柑橘系の蕾が膨らんで来ました。
名前がわからない旧宅の柑橘。
昨年も美味しく頂いたのですが、今年もわからないままです。
「謎の変奏曲」、「エニグマ変奏曲」op36はエドワード エルガー(1857-1934年)
イングランド ロウアー ブロードヒース生まれ、イングランド ウスター没
からの謎解き挑戦状です。
1898-1899年に渡り作曲され、1899年ロンドン セント ジェームズホールでハンス リヒターにより初演されました。
1889年ヴァイオリンのレッスンを終えて帰宅したエルガーが、家で即興でピアノを弾いていると、
妻のキャロライン アリス
が「その曲が気に入ったのでもう一度。」と頼みました。
それを膨らませて作ったのがエニグマ変奏曲です。
ENIGMAとは、ギリシャ語で「謎」「なぞなぞ」「謎解き」
アリスは「きっと、今までに誰もやらなかったことをやっている」と言っています。
実は変奏部分についての大半は謎解きは終わっています。
しかし、全体を通した大きな隠された主題についてはまだ確たる解決はなく謎のままです。
さて、皆さんはその謎、解けますか?
主題
冒頭、この変奏曲の元となる主題が演奏されます。
第1変奏「C.A.E」
これはエルガーの妻、キャロライン・アリス・エルガー Caroline Alice Elgar の頭文字です。
「彼女の人生は神秘的かつ優雅に私の創作意欲を刺激した。」
第2変奏「H.D.S=P」
これは友人のピアニストのヒュー・デイヴィッド・ステュアート=パウエル(Hew David Stuart-Powell)の頭文字で、エルガーと合奏をしたそうです。彼が演奏前に指慣らしをしている情景をあらわしているそうです。
第3変奏「R.B.T」
アマチュアの俳優、リチャード・バクスター・タウンゼント(Richard Baxter Townsend)の頭文字。パントマイムや声色を変えるのが得意だったそうで「ときどきソプラノに変わる低い声の紳士」がファゴットで表現されています。
第4変奏「W.M.B」
大地主のウィリアム・ミース・ベイカーWilliam Meath Bakerの頭文字。「彼が手に紙切れを持ち、力強くその日の予定を読み上げ、急いで音楽室を去り、不用意に音を立ててドアを閉める様子を描いている。」
第5変奏「R.P.A」
ピアニスト、リチャード・P・アーノルドRichard P. Arnold)の頭文字。父親は著名な詩人で、「独学でピアノを弾くのを大変好んでいた。 難所は弾かないけれども、不思議と真の感情を思い起こさせる音楽だった。彼のまじめな会話は、気まぐれで冗談めいた物言いによって、ひっきりなしに中断される。」
第6変奏「Ysobel(イソベル)」
エルガーのヴィオラの弟子イザベル・フィットンIsabel Fittonの愛称で、「モルヴァーンの淑女。彼女はヴィオラを習っていた。 最初の小節の、この変奏を通じて用いられているフレーズが、移弦の“練習曲”であることに気づくだろう。 それは、初心者にとっては難しい練習である。哀愁漂う、時に神秘的なこの変奏は、このフレーズにもとづいて形作られている」
第7変奏「Troyte(トロイト)」
建築家のアーサー・トロイト・グリフィスの名前。エルガーにピアノを習っていたそうですが、なかなか上達せず苦労したようです。
「モルヴァーンの有名な建築家。この変奏は荒々しい印象だが、これは冗談である。 不器用にピアノを弾こうとする彼の姿からは、打楽器と低弦の無骨なリズムが実に連想された。 その後、ピアノの先生(E.E.)による、混沌から秩序のようなものを作り上げようとする試みが、強いリズムによって描かれる。 そして、最後の絶望したような「バタン」という音は、その努力が無駄になったことを示している。」
第8変奏「W.N」
地元のフィルハーモニー協会の事務員、ウィニフレッド・ノーベリーWinifred Norburの頭文字。淑女ののんびりした穏やかな彼女の一家の曲調をあらわしているそうです。
第9変奏「Nimrod(ニムロッド)」
「Nimrod(ニムロッド)」は楽譜出版社ノヴェロの編集者でエルガーの親友だったアウグスト・イェーガーAugust Jaegerのあだ名旧約聖書の狩りの名手ニムロデ。
「夕方の散歩をしながら、Jaegerは「緩徐楽章に関して、全盛期のベートーヴェンに匹敵する者はいないだろう」と言った。 私はその意見に心から賛成していた。 この変奏の最初の小節が、ピアノソナタ第8番『悲愴』の緩徐楽章を暗示するように作曲されていることに気づくだろう。 Jaegerは長年の親友であり、私や他の多くの音楽家たちにとっての大切な助言者であるとともに、厳しい批評家であった。 Jaegerと同じ立場に立った人はいても、Jaegerに匹敵する人はいなかったのだ。」
第10変奏「Dorabella(ドラベッラ)」
第4変奏で登場したウィリアム・ベイカー(第4変奏)の姪ドーラ・ペニーDora Pennyの愛称、エルガーが大変可愛がったそうです。
「間奏曲。この別名は、モーツァルトの“Cosi fan tutte”から採用されたものだ。 この楽章は、妖精のような軽さをもった踊りを連想させる。 はじめはヴィオラ、のちにフルートによって演奏される中間部の息の長いフレーズは重要である。」
第11変奏「G.R.S」
オルガン奏者のジョージ・ロバートソン・シンクレアGeorge Robertson Sinclairのことです。
この変奏は彼の人柄を表現したものではなく、「彼が飼っていたあの有名な大きなブルドッグのダンが川に落ちて、陸に上がれる場所を探してバタバタと進み、陸に上がって喜んで吠えという出来事から連想された。 G.R.S.は「この光景を音楽にしてくれ」と言った。」
第12変奏「B.G.N」
チェロ奏者でエルガーの室内楽仲間のベイジル・G・ネヴィンソンBasil G. Nevinsoの頭文字。アマチュアのチェロ奏者で科学への造詣が深かった。
尊敬する友人への追悼曲。
第13変奏「***」
この13変奏だけが文字が伏せられていて「謎」のままとなっています。
曲中にメンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」と言う曲からの引用があることから、エルガーから旅立ち、別れた女性ではないかとの推測があります。その中にはかつてのエルガーの婚約者で、ニュージーランドに移民したヘレン・ウィーヴァーの名前も挙がっています。
第14変奏「E.D.U」
終曲「エドゥー」はアリス夫人がエルガーを呼ぶときの愛称です。
第一主題と第九主題が現れます