日経ビジネスオンラインに面白い記事が載っております。
日本の外貨準備高は1兆156億ドルと、世界のソブリンファンドも顔負けの巨額です。うち、外貨証券は85%で大半は米国債です。5年前は4962億ドルと今の半分以下だったのが、その後の特に溝口善兵衛という江戸時代の代官を彷彿とさせる名前の財務官の時代に、空前のドル買い介入で一気に38兆円も増えたようです。
面白いと書いたのは、理由はよく分からないのですが、この巨額の外貨準備金から生じる運用益(主に米国債からの)が、ドルから円に転換(これをあの「円天」ならぬ、「円転」と呼ぶそうです。)されていないということです。
では、どうやってこの運用益を円に換えているかというと、FB(政府短期証券)という財務省が発行する証券を発行することによってです。このFBの発行残高が、昨年12月の時点で101兆円にも達しているとのこと。
このFBは、もちろん誰かに買って貰わなければならないのですが、そこで埋蔵金としてこのところ騒がれている余裕資金を持つ特別会計にまず目を付けます。(国庫内FB引き受けというそうです。)そのため、市中に発行するFBが36兆円も押さえられているものの、それでも毎週4.5兆円もの3ヶ月物FBが市場に出回っております。
そのため、この3月のベア・スターンズ危機の時には、アメリカでは「質への逃避」が起こって、アメリカのTビルと呼ばれる短期国債の利回りは低下したのに、日本では同じ頃に利回りが上昇しております。市場が混乱すると、この巨額のFBを市場が消化できずに、かえって金利が上昇してしまうという特殊要因ですね。
それはともかく、本題は円転していないことにあります。円転とはドルを売って円を買うことですから、それは円高(ドル安)につながります。これは日本だけの特殊事情とは言えません。
中国やオイルダラーの国々も、これまでにあまりに深く米国債への投資を続けてきたため、ドルの暴落=自らの資産の暴落となるため売るに売れないのです。円転ならぬ、元転やら、リアル転といった言葉も世界のあちこちにありそうですね。
しかし、もう1つ驚いたことに、対米証券投資を見ると、昨年8月だけ売り越しでしたが、この2月までのデータはすべて買い越しなのです。しかも、昨年10月以降は市場予測を上回り続けているのです。
アメリカは15ヶ月で100兆円の資金の流入がないともたない国と言われております。昨秋以来の金融危機で、資金の流入が細っているのではないかとの素人予想は見事に外れております。
売るに売れないどころか、買い増しすらしているのです。
これがアメリカをいわば強気にさせているようです。ご存じのように、ドル安にはアメリカにとって隠されたメリットが3つあります。
それは、①グローバル企業が海外で挙げた現地通貨の利益が、ドルに換えて本国に送金されて業績を押し上げる。②ドルの対外負債は変わらずに、アメリカが外国に持つ資産価値がドル安分だけ上昇する。③そして、当然に輸出企業は競争力を回復して潤う。
もちろんドル安の最大のデメリットはインフレです。しかし、日本がバブル崩壊でデフレに陥り苦汁をなめ続けたことを考えれば、デフレよりもインフレがまだしも望ましいと、アメリカの金融当局は考えているのかも知れません。
ITバブル崩壊後の金融緩和局面では、溢れたマネーは住宅投資に向かうことができました。そして、サブプライム問題の遠因を、超低金利の日銀マネーが供給して作り上げ、今回の「悲劇」を招いた訳です。
今、余剰マネーは、農作物を含めた商品に向かっております。いや、向かわせていると言った方が正確かも知れません。
アメリカのイラク戦争は、フセインが原油の決済をドルからユーロにするのを防ぎ、アラブ諸国をドルペッグにつなぎ止め、かつイラクの原油の権益の確保が目的でした。
昨年、環境問題に極めて鈍感なブッシュ大統領が、突如、エタノール燃料拡大のことを記者会見で言い出したのは、後から露見したように、穀物価格を高騰させ、農業国としてのアメリカの利益拡大を図るのが狙いだったのでしょう。
ところがどっこい、そうしたうまい話が未来永劫に続く訳はありません。このインフレ政策の破綻はどこかで起こるはずです。
特に穀物価格高騰のあおりを受けて飢餓に苦しむ人々を、このまま放置し拡大させて良いものでしょうか。
鍵を握るのが長期金利です。
先日、住宅ローンの金利引き上げがあちこちの銀行から打ち出されました。日銀が利上げを当面凍結する見込みなのにおかしいと感じた方々も多いと思います。
短期の政策金利は中央銀行がコントロールできますが、長期金利は市場で決まります。
ローン金利の引き上げは、先日、サーキット・ブレーカーが作動した長期国債先物市場で、たったの11日前の140.15円から134.58円までの急激な価格低下(金利上昇)が原因です。
このような長期金利の反乱が、ドル安政策を進めるアメリカとそれを支える日本にどういった結末をもたらすのかが今後の焦点かと思います。
まずは毎週4.5兆円もの、世界でも未曾有のFBすなわち短期国債が発行されている日本で、その消化難が起きて市場で金利が上がり、それが長期金利にも波及していくのかどうか、そのあたりを注意深く見守りたいと思います。
世界の経済の暗黙裏の最大の懸念は、日本の長期金利の上昇による財政破綻だと思っております。
ゴルゴダの丘で、人殺しのバラバとキリストのどちらを救うすべきか問われた民衆が、バラバと叫んで罪のないキリストを処刑した、そうした理不尽が未来永劫続くとは思えないのです。
日本の外貨準備高は1兆156億ドルと、世界のソブリンファンドも顔負けの巨額です。うち、外貨証券は85%で大半は米国債です。5年前は4962億ドルと今の半分以下だったのが、その後の特に溝口善兵衛という江戸時代の代官を彷彿とさせる名前の財務官の時代に、空前のドル買い介入で一気に38兆円も増えたようです。
面白いと書いたのは、理由はよく分からないのですが、この巨額の外貨準備金から生じる運用益(主に米国債からの)が、ドルから円に転換(これをあの「円天」ならぬ、「円転」と呼ぶそうです。)されていないということです。
では、どうやってこの運用益を円に換えているかというと、FB(政府短期証券)という財務省が発行する証券を発行することによってです。このFBの発行残高が、昨年12月の時点で101兆円にも達しているとのこと。
このFBは、もちろん誰かに買って貰わなければならないのですが、そこで埋蔵金としてこのところ騒がれている余裕資金を持つ特別会計にまず目を付けます。(国庫内FB引き受けというそうです。)そのため、市中に発行するFBが36兆円も押さえられているものの、それでも毎週4.5兆円もの3ヶ月物FBが市場に出回っております。
そのため、この3月のベア・スターンズ危機の時には、アメリカでは「質への逃避」が起こって、アメリカのTビルと呼ばれる短期国債の利回りは低下したのに、日本では同じ頃に利回りが上昇しております。市場が混乱すると、この巨額のFBを市場が消化できずに、かえって金利が上昇してしまうという特殊要因ですね。
それはともかく、本題は円転していないことにあります。円転とはドルを売って円を買うことですから、それは円高(ドル安)につながります。これは日本だけの特殊事情とは言えません。
中国やオイルダラーの国々も、これまでにあまりに深く米国債への投資を続けてきたため、ドルの暴落=自らの資産の暴落となるため売るに売れないのです。円転ならぬ、元転やら、リアル転といった言葉も世界のあちこちにありそうですね。
しかし、もう1つ驚いたことに、対米証券投資を見ると、昨年8月だけ売り越しでしたが、この2月までのデータはすべて買い越しなのです。しかも、昨年10月以降は市場予測を上回り続けているのです。
アメリカは15ヶ月で100兆円の資金の流入がないともたない国と言われております。昨秋以来の金融危機で、資金の流入が細っているのではないかとの素人予想は見事に外れております。
売るに売れないどころか、買い増しすらしているのです。
これがアメリカをいわば強気にさせているようです。ご存じのように、ドル安にはアメリカにとって隠されたメリットが3つあります。
それは、①グローバル企業が海外で挙げた現地通貨の利益が、ドルに換えて本国に送金されて業績を押し上げる。②ドルの対外負債は変わらずに、アメリカが外国に持つ資産価値がドル安分だけ上昇する。③そして、当然に輸出企業は競争力を回復して潤う。
もちろんドル安の最大のデメリットはインフレです。しかし、日本がバブル崩壊でデフレに陥り苦汁をなめ続けたことを考えれば、デフレよりもインフレがまだしも望ましいと、アメリカの金融当局は考えているのかも知れません。
ITバブル崩壊後の金融緩和局面では、溢れたマネーは住宅投資に向かうことができました。そして、サブプライム問題の遠因を、超低金利の日銀マネーが供給して作り上げ、今回の「悲劇」を招いた訳です。
今、余剰マネーは、農作物を含めた商品に向かっております。いや、向かわせていると言った方が正確かも知れません。
アメリカのイラク戦争は、フセインが原油の決済をドルからユーロにするのを防ぎ、アラブ諸国をドルペッグにつなぎ止め、かつイラクの原油の権益の確保が目的でした。
昨年、環境問題に極めて鈍感なブッシュ大統領が、突如、エタノール燃料拡大のことを記者会見で言い出したのは、後から露見したように、穀物価格を高騰させ、農業国としてのアメリカの利益拡大を図るのが狙いだったのでしょう。
ところがどっこい、そうしたうまい話が未来永劫に続く訳はありません。このインフレ政策の破綻はどこかで起こるはずです。
特に穀物価格高騰のあおりを受けて飢餓に苦しむ人々を、このまま放置し拡大させて良いものでしょうか。
鍵を握るのが長期金利です。
先日、住宅ローンの金利引き上げがあちこちの銀行から打ち出されました。日銀が利上げを当面凍結する見込みなのにおかしいと感じた方々も多いと思います。
短期の政策金利は中央銀行がコントロールできますが、長期金利は市場で決まります。
ローン金利の引き上げは、先日、サーキット・ブレーカーが作動した長期国債先物市場で、たったの11日前の140.15円から134.58円までの急激な価格低下(金利上昇)が原因です。
このような長期金利の反乱が、ドル安政策を進めるアメリカとそれを支える日本にどういった結末をもたらすのかが今後の焦点かと思います。
まずは毎週4.5兆円もの、世界でも未曾有のFBすなわち短期国債が発行されている日本で、その消化難が起きて市場で金利が上がり、それが長期金利にも波及していくのかどうか、そのあたりを注意深く見守りたいと思います。
世界の経済の暗黙裏の最大の懸念は、日本の長期金利の上昇による財政破綻だと思っております。
ゴルゴダの丘で、人殺しのバラバとキリストのどちらを救うすべきか問われた民衆が、バラバと叫んで罪のないキリストを処刑した、そうした理不尽が未来永劫続くとは思えないのです。