夕べ 眠れぬままに 古本屋でみつけた 愛おしい骨 を読みました。650円と高額 古本屋にしては・・・ でしたが 面白い本は背表紙が語る 指がわかる ・・・ 思ったとおり読みごたえのある一冊でした。
20年前 ちいさな町で起きた 15歳の少年ジョシュの失踪事件。町に戻った兄オーレンの目の前に繰り広げられるのは ひとびとの愛と憎しみの織り成すタピストリ・・・
愛と愛するがゆえの疑心と錯覚の招く悪夢・・・ 家政婦ハンナが秀逸 彼女は隠れたヒロインです。わずかな瑕疵は書きすぎたこと そして降霊会・・・ミステリと小説のファンなら 堪能されるのではと思います。
しかし 考えてみれば書きすぎるというのは案外 大きな瑕疵かもしれません。作家は思いのたけを書きたいものであり 書くという誘惑から逃れるのはなかなかむつかしい。この一章がなければ このひとことがなければ この一巻がなければという作品はままあります。グレアム・グリーンにすら余分なことばがあります。
作者は登場人物に耽溺してはいけない。どんなに愛していても いや愛するがゆえに透徹した客観性が必要なのではないでしょうか。
むだなことばが無いという意味でわたしが好きなのは ジョルジュ・シムノンです。「雪が汚れていた」とアーシュラ・K・ルグインの「闇の左手」はもっともうつくしい愛のものがたり 救済のものがたりだと思っています。
歌もそう・・・・・どんなに声が出ても歌いすぎては こころを通り過ぎてしまう。語りも漫画もそう・・・・これは自分の美学かもしれないが 品が落ちてしまう。竹宮恵子が萩尾望都と根本的に違うのはそこだし 吉田秋生がよく陥るのもそこです。秘すればそこに美が生まれる ということでしょうか。
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