本日21日は第36回社会人野球日本選手権の準決勝の観戦へ。状況が状況ならこの日は私の勤務先会社チームの応援スタッフとして「仕事」として姿を現したところだが、残念ながら敗退。ということで、元々午後の予定は京セラドーム大阪だったということもあり、結局「一観客」として訪れる。
午前中は所用があったため、ドームに着いたのは第一試合のホンダ対三菱重工横浜の試合中盤。四番・西郷の本塁打で先制したホンダが1対0とリードしていた。
ホンダといえば、先日のドラフトで巨人に1位指名された長野を擁し、今年の都市対抗で優勝したチーム。長野も自分の夢が叶ったことだし、後はチームの優勝に向けてのびのびとプレーするところである。
試合はホンダの先発で中日のドラフト6位指名の諏訪部が好投。緩急のついて投球で三菱重工横浜打線に的を絞らせない。
一方のホンダ打線も三菱重工横浜の先発・亀川からランナーを出すものの追加点が取れなかったが、9回表、ランナー2塁の場面で長野がセンターへ二塁打を放ち、貴重な追加点を挙げる。結局これがものを言って、2対0でホンダが勝利。都市対抗と合わせての夏秋連覇に向けて一歩前進だ。
さて、続く第二試合は日産自動車対JR九州。実はこの日の注目はこちらの第二試合。50年の歴史を持つ日産の野球部も昨今の景気悪化のあおりを受けて、今年限りでの「休部」が決まっている。「廃部」ではなく「休部」ということではあるが、一旦休部になったクラブがそのままの姿で再開することは、これまでの事例からしてまずないといっていいだろう。「敗戦」=「休部」というがけっぷちの中、トヨタ自動車、パナソニック、日通と強豪チームを破っての準決勝進出である。
三塁側スタンドにも多くの応援団が駆けつけており、チアリーダー部のリードに合わせて大きな声援を送る。

こんな感じの、ブラスバンドあり、マイクパフォーマンスあり、ステージでのダンスあり・・・社会人野球の本大会ならではの光景である。これを盛り上がると感じるか、やかましいと感じるかは人それぞれだろうが、それぞれのチームの選手を応援しようという熱気は伝わってくる。まあ、NPBプロ野球とも、独立リーグとも一味違った風情を楽しむのもいいだろう。
日産の先発は古野。なかなかに球威のある投球で好調な滑り出し。
一方のJR九州の先発は米藤。こちらも左腕からの角度のある投球で日産打線を封じ込める。
両投手の好投でテンポの速い締まった試合展開となり、終盤まで0対0のまま進む。試合は1点勝負の様相を呈してきた。
試合が動いたのは7回。ランナーを一人置き、ここでJR九州は米藤から右サイドスローの濱野に交代。
ここで日産の6番・船引がレフト線への二塁打。待望の先制点が日産に入り、1対0。スタンドの熱気は最高潮に達する。この流れでは、日産がこのまま行きそうに思えた。
ところがJR九州も粘る。8回一・三塁と同点のチャンスをつくる。ここでマウンドに上るのは、今大会で日産の守護神としてピンチを切り抜けてきた左腕・秋葉。
秋葉はJR九州の一番・只隈を内野ゴロに打ち取るも、結局併殺崩れとなって三塁ランナーが生還し、1対1となった。まだ試合はわからない。
この後、両チームともランナーを出すものの、秋葉、濱野の両投手が後続を断ち切り、9回では決着がつかず延長戦へ。だが、10回を終わっても1対1のまま。敗れればこれで休部となる日産の選手たちに対して、野球の神様は「もう少しプレーを見せてほしい」と思っているのかもしれない。選手は誰一人として手を抜いたプレーはしないし、スタンドの応援席からも誰一人として帰ろうとしない。
延長11回からは、先の五輪やWBCでも採用された「タイブレーク方式」により行われる。これは1死満塁の場面から始めるもので、ランナーは、打者の前の打順の3人がつくことになる。大量得点になるかと思いきや、内野ゴロゲッツーならば一瞬で攻撃が終わるという、まさにギャンブル的要素が強い。
11回表のJR九州の打者は只隈。ここでスクイズを決めて1点を勝ち越す。打球処理が間に合わず、打者走者も生きる。だがここで秋葉が奮投して何とかこの1点で食い止める。
その裏、今度は日産が1死満塁から始めるが得点なく2死満塁。ここで打者は先制打の船引。カウント2-3からよく見て四球を選ぶ。押し出しで2対2と再び同点だ。「まだまだ終わらないぞ!!」景気のいい声が響く。本当に、野球の神様は見せ場をまだまだ続けてくれるものだ。
12回表はJR九州が1死満塁から内野ゴロゲッツーで最悪の0点。これで流れは日産に傾いたかと思われた。だって、押し出しでも、併殺崩れでも、外野フライでもサヨナラになるのだから・・・。
ところが、日産の攻撃がここで硬くなった。手堅く決めてしまおうと、先頭の四之宮にスクイズという作戦だったが、JR九州バッテリーがうまくポイントを外し、結局スリーバント失敗。続く松井も内野へのゴロに打ち取り、最大のピンチを逃れた。
この裏で決められなかったのが日産には災い。13回表、JR九州の田村がスクイズを決めて3対2と勝ち越し。続く中野が中前タイムリーを放ち2点追加。次の山下にもタイムリーが出て、6対2となった。
これまでチームのピンチを幾度となく救ってきた左腕も、ついに力尽きた。
13回裏は濱野が無得点で退け、3時間20分を超える熱戦にとうとう終止符が打たれた。6対2。初の決勝進出に大喜びのJR九州ナイン。
一方で、これで50年の歴史に一旦幕を下ろすことになった日産ナイン。中には涙を流す選手もいたが、最後の最後まで一歩も譲らない熱戦を繰り広げたナインに惜しみなく大きな拍手が送られた。惜別のテープも投げ込まれた。
私も所属する会社こそ違うが、社会人野球の名門の最後の試合に、何か胸に来るものを感じた。最後まであきらめずに、ユニフォームの誇りをかけてプレーした選手たちに大きな拍手を送ることにする。
私も今年いろいろな場面での野球を観戦したが、今日のこの試合、この激闘というのは忘れることがないだろう・・・・。