中日新聞に「甲状腺がん 声上げた若者」という記事が載っていました。
甲状腺がん、声上げた若者 「全てが一変」涙の法廷陳述 片山夏子(福島特別支局)
2022年10月23日
東京地裁の小法廷のパーティションに囲まれた証言台から、十七歳の少女のか細い声が聞こえてくる。法廷は空調の音が耳につくほど、静まり返っていた。
「原発事故の時も、検査のこともまだ小さかったので、何が起きているのかよく分からず、覚えていることはほとんどありません。
自分の考え方や性格、将来の夢もまだはっきりしないうちに、全てが変わってしまいました」
九月七日、東京電力福島第一原発事故による放射線被ばくの影響で甲状腺がんになったとして、事故時六~十六歳で福島県内にいた男女六人が、東電に計約六億一千六百万円の損害賠償を求めた訴訟の第二回口頭弁論が開かれた。
意見陳述したのは、事故当時六歳だった県内の高校三年の女子生徒だった。
女子生徒は事故の時、県東部の浜通り地域に住んでいたが、家族と避難。中学の時に甲状腺がんの検査に引っかかり、がんと告知された。
告知の前に長い注射針で首から細胞を採取する検査を受ける時、不安と恐怖で涙がぼろぼろあふれてきたことをよく覚えている。
十三歳、甲状腺の片側の摘出手術を受けた。
術後の苦しみを耐え、「手術前と同じ生活を送れるのか」「これからどうなっていくのだろう」と不安で眠れない日々を乗り越え、ようやく「もう大丈夫」と思えるようになったのに、昨年秋に再発した。
二度目の手術で甲状腺を全摘した。
首右側半分の感覚がない状態が半年以上続いた。
放射線治療の入院では、放射性ヨウ素を飲むため、周囲の人を被ばくさせないよう、一週間ほど隔離された。
何も持ち込めないため、ずっと壁を見つめて過ごした。
薬を飲んだ後、喉が腫れ、呼吸がしにくくなり声がかすれる中、膨れ上がる不安と孤独に耐えた。「もう二度とこの治療は受けたくありません」。
そう陳述する彼女の声は涙で崩れた。
<将来の夢も恋も諦め十七歳。>
通常なら高校生活を楽しむ時だ。
部活動に夢中になったり、友達と遊んだり、夢に向かって勉強したり、恋をしたり…。
だが、甲状腺がんと診断されてから彼女の人生は「全て変わってしまった」という。
今は県の医療支援があるが、いつまでも続く保証はない。
十八歳になって医療保険に入れなかったら医療費はどうなるのか。
薬も生涯飲み続けなければならない。
病気が悪化して働けなくなったら生活はどうなるのか。
「将来、何をしたいのかよく分かりません。
ただ経済的に安定した生活ができる公務員になりたい。
高校は安定した将来のため、大学推薦をもらうための場です。恋愛も結婚も出産も、私とは縁がないものだと思っています」と語った。
傍聴席で彼女の声を聞き取るのに全身を集中させながら、胸をえぐられるように感じた。
十七歳の高校生が、将来の夢も恋愛も結婚も諦めている。
その意味を、彼女の人生を、考えずにはいられなかった。
<事故との因果関係は>
意見陳述は約十五分間。
彼女の声には時折抑えきれない涙が交じったり、声が震えたりしたものの、彼女は最後まで自分の思いを読み切った。
パーティションの向こうから聞こえてきた小さいけれど意思を感じる声と、傍聴席から漏れたすすり泣きが、法廷を出た後もいつまでも心に残った。
この日、事故当時小学校六年生だった県中部の中通り出身で、昨年甲状腺がんの手術を受けた女性が追加提訴した。
父親から裁判のことを教えられ「自分以外にも苦しい思いをしている人たちがいる」と七人目の原告になることを決意したという。
裁判では今後、原発事故での被ばくとの因果関係が最大の争点となる。
東電は国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)の報告書をあげ、「原告はがんを発病するほど被ばくをしていない」と請求棄却を求める。
原告側は通常年間百万人に一~二人程度の小児甲状腺がんが、県の検査などで約三百人ががんやその疑いと診断されるなど多発していると指摘。
真っ向から対立する主張を展開する。
「原発事故じゃなかったら、他に何が多発の理由なのか。 因果関係があるのか知りたい」。
原告の中には治療や通院が続く中、大学卒業や正社員の就職を諦めた人もいる。
そして誰もが再発や体調悪化、医療支援が打ち切られるのではないかなど、強い不安を抱えている。
甲状腺がんになった子どもたちが自ら声を上げたことに、帰還困難区域から避難していて、子や孫の発症を懸念する女性が言った言葉が心に残る。
「原発事故がなければ、甲状腺がんになっても、因果関係を疑わなかったと思う。
病気になり原発事故さえなかったらと考えるのは、どんなにつらいことか。
自分たちがなぜなったのか知りたい気持ちは痛いほど分かる」
原発事故後、この国は何を学んだのか。
被害への賠償だけではなく、広く補償の観点からどれほどの制度が作られたのか。
県の医療費支援も国の補助金を原資に毎年予算を組まれており、いつまで続くか分からない。
原告側が因果関係を立証しなくてはならない裁判だけでなく、補償の観点からも取材を続けたい。
以上です。
──福島原発事故の被曝線量によって甲状腺がんは増えないのか
「確率はゼロではないが、限りなくゼロに近い。それは不確実性の問題だ。科学的な態度を取るなら、不確実性は認めないといけない。ただ不確実性の言葉をもって、ものすごく小さいリスクを大きいリスクのように言うことは、住民のためにならない」
──緑川氏が子供たちに伝えたいことは
「甲状腺がんを診断された子供たちは『過剰診断のせいだ』と言われると傷つくという見方がある。
でも、言わなければ子供をだまし、がんの発症は放射線のせいということになる。
過剰診断でないなら、命を脅かすがんと考えるだろう。
それは医者として不誠実だ。
子供たちは『受けなくても良かった手術だったのか』と思うだろうが、それも含め医療側に責任がある。
子供たちには放射線による甲状腺がんの増加を心配する必要はない、甲状腺検査はデメリットがとても大きく受けない方がいいと伝えたい」
こんな事を言った大学教授がいた。
よくもこんな嘘を堂々と言ったものだ。
「言わなければ子供をだまし、がんの発症は放射線のせいということになる。」
どう見ても子どもたちを騙しているように思える。
そうでなかったら、東電の味方なのでは?
>十七歳の高校生が、将来の夢も恋愛も結婚も諦めている。
その意味を、彼女の人生を、考えずにはいられなかった。
あまりにも悲しいです。
>原告側は通常年間百万人に一~二人程度の小児甲状腺がんが、県の検査などで約三百人ががんやその疑いと診断されるなど多発していると指摘。
私には、原発事故による影響としか考えられないです。
歌人 - 村下孝蔵 / "UTABITO" LIVE VERSION - KOZO MURASHITA