声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

武相荘にて

2014-06-22 05:31:59 | 旅の楽しみ
白洲次郎・正子夫妻の武相荘は
小田急鶴川駅から歩いて10分ちょっとの

大通りに面したUNIQLOの隣に位置する少々意外な場所にありました。




もともと、この白洲邸は荒れ果てた茅葺屋根の養蚕農家を白洲夫妻が1942年に購入し、

その後30年かけて住みやすいように少しずつリフォームしたものだそうで、

「田の字に作ってある農家はその点都合がいい。
いくらでも自由がきくし、いじくり廻せる。
ひと口にいえば、自然の野山のように、無駄が多いのである。」

…という正子さん著の『縁あって』の一節に私は甚く感動したものです。


近代風の住宅が建ち並ぶ住宅街に突如現れた古民家。



入り口には次郎さんの最初の愛車と同じペイジ …。



次郎さんといえばベントレーが思い浮かぶのですが、

部類の車好きで、80歳までポルシェを乗りまわしていたそうですね。

母屋では、只今、夏の企画展開催中。



中は、撮影禁止なので外からだけですが

母屋の入り口の広い間口のガラス戸を開けると、

土間だったところは、
夫妻愛用のガラスの器や陶器が展示されたギャラリー、

その左隣に夏の着物が展示された和室、
一番左奥が正子さんの書斎…。

壁いっぱいの蔵書は数えきれないほど造り付けの書棚にギッシリと詰め込まれ、

窓際に面した場所に丈の低い文机が置かれていました。

見ていると、ここに座って執筆する正子さんの小さな後姿が浮かんできます。

大きな木枠のガラス窓から、時折木々の緑が風に揺れているのが目に入ってきます。

正子さんも、この木々に癒されたのかしら…。




さて、この武相荘ですが、母屋の築年数は、どのくらいなのでしょう…。



黒光りする板張りの廊下は、踏むとミシミシと音がしますし、

板の間は所々、板が浮いています。

南側の庭に面した廊下は外側が少し低く傾いています。

夫妻が買い取った時点から数えても
約70年、大正時代に建てられたとしても恐らく100年以上…
入り口の立札には明治初期に建てられたらしいと書いてありましたが、
そうすると1870年前後でしょうか…
140年くらい経っているわけですね。

二階が蚕室として使われていただけに天井は低いのですが、

さすがに大黒柱と梁はとてもしっかりした造りです。

昔の民家が如何に優れた建築物であったか…と驚くとともに、

30年間以上かけて少しずつリフォームしながら、自分たちの気に入った物だけを置き、気儘に楽しく暮らす…

私にとっては、まさに理想です。

そして、そんな生き方を貫くことが
家を長持ちさせる…

白洲夫妻が愛した家は、それを証明してくれているように思います。





清水由美 

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