お正月に読んだ本
『天使のゲーム』
新潮社の2012年海外文学の第一位作品というキャッチコピーに惹かれて買いました。サフォンの前作 風の影 があまりおもしろかったのでハズレはないだろうと踏んだのですが 読み終えて感動よりも徒労感が残りました。ひとことで言うとフェアじゃない。二流のミステリ作家のやるように伏線と見せて筋を成立させるための陥穽が読者の読みすすむあちこちに施されている感じ.... ミステリとしても人情ものとしてもファンタジーとしても中途半端な感じがしました。ちょっと欲をかきすぎましたね。
まだ ご覧になっていない方はこの先 読まないでくださいね。新潮社の邪魔をするわけではありませんが 新刊より 図書館で借りて読むのだったと後悔しています。わたしにとっては上下巻1700円出すほどの作品ではありませんでした。このものがたりは作家のダビッドとクリスティーナの愛が実はテーマだったりするのですが なぜクリスティーナがダビッドを愛して?いるのに ビダルを作家として成功させるためのゴーストライターとしてダビドを利用しようとするのかわたしにはまったくわかりませんでした。たとえビダルに恩義を感じていたにしても ダビッドを愛しているならビダルと結婚まではしなかったはず 女心の必然がつたわってこない 単に男から男に乗り換えるだけの安手な女から突然至上の愛で恋人を救おうとする聖女になどという飛躍は無理すぎます。
ビダルにしても 作家だったら自分が書いたものか そうでないか ひと目でわかりますって! ましてビダルは長年新聞社や雑誌の 編集をしていたわけだし 印刷の前に読み直しますよね..... このひとプライドはありそうだし 後輩のそれも目をかけた若者の筆を借りてまでして 甘んじて成功を受け取るでしょうか ...... それだけで 前提のひとつがわらわらと崩れてしまう。
マルラスカもなぜ 巡査に化けていたのか ビダルを邪魔しようとしていたのかわからないし グランデス刑事もよくわからない つまり人物の行動に必然性がない。 過去と未来が円環になっているというオチも不完全。 パラレルワールドのほいがまだ説得力ありそう.....小説はウソ虚構なんだけれども 綿密に構築したウソの世界を『真実』にするのが作家の役割だと思うのです。読者をその気にさせる その世界の住人にさせる それができないと感動は生まれない。センペーレのエピソードには心打たれるものがありましたが 全体としては キラキラしたモザイクのように見えました。生にまつわる悲嘆 汚濁 にもかかわらず 地上を照らす残光のような生きることの輝きがくっきりとかびあがってこないのが残念でした。
この作品を買っている方のブログ → こちら
ほめ方にも苦労していますね → こちら 読めば読むほど、なにかキツネにでもつままれているような気になってくる。じつは、それこそが、本書の魅力の半分を占めているのだ。(これがピッタリ)
娘の本棚から拝借した 『嗤う伊右エ門』 これは伊右エ門とお岩の人物の造形が予想外でした。とても おもしろかったです。
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米原万里さんの 『アーニャの真っ赤な真実』 これはもうひとりの娘から借りた本 米原さんがプラハの学校にいた頃の3人のクラスメートの思い出とその後 .... なかでも白い都のヤスミンカのものがたりが心に残りました。たった一度ヤスミンカの家に行ったとき 米原さんはおとうさんの若い頃の思い出を聴きました。なぜ16歳のとき パルチザンになったかを。そこには一人の先生への敬慕と愛惜があったのです。その後 米原さんはヤスミンカのおとうさんがボヘニア・ヘルツェゴビナの最後の大統領になったことを知ります。 けれども白い都 ベオグラードは米軍に爆撃され ヤスミンカもおとうさんの運命はわかりません。この先生のエピソードは胸に沁みます。事実に根ざしたものがたりはとても強いものです。
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『ナショナル ストーリー プロジェクト』 編集オースター
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全米からあつめられたものがたりのⅡ
アメリカ合衆国は歴史が浅く ネイティブ以外は昔話もないので 必然的にパーソナルストーリーが盛んのようです。この第二集では 日本人聖歌隊 のはなし エラの話が胸に沁みました。
これは王国のカギ
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ジュブナイル というなら いいのかな.... 千夜一夜の入門になるかもしれません。けれども 良きファンタジーはおさなごころを忘れない 夢見るおとなのための読み物でもあるのです。そうした意味で苦言を少々....。
中学生のひろみが失恋したことから異世界へ....そこはアラビアンナイトの世界 ひろみはジン(魔神)ジャニとなって魔法のちからを手にいれお家騒動のなかで重要なやくわりを果たしてゆく.....異世界で体験したことが現実世界のヒロインを変えてゆく 現実に向き合って生きてゆくというよく少女漫画にあるパターンです。おもしろいのは 現実世界の思い人宮城 恋敵リコ に仮想世界の 王子ハーハルンとユージーン ユージーンを愛する奴隷女ミリアムがそのままストレートに 投影されているところ....ここでもひろみは失恋をするのですが 受け入れることを学ぶというか......。 千夜一夜という奇想天外なものがたりをしたじきにしながら飛翔がない、カタルシスもない、 実に日常的なファンタジー というところがなかなかでした。 アラビアンナイトより 空色勾玉のように古代史を探っていってほしいと これは一読者からのおねがいです。