おすすめ度 ☆☆☆☆
NHK BS プレミアム鑑賞 1964年製作
高度経済成長期、スーパーマーケットの出現で商店街が次第に先細りしていくシビアな社会的状況の中、愛とモラル、そして世代の狭間に苦しむヒロインの繊細な心理が、成瀬演出ならではの抑制の効いたタッチと効果的なモノクロ映像でリアルにつづられており、ラストの衝撃へと続く。
礼子は戦争中学徒動員で清水に派遣された際、しずに見染められて森田屋酒店に嫁いだ。子供も出来ないまま、夫に先だたれ、嫁ぎ先とはいえ、他人の中で礼子は森田家をきりもりしていた。森田家の次男幸司は、最近、東京の会社をやめ、清水に帰っていた。何が原因か、女遊びや、パチンコ喧嘩と、その無軌道ぶりは手をつけられない程だ。
そんな幸司をいつも、優しくむかえるのは、義姉の礼子だった。再婚話も断り、十八年この家にいたのも、次男の幸司が成長する迄と思えばこそであった。ある日見知らぬ女との、交際で口喧嘩となった礼子に幸司は、今までわだかまっていた胸の内をはきすてるように言った。
礼子は、故郷に帰ることにする。幸司が後を追いかけ、二人は恋人気分。礼子が温泉宿へ誘うが、キスすることができず、幸司は場末の飲み屋へ、
翌朝、幸司の死体が運び込まれ、礼子は乱れる。