アカデミー受賞4部門受賞、イギリスとオーストラリアの合作映画ですが、
英国王室の伝統や、
第二次世界大戦直前のドイツとの関係などの背景もわかりやすく描かれ
しかも、「話すことが苦手」な人の気持を共有できる…見どころの多い映画です。
エリザベス2世とマーガレット王女の幼少期を
あどけない2人の子役が熱演していて、その表情にも癒されます。
それ以上に微笑ましいのは、
トレーナーのライオネル役のジェフリー・ラッシュが指導する数々のレッスンで
腹筋を鍛えるために妃がヨーク公のお腹に座るところ…
私も高校時代、合唱部の部活で同じ事をしていたのを思い出しましたが、
滑舌や脱力のレッスンも、やる側は真剣…
でも傍目から見ていると、当事者たちの真剣な表情とは裏腹に笑えるのですよね… (^^;;
度々出てくるウィンザー公の恋人、シンプソン夫人は似ているけれど、かなり蓮っ葉な女性で
それに合わせた様に、ウィンザー公がだらしない男性として描かれているのには
英国人の国民感情が入ってますか?
「世紀の恋」も形無しですわねぇ(^^;;
後半、兄であるウィンザー公の突然の王室離脱によって、いやいや王となる弟のヨーク公の
戴冠式直前、
ヨーク公が信頼を寄せるトレーナーの存在を不審に思った王室の関係者が調査した結果、
トレーナーのライオネルが植民地の豪州出身で俳優あがり、しかも資格がない事を理由に詐欺者扱いされそうになり
伝統と格式を重んずる英国王室を象徴する場面がありますが、
それでも解雇せずにレッスンを続行したヨーク公の正しい判断には、
名君と言われ英国民から慕われたジョージ6世の人柄を表しているように思えました。
それと同時に、
「そう、資格より経験なのよ!」
と、深く共感…
それに引き続く戦争の開始を告げるスピーチを指導する場面では、
トレーナー自身が戦争で言葉を失った同僚達を治療してきたという体験がありながら、
その皮肉な現実にも、臆すことなく王を指導する言語トレーナー、ライオネルのプロ意識に拍手を送りたくなります。
ライオネル役のジェフリー・ラッシュが、とても良い味を出しています。
人前でスピーチすることに自信を持っている人には、
原稿を読む事自体、別にどうってことない…
と思われるかもしれませんが、
スピーチ原稿を充分に咀嚼して伝えることは、
そんなに簡単じゃないのです。
淡々とスムーズに淀みなく読み間違えずに進めることだけに終始し、
聞き手に感動を与えるどころか
さっぱり内容が伝わらないこともありますわね。(~_~;)
原稿を読むことに慣れていらっしゃる日本の政治家の皆さまにも是非、オススメしたい映画です。
清水 由美