声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

長女の役目

2019-09-01 11:59:12 | Diary
生前の実父の遺言に添って

戦時中、海軍の航空兵だった父が望んでいた江田島に近い場所で葬いを済ませ、

長女としての私の役割が終わった。


翌日の実母の七回忌は、

母が生前同居していた妹夫婦が総てを仕切ってくれて

私は何もすることがなかったのだが、

その法要の席で、菩提寺のご住職から良い話を聞いた。


ご住職が、まだ関西の仏教系の大学で学んでいた頃の話だったが、

先輩の僧侶と訪れた葬いの席でのこと、

小さな子供さんの三輪車に乗った写真が祭壇に飾られていたと言う…

子供を失った深い悲しみに打ちひしがれている若い両親から

「済度人とは、どういう意味でしょうか」

との質問を受けたのだとか…


小さな孫の遺骨を抱いた祖母にあたる人が

「この子は、“済度人”だから」

と何度もつぶやいていたのだという…


ご住職曰く、

「当時はネットもないし、一瞬どう答えようかと戸惑ったのですが…」

とのこと。


当然だ。
仏教の言葉は、説明するのがとても難しい…、

言葉の意味だけなら、その通り読めばいいが、
その“言葉”をどう、質問者の状況や心境に当てはめて説明するかが大事なのだ。


ご住職は、どう答えようかと考えた挙句、こう答えたらしい…。

「済度人とは、悟りに導いてくれる人です。この小さなお子さんの死の事実を受け入れる事はとても辛いことです。しかし人は身内の死によって深い悲しみの淵に追いやられ、そこから学び、悟りを得る…仏教の教えでは、それが済度です」

…と。


子供に先立たれた親御さんの気持ちは、想像し難い。

最初のうち、私には、

7年前に83で死去した実母の法事に、

この話をするのは少々無理があるのではないかと思えたのだが、

聴き終わったとき、

素直に『済度人』の話を受け入れることができたのは、

実父の葬いを無事、前日に済ませた安堵感からかもしれない…。


この五年、悩みに悩んだ…。


「オマエには、絶対に迷惑はかけん!」と

遠方に嫁に出した娘に同居を迫り、

最初のうちはニコニコ笑って楽しそうにしていた実父が、

どうしてこんなモンスターになってしまうのかと…。

なんで、こうも物事は悪い方へ進むのかと。


確かに実父からは、いろいろ学ばせてもらった。

私にとって死んだ実父は『済度人』に違いない。


京都は雲り…。




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