→ こちら
以下転載
皆様ありがとうございます。私は医師として、また特に子供たちを見る立場の小児科医であったという立場から、本日は福島の事故の医療的な側面についてお話を申し上げたいと思っております。
福島は人類の歴史上最悪の産業事故です。
きわめて深刻な事故で、3つの炉のメルトダウンが起こるという人類史上初の3連続のメルトダウン事故でした。とにかく莫大な量の放射性物質が放出されました。そして、ひとつ幸運だったことは、最初の数日間、風が東から西へ吹いて、つまり太平洋へ向かって吹いていたことです。そのあと風向きが北西方向に変わり、日本の南の方向まで向かって放射性物質が拡散していくということが起きました。
そしてその間、日本政府は放射性物質の拡散について、SPEEDIというシステムを持っていて、拡散の状態の評価があったにもかかわらず、パニックを避ける為というような理由で国民に情報を与えることをしませんでした。ですから、中には最も放射線の高かった方向へ向かって逃げた人がでてしまいました。
私自身、チェルノブイリ事故の推移をずっとその後を追って緊密に見てきましたけれども、ロシアの国の人たちというのは、日本に比べるともっと積極的に人を避難させるということに取り組んだと思います。国民を守る為にそのような行動をロシアのほうが取ったということを私は感じます。
日本の政府もそれから東京電力も理解していないことは、子供たちというのは放射性物質に対する感受性が大人の10倍20倍とあるということです。放射性物質に由来する癌にかかるリスクということで、男の子と女の子を比べた場合には、女の子の方がリスクは2倍になります。
そして、成人と比べて胎児と比較してみると、そのリスクは一千倍何千倍というリスクの高さになります。そして、福島の地域200万の人たちがいて、福島市も非常に放射線が高いのですが、その地域に25万人の人が住んでいます。
私は日本政府が子供たちを線量の高い地域に住まわせ続ける、住むことを許しているということに非常な驚きを禁じ得ません。チェルノブイリでは同じレベルの汚染地域から、ロシアは子供たちを避難させました。
私は日本政府が日本の国が、東京電力や原子力産業から強い影響を受けたり、あるいは場合によってはコントロールされるというような状況にあることを知っております。
そしてまた、政治家の皆さんというのは医療的な側面や科学的なことに対しての知識をあまり深いところまでお持ちではありません。
特に福島県の線量の高い地域にいる子供たち妊婦、それから子供を産む出産ができる年齢の方々、そういった方々が高線量の所にいるということは、医療的な側面から見て極めて深刻な問題です。そして子供たちは一生生きていく中で癌になる可能性がでてくるわけですが、癌というのは潜伏する期間が結構長くあるということが広島や長崎の経験からわかっています。5年とか17年とかそういった長い年月がかかります。
そして、当局の皆さんは福島の18才以下の子供たち8万人の検査をしたと聞いております。特に甲状腺の超音波検査をしたということでした。
そして、この検査の中で40パーセントの子供に甲状腺に、何らかの異常が見つかったという結果がでていますが、このような数字というのは小児科の見地から見ますと極めて本当に稀な話であります。子供たちの中には今後必ず甲状腺の癌にかかる子供がでてくると思われますが、すでに12才の男の子で甲状腺癌が見つかっていますし、今16才の女児が検査を受けて癌の可能性が極めて高いと言われて、さらに検査をしていると聞いております。
そして、チェルノブイリの場合は、この癌が出始めたのは5年ぐらい経ってからだったのですが、今現在日本でこれだけ症状といわれるものがでているということは、日本の子供たちはそうとう高い線量を受けているのではないかということが言えると思います。おそらく、チェルノブイリよりも高い線量の被爆を受けたと考えられます。
医師としての私の立場から見ると、日本の政府というのは、日本の人たち人間を守ることよりも、東京電力を守っているのではないかというふうに見えてしまいます。
そして、高い線量の地域にいる特に子供たち妊婦それから子供を産むことができる若い女性なり子供を産める女性の方たち、こういった方々をそこから移住させる、避難させるというのは極めて重要なことだと私は考えていまして、その移住の為の費用を国の政府がきちんと負担するということは非常に重要なことだと私は思っています。ですから、実際非常に弱い立場にある今言ったような子供や妊婦さんや若い女性、そういった人たちよりも実際東京電力を守る為に予算を使うということをしているのが今の日本の政治だと思います。
そして、放射性元素というのは食物の中に蓄積します。キノコ類、例えばほうれんそう、お米、お茶、それから魚。放射性物質というのは味はしません。臭いもまったくしないし、目に見えることもありません。ですから福島から来た汚染した食品を人が口にしているわけですが、残念ながら日本にはその放射性を帯びた食品を食べることに実質的に規制がない というところです。
そしてこういった魚とか食品とか放射性物質がある食品、たとえばセシウム137で汚染された食品を食べていると、何年か経った時に悪性の脳腫瘍とか筋肉腫とか、その他のガンを発症する、ガンになるという可能性が出てきます。そして例えば福島県の学校や幼稚園では、放射能を帯びている放射性物質が入っているような食事を子供に与える というようなことをしています。これは医療的な見地から見ると非道徳的と言わざるを得ません。
福島からの食品、とにかく毎週すべて検査をする必要があります。そして検査の結果によっては販売をして口にするということがあってはいけないと考えております。そして魚ですが、太平洋の魚には高い放射性レベルが検知されています。これは放射性元素が大量に海に投棄され放出されたからですが、この太平洋に放出されたこの放射性物質の量というのは、人類の過去の史上最高の量です。
私は400人の一般市民の方を前に講演をさせていただきましたが、そこで私が感じたのは、そこに来られた一般市民の皆さんが、一体どうしたらいいのかということを必死で知りたいと思っている、何が起きているというのを必死で知りたいと思っていらっしゃるお気持ちでした。福島の結果どんな影響が起きて日本に今、何が起きているのかということを、広く一般の人に知らせる責任がメディアにはあると思いますが、今のところ全体的にみてその責任は果たされていないように見えます。
そしてこの福島の事故、これはまだ終わってはいません。まだ続いているわけです。そしていま40年、時間をかけてクリーンアップ、綺麗にするということを言っていますけれども、科学的に見てクリーンアップ、綺麗にするということはできません。これは科学的に言って不可能です。セシウム137というのは300年残ります。食べ物にも残ります。そして福島はじめその周辺の汚染地域も汚染されたままです。食品の汚染も、そして人が汚染を受けたものも、これも300年あるいはそれ以上の時間続くわけです。
そして国の政府はどうも今回のこの大災害というか大事故が、どれだけ長い時間がかかるものかという現実をよく理解されていないと思います。そしてこれから疫学的に見ても白血病やガンや先天性の形成異常とかそういったものが今後70年間にわたって次々出てくるであろうということを私は思います。
そのことを実は原子力産業も知っているのではないかと思います。福島に今、ガンに対応するための非常に大きな医療施設を作ろうとしている と聞いています。
そしてまた福島の原子力発電所の処理をするために極めて高い線量のところで作業しておられる作業員の方々についても、公に記録が人々に見える形で残されていない状態に今あります。そして高線量のところで作業をする人たちの放射線による被害の状態というのはきちんと記録がなされ、それが公の情報としてだされていかなければいけないと思いますが、それが実際に可能になっていくかどうかは、ここもメディアに依っているところが非常に大きいと考えています。
そしてもう一つ最も重要な点なんですが、日本の多くの人に知っていただきたいことは、もし福島の地域でもう一度マグニチュード7以上の、7を超えるような大きな地震があった場合には、福島原発の4号機、この建物が崩壊する可能性があるということで、ここには使用済み核燃料の冷却用のプールがありますが、これが崩壊しますと、チェルノブイリで起こった10倍の放射性物質がさらに放出されるということが予想されているという点です。
そしてもしそのようなことが起きた場合、日本という国の大半の部分が、もう終わってしまうということです。それほどの大事であるにもかかわらず、多くの人がその現実にはっきりと気づいていないということだと思います。
そして政治家の方はすでに、もし4号機に何かあってそういった崩壊とかの事故があった場合には、東京も今度は避難しなければいけなくなるというような事をわかって言っていらっしゃいますが、一体3000万人の人をどうやって避難させるのでしょうか?
そして日本の政府もそれから東京電力も、外国の企業からの助け、あるいはアメリカのNRCからの助けや海外の専門家からの支援を得ることを認めていませんので、得ていない状態にありますので、4号機の補強する、強化をして安全にするためにぜひ協力を仰ぐべきだと考えます。今、日本だけ、東電だけで、今この対処をするのに、クレーンを設置して中の使用済み燃料を取り出すことができるようにするのに2年かかるということを言っていますが、その2年間待っている間に何が起きてもおかしくありません。
そして最後に申し上げたいことは、がれきの問題です。福島の地域からでた、放射能で汚染された地域からでたがれきについて、これを他の地域で焼却するということを聞いています。焼却するということは、ダスト、灰がでるわけです。そのようなことをして広めるということは、これは犯罪的なことだと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
--QandA--
Q1:(聞き取れず)
Q2:ウクライナの取材でウクライナの医師から直接聞いたのですが、日本の医師たちもウクライナで調査しています。そしてウクライナの被爆に詳しい医師も日本に招いて色々データを貰っています。それで、間違いなく日本の医師、政府は4年後から癌が多発することを知っているはずなんです。それについて先生はどう思われますか?
A:おっしゃることはその通りだと思います。私が先ほどらい申し上げているのは、まさに今おっしゃったことなのですが、とにかく白血病はピークが5年目にでる、これは広島長崎の過去のデータ経験から言えることです。それから、甲状腺癌、今もう始まったばかりです。これからですね、日本でどういう事になっていくのかということを私は非常に深く憂慮しています。日本の医師がメディアに表にでて来て、どんどん発言しないということに私は驚いてまして、ほとんどこれは、いわゆるブラックアウト状態と言ってもいいと思います。それで、日本の多くの方々がまるで福島を忘れたかのように過ごしていらっしゃる。これは水俣病の時のケースよりももっとひどいと思います。日本政府はもちろん、世界のほかの国々から良く見られたいと思っているはずです。ところが、実際に病気として現実の数字が疫学的に見えてきた時、私が言っているような疫学的な数字のとおりのものがでてきた時、その時には世界の各国から見て日本の政府はなんと無責任な人たちなんだろう、日本が世界の目に良くなど全く見えないことになると思います。
Q3:では最後の質問です。ビタミン剤では放射能防御はできないにもかかわらず、日本の医師の中には被爆対策にビタミンCが効くとかインチキなことを言ってですね、患者を食い物にしている医者がいますが、それについてはどう思われますでしょうか?
A:医療的には間違っています。効きません。長崎広島の被爆者の時にはですね、まるで被爆の被害を受けた人たちが、触っちゃいけないというような、それぐらいの感覚で扱われですね、結婚差別を受けたりして、癌になるから子供ができない可能性があるからといって、そういう扱いを受けたのですが、日本のメンタリティからすると、今後同じようなことが福島の人たちにおきてこないかということを非常に憂慮しています