バラのアーチも今シーズンは終わってしまいました。
暑いと花期も短いです。
名残惜しい。
エルナーニの 荒唐無稽さ はどこから来るのか ずっと考えていますが 結論から言うと ヴェルディでないのでよく分かりません。
ですが無責任な 私の 感覚 で あえて類推してみました。
原作はヴィクトル ユーゴー。
と言うとあのフランスの 大作家で レミゼラブルの作者です。
戯曲エルナーニを 初演した時には、従来の 様式を 逸脱した 手法に 古典派が 上演を妨害しようとしてそれを止めようとしたロマン派と 劇場でぶつかり合って、エルナーニ戦争と呼ばれたいわく付きの物語です。
善悪、勧善懲悪 という古典的な手法 から逸脱し、複雑な人間関係 、一人の人物の中にも 色々なキャラクターや思考が あると言う ことを 表現する ことが 新しく革新的でした。
それから14年後、 この作品を取り上げるということは、 ヴェルディも 単純な 筋立ての物語を作るつもりは初めからなかったと思われます。
加えて ナブッコ と言う 興業的に 大成功した 歌劇、 十字軍のロンバルディア人 に続く3曲目。
社会的には大成功していますが 22歳の時に結婚した 妻や子ども二人を 次々と 病で亡くして まだ 4年。
26歳の ヴェルディ です。
歴史的に見るとヴェルディの 生まれた頃、パルマ公国は ナポレオンの侵攻を受け フランス領になっていました。
彼が2歳の時に オーストリアが 勝利し、 イタリアはバラバラになり ウィーン体制 のもとで ハプスブルク 家の 所領に 戻ってしまいます。
それから数年 の間 イタリア統一運動 リソルジメント が、 起こっては 弾圧される ということを繰り返す時代が続きました。
エルナーニは 没落した貴族の 盗賊団の首領。
仲間と徒党を組んで カルロ5世への 復讐を誓っています。
カルロ5世は 神聖ローマ帝国の皇帝ハプスブルク家に 通じる 支配者です。
シルバは カルロ5世の王権を 表向きは受け入れながら、 古い 貴族の家の伝統や 矜持 に従って生きています。
この構図は オーストリアの支配階層、そのなかで でどう生きるのか?
受け入れて生きる古い貴族たち と リソルジメント に向けて戦う 青年党の 弾圧される若者たちと 考えると何かしっくりくる物があります。
オーストリアと戦っているわけではないので 殺されるようなことはない。
カルロ5世は エルヴィーラを愛してると言いながら あっさり恩赦で エルナーニを許すと彼女 と 結婚することを許してしまいます。
このオペラのテーマが 愛ではない ということが 明らかになる瞬間です。
結婚よりも エルナーニが大事にするのは所属する カタルーニャの貴族としての 矜持。
矜持を守る シルバとの 約束だから エルナーニは破るわけにはいかない。
今の私達では理解できないし、どんなに説明されてもモヤモヤしてしまいます。
けれどオーストリアの支配の もとで 誰もが選択を迫られていたのかもしれません。
エルナーニのように 抵抗するか ?
シルバのように 受け入れて享受できるものは享受するのか。
カルロ5世に赦されたとしても、シルバに象徴されるイタリアには赦されない。
角笛はエルナーニの祖先や血からくる運命のようなものかもしれません。
だから、 シルバとエルナー二は 登場人物の誰よりも 深く結びついています。
エルヴィーラは本当に気の毒です。