==昨日の市場概況の補足コメントとして書いた記事を、問題が問題だけに独立して抜き出します。==
日本の公的債務の数字をご存じない方のために確認しておきます。 (今年の6月末現在。1兆円以下は四捨五入。)
国債および借入金並びに政府保証債務残高:906兆円。
地方財政借入金残高:197兆円(平成21年末見込み。)
交付税特別会計借入金残高:34兆円。(同上)
合計1137兆円。
となっております。(下の2つは、平成21年度地方財政対策の概要の5ページを参照。(退職金の積立不足分は含まれておりません。)
名目GDP:515兆円(2007年度)→公的債務比率:221%(2.2倍)
しかし、外国に知られていないのは、これが全てではないことです。厚生年金と国民年金の未積立債務が試算によってバラツキますが数百兆円もあります。
年金の積立額は、1年前でおよそ160兆円。金融危機で10兆円は失っておりますから、150兆円しかありません。しかし、国が支払い義務を負う公的年金の将来債務は、これでは到底賄えません。
そこで、将来の年金制度の維持が困難と国が判断して、年金制度を終了した時に政府が支払わなければならない過去債務は、2005年3月時点ですが、実に740兆円にも及びます。差し引き590兆円の不足です。
上記の1137兆円+590兆円=1727兆円となります。
対GDP比:335%(3.35倍)
IMFは、こうした日本の公的債務について、いつまで持続可能なのか、固唾を飲んで見守っていると言います。IMFは対GDPで3倍になれば、これは危険水域に達したものと見ているようですが、公的年金債務を入れれば、既にこの危険水域に達しております。(IMFの3倍の根拠は、GDPの2.2倍程度の債務なら、過去の歴史を見るなら、1815年と1945年にイギリスがそのレベルまで到達したものの、それを成功裏に処理を行うことが出来たという事実があるためです。)
次にこの公的債務残高が近い将来(5年後)にどうなっているのかを見てみましょう。
日本の公的債務残高の1137兆円(年金積立不足を除く)のうち、国管轄の国債については、予算上は10年物国債で利払い費は2%を計上しております。
これが、現在の不況下で、史上最低レベルの主要先進国並の3.5%になった世界を、以下に想像してみます。
・平成21年度当初予算:88兆5480億円
-うち国債費 :20兆2437億円
-うち利払い費 :9兆4202億円
-うち元本償還費 :10兆8234億円
元本返済というのは、償還期限が来た国債を償還したことを意味します。来年度は、長期金利を財務省は2.5%と高めに見積もり、償還費と合計では、21兆9158億円とすることが8月27日に報じられております。
上記の利払い費は国が管轄する国債および借入金860兆円に対しての金利かと思います。平均では1.09%です。新発10年物国債は27日段階で1.295%ですが、これはボトムに近く、6月11日に1.56%をつけておりますので、平均では1.4%程度と推定されます。(短期国債の金利はもっと安いので、平均値では1.4%より下がって1%少々に落ちるのは当然です。)
そこで、この1.4%が、仮に5年後に景気が回復して、現在の欧米並の3.5%に上昇したとします。
現在860兆円の国管轄の国債は、今後21年度並の33兆円規模で毎年増えると仮定します。165兆円の純増ですから1025兆円ですね。これを5年後の国債残高とします。すると、
・利払い費(3.5%):36兆円
・元本の償還費 :13兆円(元本の増加率20%を暫定適用)
計49兆円(当初、償還費を11兆円と計算ミスしておりました。以下、青字が訂正箇所。)
これに対して、歳入がどうなるかを見てみましょう。21年度の税収見込みは55兆2540億円でした。残りの33兆2940億円は国債、つまり借金でした。しかし、この税収見通しは、経済の急速な落ち込みで、民間では5兆円程度下回ると試算されておりますので、50兆円を計算上の前提条件とします。
この税収が仮に今後順調に経済成長をして毎年2%ずつ増えると仮定します。しかし、そうなっても、税収は今年度当初見込みの55兆円までしか増えません。
ところが、利払い費と償還費が49兆円ありますので、残りはたったの6兆円です。
平成21年度の社会保障費だけでも24兆8344億円です。これの4分の1しか賄えません。
つまり控えめに見て、他国の現在の長期国債と同じ金利に5年後になったとして、しかも、経済が毎年2%成長したとしても、国家財政はやっていけない、つまり破綻状態になることがお分かりかと思います。
この国債の利払い費と元本の償還費にほとんど消える国家財政の中で、(これも、実際は社会保障費の純増だけで毎年1兆円もあるので無理でしょうが)何とか21年度並の88兆5千億円の予算を組むと仮定するなら、約82兆円を何かの収入で穴埋めする以外にはありません。
この段階では、更なる金利上昇を市場は要請するため、新発国債の更なる増発は許されないと仮定すると、後は消費税のアップしかありません。82兆円分として41%のアップです。つまり、消費税が46%になるという世界ですが、これは幾ら何でも経済が持たないでしょう。すると、消費税を仮に5年後に25%に上げたとして(民主党は4年間上げないと行っているので、これは実際には不可能ですが。)残り21%は一体何で埋めるのか?これは、先進国では史上初の国家デフォルトを宣言するならいざ知らず、後はインフレ政策しかあり得ません。
仮に年平均のインフレ率を10%とします。すると、名目GDPも毎年10%の複利で増えますので1.6倍になります。これに準じて税収も50兆円X1.6=80兆円にまで膨らみます。しかし、利払い費なども49兆円に膨らんでおりますので、残りは31兆円です。21年度の当初予算での事業費(地方交付税交付金等を含む)は68兆円です。まだ37兆円も足りません。19%のインフレ率なら複利で効きますので、118兆円にまで税収が膨らみ、国債関連費49兆円を差っ引いても69兆円の事業費が残りほぼ帳尻が合います。
しかし、来年からすぐに年率19%のインフレに持っていけるとは、今のデフレ状況では考えにくい状態です。となると、最後の2年ぐらいで制御不能なほどのインフレに陥らざるを得ない可能性も見えてきます。このかなりきついインフレで、実は、国の事業費予算も増額を迫られますので、実際には今の品質レベルの予算執行は無理であるばかりか、年金収入にだけ頼るお年寄りは、インフレにより物価が2.36倍になりますので、6割近い実質収入の低下に見舞われる悲惨な事態となります。
注:上記は、消費税を5年目に幾らか上げた時の増収分は含まれておりません。
以上の計算は地方が抱える債務についてはカウント外ですが、地方も国に劣らずに借金に苦しんでおります。金利の上昇は、国と同じように地方財政も痛める筈です。
こういう根本的な問題を、政治家は真摯に受け止めて、その打開策を国民に示さない限り、いくら夢や希望をマニフェストに書いても、それは絵に描いた餅と言わざるを得ません。
今更ながらに恐るべきは、政治家や官僚の過去の無責任体制です。(今の政権政党に、民主党の政策を「バラマキ」と非難する資格は一切ないことは明らか。)
あの「世界一の借金王」と自称した、今はなき小渕元首相は、この借金の多さは自殺ものだと言ったそうですが、一体、これだけの持続不能な借金を後世に残して、これから自殺する政治家や官僚が果たしているのだろうか?
最後に、余計なことかもしれませんが、国民が国家に対して唯一、異議申し立てできる権利の1つ、「選挙権」を何があろうとも明日、特に若い方々、行使して下さい。放棄することは、今の現状と将来の「破綻」を「追認」することと同じであることをお忘れなく。
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日本の公的債務の数字をご存じない方のために確認しておきます。 (今年の6月末現在。1兆円以下は四捨五入。)
国債および借入金並びに政府保証債務残高:906兆円。
地方財政借入金残高:197兆円(平成21年末見込み。)
交付税特別会計借入金残高:34兆円。(同上)
合計1137兆円。
となっております。(下の2つは、平成21年度地方財政対策の概要の5ページを参照。(退職金の積立不足分は含まれておりません。)
名目GDP:515兆円(2007年度)→公的債務比率:221%(2.2倍)
しかし、外国に知られていないのは、これが全てではないことです。厚生年金と国民年金の未積立債務が試算によってバラツキますが数百兆円もあります。
年金の積立額は、1年前でおよそ160兆円。金融危機で10兆円は失っておりますから、150兆円しかありません。しかし、国が支払い義務を負う公的年金の将来債務は、これでは到底賄えません。
そこで、将来の年金制度の維持が困難と国が判断して、年金制度を終了した時に政府が支払わなければならない過去債務は、2005年3月時点ですが、実に740兆円にも及びます。差し引き590兆円の不足です。
上記の1137兆円+590兆円=1727兆円となります。
対GDP比:335%(3.35倍)
IMFは、こうした日本の公的債務について、いつまで持続可能なのか、固唾を飲んで見守っていると言います。IMFは対GDPで3倍になれば、これは危険水域に達したものと見ているようですが、公的年金債務を入れれば、既にこの危険水域に達しております。(IMFの3倍の根拠は、GDPの2.2倍程度の債務なら、過去の歴史を見るなら、1815年と1945年にイギリスがそのレベルまで到達したものの、それを成功裏に処理を行うことが出来たという事実があるためです。)
次にこの公的債務残高が近い将来(5年後)にどうなっているのかを見てみましょう。
日本の公的債務残高の1137兆円(年金積立不足を除く)のうち、国管轄の国債については、予算上は10年物国債で利払い費は2%を計上しております。
これが、現在の不況下で、史上最低レベルの主要先進国並の3.5%になった世界を、以下に想像してみます。
・平成21年度当初予算:88兆5480億円
-うち国債費 :20兆2437億円
-うち利払い費 :9兆4202億円
-うち元本償還費 :10兆8234億円
元本返済というのは、償還期限が来た国債を償還したことを意味します。来年度は、長期金利を財務省は2.5%と高めに見積もり、償還費と合計では、21兆9158億円とすることが8月27日に報じられております。
上記の利払い費は国が管轄する国債および借入金860兆円に対しての金利かと思います。平均では1.09%です。新発10年物国債は27日段階で1.295%ですが、これはボトムに近く、6月11日に1.56%をつけておりますので、平均では1.4%程度と推定されます。(短期国債の金利はもっと安いので、平均値では1.4%より下がって1%少々に落ちるのは当然です。)
そこで、この1.4%が、仮に5年後に景気が回復して、現在の欧米並の3.5%に上昇したとします。
現在860兆円の国管轄の国債は、今後21年度並の33兆円規模で毎年増えると仮定します。165兆円の純増ですから1025兆円ですね。これを5年後の国債残高とします。すると、
・利払い費(3.5%):36兆円
・元本の償還費 :13兆円(元本の増加率20%を暫定適用)
計49兆円(当初、償還費を11兆円と計算ミスしておりました。以下、青字が訂正箇所。)
これに対して、歳入がどうなるかを見てみましょう。21年度の税収見込みは55兆2540億円でした。残りの33兆2940億円は国債、つまり借金でした。しかし、この税収見通しは、経済の急速な落ち込みで、民間では5兆円程度下回ると試算されておりますので、50兆円を計算上の前提条件とします。
この税収が仮に今後順調に経済成長をして毎年2%ずつ増えると仮定します。しかし、そうなっても、税収は今年度当初見込みの55兆円までしか増えません。
ところが、利払い費と償還費が49兆円ありますので、残りはたったの6兆円です。
平成21年度の社会保障費だけでも24兆8344億円です。これの4分の1しか賄えません。
つまり控えめに見て、他国の現在の長期国債と同じ金利に5年後になったとして、しかも、経済が毎年2%成長したとしても、国家財政はやっていけない、つまり破綻状態になることがお分かりかと思います。
この国債の利払い費と元本の償還費にほとんど消える国家財政の中で、(これも、実際は社会保障費の純増だけで毎年1兆円もあるので無理でしょうが)何とか21年度並の88兆5千億円の予算を組むと仮定するなら、約82兆円を何かの収入で穴埋めする以外にはありません。
この段階では、更なる金利上昇を市場は要請するため、新発国債の更なる増発は許されないと仮定すると、後は消費税のアップしかありません。82兆円分として41%のアップです。つまり、消費税が46%になるという世界ですが、これは幾ら何でも経済が持たないでしょう。すると、消費税を仮に5年後に25%に上げたとして(民主党は4年間上げないと行っているので、これは実際には不可能ですが。)残り21%は一体何で埋めるのか?これは、先進国では史上初の国家デフォルトを宣言するならいざ知らず、後はインフレ政策しかあり得ません。
仮に年平均のインフレ率を10%とします。すると、名目GDPも毎年10%の複利で増えますので1.6倍になります。これに準じて税収も50兆円X1.6=80兆円にまで膨らみます。しかし、利払い費なども49兆円に膨らんでおりますので、残りは31兆円です。21年度の当初予算での事業費(地方交付税交付金等を含む)は68兆円です。まだ37兆円も足りません。19%のインフレ率なら複利で効きますので、118兆円にまで税収が膨らみ、国債関連費49兆円を差っ引いても69兆円の事業費が残りほぼ帳尻が合います。
しかし、来年からすぐに年率19%のインフレに持っていけるとは、今のデフレ状況では考えにくい状態です。となると、最後の2年ぐらいで制御不能なほどのインフレに陥らざるを得ない可能性も見えてきます。このかなりきついインフレで、実は、国の事業費予算も増額を迫られますので、実際には今の品質レベルの予算執行は無理であるばかりか、年金収入にだけ頼るお年寄りは、インフレにより物価が2.36倍になりますので、6割近い実質収入の低下に見舞われる悲惨な事態となります。
注:上記は、消費税を5年目に幾らか上げた時の増収分は含まれておりません。
以上の計算は地方が抱える債務についてはカウント外ですが、地方も国に劣らずに借金に苦しんでおります。金利の上昇は、国と同じように地方財政も痛める筈です。
こういう根本的な問題を、政治家は真摯に受け止めて、その打開策を国民に示さない限り、いくら夢や希望をマニフェストに書いても、それは絵に描いた餅と言わざるを得ません。
今更ながらに恐るべきは、政治家や官僚の過去の無責任体制です。(今の政権政党に、民主党の政策を「バラマキ」と非難する資格は一切ないことは明らか。)
あの「世界一の借金王」と自称した、今はなき小渕元首相は、この借金の多さは自殺ものだと言ったそうですが、一体、これだけの持続不能な借金を後世に残して、これから自殺する政治家や官僚が果たしているのだろうか?
最後に、余計なことかもしれませんが、国民が国家に対して唯一、異議申し立てできる権利の1つ、「選挙権」を何があろうとも明日、特に若い方々、行使して下さい。放棄することは、今の現状と将来の「破綻」を「追認」することと同じであることをお忘れなく。
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