高崎駅から伊勢崎行きの両毛線に乗り換えた出張帰りの午後、
発車直前に、
髪を振り乱した小柄な背中の曲がった高齢の女性が、
息を切らして、慌てた様子で車内に乗り込んで来た。
その様子を見たドアに1番近い席に座っていた品の良い女性が、
空いている自分の横の席に誘った。
荒い息をしながら、
御礼を言って、そこへ座った高齢女性は、
「この電車は前橋に止まりますか?」
と隣の女性に尋ねた。
「ええ、止まりますよ」
と微笑みながら答えた彼女に、
「よかったです」と、ホッとした表情を浮かべ、
曲がった背中と腰をゆっくりと動かして座席に深く座り直した。
2人は、知り合いかと思ったが、そうではないらしい…。
彼女たちの向かい側に座った私は、
意外な組み合わせの2人を、見比べた。
見比べた理由は、
何もかもが対照的だったから…。
目の前の小柄な高齢の女性は、
年齢は80をゆうに越えているようだが、髪が真っ黒だ。
しかも、その髪を日本人形のようなセミロングのオカッパ頭にしている。
それだけでも目立つのだが、
それ以上に目立つのが淡いピンクのジャケットと花柄のベージュのワンピースに、
いくつも重ねたビーズのネックレス、
指には大きくて重たそうな金ピカのリングをはめている…
オシャレなオバアチャマ…という表現もできるが、
顔は、薄くファンデーションを塗っている程度で、
時折、パッツンと切りそろえた前髪の下から眉の見えない目が、キョロキョロと動く。
対して、
隣の女性は、ほぼ白髪でセミロング、
前髪をあげ細いカチューシャでスッキリ後ろに流している…
服装もストライプのシャツブラウスにグレーのトレーナー、黒っぽいコットンパンツとモノトーンでまとめられ、
顔立ちも整っていて知的な印象だ。
髪こそ白いが、60代後半か70そこそこなのかもしれない。
2人は、新前橋駅を通過するまで特に会話する様子もなく前を向いたままだったが、
前橋駅につく手間で、
黒髪のオバアチャマが、
「安心して乗っていられました、ありがとうございました」
と隣の白髪の女性に礼を言うのが聞こえた。
「それは、良かったです」
と、
すぐさま返した隣の女性は、にっこり笑いながら、
「くれぐれもお気をつけて」と付け加えた。
乗車する際のオバアチャマの慌てぶりを慮ってのことだろう…。
電車がゆっくり駅に入り、停車すると
「都内に住んでいるので、この路線は初めてで…でも、本当に助かりました」
とオバアチャマは再度、礼を言って降りた。
短いやり取りだったが、
聞いていて気持ちの良い会話だと思った。
さりげない短い会話にこそ、
品格や知性が現れるものなのだなぁ…
と、
改めて感じた出来事だった。
写真は前橋駅構内に飾ってあるマンドリンを持った朔太郎さん。❤︎
発車直前に、
髪を振り乱した小柄な背中の曲がった高齢の女性が、
息を切らして、慌てた様子で車内に乗り込んで来た。
その様子を見たドアに1番近い席に座っていた品の良い女性が、
空いている自分の横の席に誘った。
荒い息をしながら、
御礼を言って、そこへ座った高齢女性は、
「この電車は前橋に止まりますか?」
と隣の女性に尋ねた。
「ええ、止まりますよ」
と微笑みながら答えた彼女に、
「よかったです」と、ホッとした表情を浮かべ、
曲がった背中と腰をゆっくりと動かして座席に深く座り直した。
2人は、知り合いかと思ったが、そうではないらしい…。
彼女たちの向かい側に座った私は、
意外な組み合わせの2人を、見比べた。
見比べた理由は、
何もかもが対照的だったから…。
目の前の小柄な高齢の女性は、
年齢は80をゆうに越えているようだが、髪が真っ黒だ。
しかも、その髪を日本人形のようなセミロングのオカッパ頭にしている。
それだけでも目立つのだが、
それ以上に目立つのが淡いピンクのジャケットと花柄のベージュのワンピースに、
いくつも重ねたビーズのネックレス、
指には大きくて重たそうな金ピカのリングをはめている…
オシャレなオバアチャマ…という表現もできるが、
顔は、薄くファンデーションを塗っている程度で、
時折、パッツンと切りそろえた前髪の下から眉の見えない目が、キョロキョロと動く。
対して、
隣の女性は、ほぼ白髪でセミロング、
前髪をあげ細いカチューシャでスッキリ後ろに流している…
服装もストライプのシャツブラウスにグレーのトレーナー、黒っぽいコットンパンツとモノトーンでまとめられ、
顔立ちも整っていて知的な印象だ。
髪こそ白いが、60代後半か70そこそこなのかもしれない。
2人は、新前橋駅を通過するまで特に会話する様子もなく前を向いたままだったが、
前橋駅につく手間で、
黒髪のオバアチャマが、
「安心して乗っていられました、ありがとうございました」
と隣の白髪の女性に礼を言うのが聞こえた。
「それは、良かったです」
と、
すぐさま返した隣の女性は、にっこり笑いながら、
「くれぐれもお気をつけて」と付け加えた。
乗車する際のオバアチャマの慌てぶりを慮ってのことだろう…。
電車がゆっくり駅に入り、停車すると
「都内に住んでいるので、この路線は初めてで…でも、本当に助かりました」
とオバアチャマは再度、礼を言って降りた。
短いやり取りだったが、
聞いていて気持ちの良い会話だと思った。
さりげない短い会話にこそ、
品格や知性が現れるものなのだなぁ…
と、
改めて感じた出来事だった。
写真は前橋駅構内に飾ってあるマンドリンを持った朔太郎さん。❤︎