今季のプロ野球はどうなるのだろうか。先日、パ・リーグは4月12日の開幕と決まったが(ただ、楽天の主催試合をどこでやるのかは未定であるが)、セ・リーグが3月25日の開幕を強行するというので物議をかもした。そしていろんな人に意見を言われたから仕方なくという感じで3月29日開幕ということで「一歩譲歩した」という形のようだが、これって主旨がよく理解されていないように思う。私も前の記事で書いたが、震災からの復興も長期戦になるのだから、いっそのこと5月の交流戦のあたりまでスパッと公式戦は休みにして、その間はチャリティー目的の花試合で何とかやれないかと思うのだが・・・。
まあ、開催の目途がたったということになれば選手としてはあとは開幕に向けていかに万全の調整をするかであろう。本来ならばオープン戦の終盤、開幕オーダーも見据えた試合になる時期のオリックス・バファローズ対広島東洋カープの一戦を大正ドームまで見に行ってきた。
大正駅からドームにかけての工事パネルにあしらった選手の写真を見る。
西武ライオンズのユニフォームと似ているではないかということはさておき、重厚な色が却って戦う集団としての凄味というのを感じさせる色合い、デザインであるなと思う。
この日はバファローズ選手会の協力のもとでのチャリティー試合で、収益の一部は東日本大震災の被災地に寄付されるという。これまでにも各地の球場などで開かれたイベントであるが、この日も指定席の入口をくぐると、選手会長の岸田、それにベテランの吉野、小林雅英というところがお出迎えである。募金箱をテーブルに置き、協力したファンと握手を交わすというもの。私もこの手の募金には珍しく思い切って札を入れ、ささやかながらの協力とさせていただく。
一方自由席の入口には木佐貫、阿南、西の3投手がお出迎えをしており、ファンの数からしてこちらのほうが賑わっていた。まあ、普段の試合では接することのできない選手たちとの握手が目当てで募金に協力する人が多いのだろうが、選手会としても自分が立つことで多くのファンが10円でも100円でも協力してくれるというのであれば、励みになることだろう。
スタンドに出る。ナマで初めて見るバファローズの新ユニフォーム。私もショップで買い求めたのだが、やはり新鮮な感じがしてよろしい。
それにしても昨年のシーズンオフに20名ほどが入れ替わったチーム、ユニフォームもそうだが、今季新たに加入した選手を見ているとなんだか別のチームを応援しているかのようである。まあ、いい意味で別のチームとして今季頑張ってくれればいいのだが・・・。
試合前には選手・ファンが一斉に起立して東日本大震災の死者への哀悼の意を表した。選手もユニフォームに喪章をつけてプレーするという。
バファローズの先発はこちらも新規加入のフィガロ。在籍の若手投手を追い越して、先発投手としての期待もかかる投手である。登場曲がモーツァルトであれば「フィガロの結婚」ということでなお面白かったかもしれないが。150キロ近い速球も投げ込むし、変化球もまずまず来る投手である。ただどうも特に走者が出ると力むようで、初回には2安打を浴びながらも無失点で切り抜けたが、2回には3安打と犠牲フライで2点先制される。フィガロの結婚も危うく破談になりそうなことだ。
一方のカープは齋藤悠葵が先発。「サイトウユウキ」と聞くと日本ハムのあの投手をイメージするだろうが、こちら齋藤も左の先発陣に食い込む(いや、食い込むだけなら毎年だがそれで結果が出ないのが気になる・・・・)ほどの力はある。ストレートが極端に早いわけではないが、時折混ぜる86キロのカーブが曲者。
T―岡田、イ・スンヨプ、ヘスマンなど、今季新加入の打者を含めてほぼベストメンバーであるが、齋藤の前にてこずる。序盤一回りでは一人の走者も出すことがなかった。
そんな雰囲気を吹き飛ばしたのが3番・後藤。4回に2番・大引が四球で初めてのランナーとなると、ライトへの鋭い当たり。これがチーム初安打の二塁打となり1点を返す。これで齋藤のリズムが崩れたか、その後3つの四球を与え、7番の伊藤のところで押し出しとなり同点。ここまで声援の大きさでカープに負けていた一塁側スタンドからもようやく歓声が起こる。
そして5回、9番・森山、1番・坂口の連打、大引の犠打でチャンスを広げると、後藤が二塁強襲の当たり。これが2点タイムリーとなり逆転に成功。さらに後藤は7回にはダメ押しの3ランを放ち7対2。これで後藤は3安打6打点の大暴れ。いや~、本番に取っておいてくださいな。
先発フィガロは序盤の崩れを乗り切ってからは快調な投球で、この投手ならなんとなくシーズンでも期待できるかなという印象であった。途中では150キロの速球で梵のバットをへし折ってしまうことも。こういう球威を見ると外国人枠もますます激しい争いになりそうだ。
6回からは継投。6回にベテラン吉野が3人で片づけると、7回は今回の震災で茨城の実家にも被害がでたという鴨志田が好投。中継ぎも競争が激しくなっている中でのアピールである。
この日一番球場が盛り上がったのが7回。この回の開始前には「それ行けカープ」が流れて喜んだ広島ファン。そして代打に前田智徳が登場。鴨志田との勝負であったが最後は力負けでファールフライ。今年40歳を迎えるということだが、代打、あるいは交流戦のDHで活躍を見せることができるだろうか。カープの現役では唯一、91年の憂愁を知っている選手だが、もう一度胴上げさせてやりたいなと思うのである。
そして8回には228セーブの記録を持ち、メジャーにも在籍したが昨年はさっぱりだった小林雅英が登板。私の後ろに陣取っていたファンからは「ここでも劇場かいな」という声もあがったが、辛うじて劇場の前説くらいでとどまったようである。やれやれ。
点差がついたこともあり、9回は岸田ではなくこれも横浜から移籍の高宮が登板。
ランナーを出すものの最後は併殺で決めて試合終了。
この試合、序盤はどうなることかと思ったが結局は投打がかみ合っての、特に投手陣の踏ん張りが大きいところである。本来であれば明日21日のヤクルト戦を最後に25日開幕・・・というスケジュールだったが、震災に伴う開幕の延期で間隔ができることで、選手がどのように調整してくるかである。
久しぶりに野球というのを見た。いやこうして見ると、野球選手の真剣なプレーというのが、見る人に「勇気を与える」といえばちょっと「そこまでのものか?」と考え込んでしまうが、目の前に「この結果はどうなるんだろうか?」と観戦の時に意識を向けさせることで一時でも辛いことから気持ちをリフレッシュさせる効果があると思う。やはり野球は面白いもんですよ・・・・。