ同時期に退職し、いっしょにオートバイショップを開店した。
いくら親友と言ってもいっしょに経営をしていると、お互いにぶつかることも多かったが本当に楽しい時期だった。

趣味が講じてはじめた店は、だいたいがうまく経営が進むものではないと、開店の際に周囲の知人から忠告を受けたものだ。
確かに経営は辛かったが確固たる信念を持っていたのが認められて2年目くらいから順調に仕事が入るようになってきた。

やっと波に乗った時期に友人の死を迎え、僕自身すべてがいやになり再開時期の決まっていない長期休業に突入した。
年齢的にも定職についたほうが良いに決まっている・・・が、僕は定職につくとしたら友人と一緒にはじめたこのオートバイショップの再開以外には考えられなかった。

むかし海外経験が豊富だったことともあり、休業のあいだの約5年間、パートタイムとして知り合いの会社で輸入業務を手伝っていた。
海外とのコミュニケーションと技術面のサポートを中心に行っていたが、やはりオートバイの世界に戻ることを決意したのが半年前だった。

いぜんオートバイショップを開店するにあたってこの店に来ては新しい商品のことに関していろいろと話していたものだ。

ここにくると間違いなく昔を思い出して悲しくなることはわかっていたが現実を抜け出し、オートバイの世界に戻るための一区切りとしてここにくることを決意した・・・一人で

僕自身、海が好きだ。
友人は山のほうが良いと言っていた。

 「人間(生き物)は海から来たものだから海に戻ることが正論だよ」

などと友人と話し合っていたものだ。

自分でクルーザーを所有したいと思ったこともあったが、実現性のない夢だった。
愛用したディンギーも知人に譲ってしまい、すでに海の男ではなくなってしまったが、僕にとってこのハーバーは気分の良いところだ。

レジでウエイターに、またしばらく来られないことを告げて店をあとにした僕は同じハーバー内にある売店に向かった
ここも久しぶりだ。
品の良いオリジナルデザインのグッズが並んでいて落ち着ける店内をゆっくりと歩いていると懐かしいバンダナが目に入ってきた。

 「そう言えばディンギーを購入したとき、このバンダナを買ったなあ」

僕はピンク色のバンダナを手にしてレジに向かった。
会計を済ませると、入り口近くのテレフォンブースに入り、記憶している彼女の電話番号を押した。

コール音が3回鳴って彼女が電話口に出た。
1ヶ月ぶりに聞く彼女の声は相変わらず綺麗に澄んでいる。
僕は彼女にロス行きのことを告げた。

 「来月には日本を発ってロスに行くことになったんだ」

 「夢が実現するのね」
 「3年くらい前から話していたものね」

 「そうなんだ」
 「僕の技術を生かして見ないかと誘ってくれた会社があったんだよ」
 「ロサンジェルス郊外にある会社なんだ」
 「3年間の契約だが新しい製品を立ち上げることになったんだよ」

 「話を聞いたときから、いつかこのような時期がくると思っていたわ」
 「でも、私ももう少し今の仕事を続けてみたいの」
 「やっと認められてきたんだもの」

 「そうだな」
 「出発の日が決まったらまた連絡するよ」

 「ロス・・・Lossね」

彼女は僕が輸入業務を手伝っていたとき、同じ職場で働いていた。
僕が最初に会社を辞めて自分の店を持ち、彼女は半年後に自分のデザインオフィスを持った。
お互いに励ましあいながら仕事を続け順調に仕事は進んでいる。

第二章へ・ ・ ・

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小説を掲載するにあたって

2006年09月30日 | novels
このカテゴリに掲載する、これら小説は、24歳くらいのとき勤めていた会社で、社内報担当の子から、「記事が少ないので何か書いてもらえませんか?」と頼まれたのがきっかけで書き始めたのだ。

「これら」と言うからには、何作品かあるが、どれもオートバイに絡んでいるもので、片○義○っぽくて、いま読み返しても恥ずかしさを感じてしまう。

正確に言うと、当時のままではなく、海外出張の飛行機の中や、ことあるたびに書き加えたり、修正したりで今に至っている。

登場している車種が変化していったこともあった。

自分のwebにアップしようかとも思っていた時期もあるが、恥ずかしくて実行できなかった。

当時、勤め先では「現実か?」、「実在の人物か?」との物議をかもし出したこともあって、書いている本人にとって、結構楽しめたのも事実だ。

結構長編で、実はまだ完結していない・・・
正確には、完結していたものを書き足している途中。

少しずつアップするので、暇なときにでも読んで下さい。

批評などいただけたら、幸いです。

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