7月の京都といえば祇園祭。だからというわけではなく、年中通して京都駅は客でごった返している。ちょうど在来線のコンコースでは祇園祭を紹介した展示コーナーも設けられている。そういえば祇園祭、一度も行ったことないなあ・・。
さて、奈良の長谷寺を参詣した後、広島に戻るのにわざわざ京都に来たのは、別に京都市内の神仏霊場の札所を追加で回るわけではなく(次は生駒の宝山寺と決まっている)、いっぷう変わったルートを取ろうというもの。
今回思いついたのが、在来線特急、それも電化区間を走る気動車特急の乗り継ぎである。列車は、「スーパーはくと」と「スーパーいなば」。京都から、智頭急行の分岐である上郡まで行き、上郡乗り換えで岡山まで行く。時刻表を見るに、京都12時54分発の「スーパーはくと7号」で発車し、大阪、三ノ宮、姫路を過ぎて14時43分、智頭急行との分岐である上郡に到着。上郡からは15時11分発の「スーパーいなば6号」に乗り継ぎ、15時45分岡山着。そして岡山から広島へは新幹線だ。
「はくと」と「いなば」を乗り継ぐといっても30分近く時間があるし、たまたまそうしたダイヤになっているだけで、「e5489」ではたまたま検索でヒットして特急券の予約もできたが、JRも別にそれらの乗り継ぎは考慮していない。そのため、乗り継ぎといってもそれぞれに特急料金がかかり、かつ岡山から新幹線に乗るため、合計すれば普通に京都から広島まで新幹線に乗るより時間はもとより費用もかかる。まあ、これも一種の乗り鉄のようなもので、YouTubeでネタにしている方も見受けられる。
指定席は先ほど長谷寺にいた時にスマホでチケットレス特急券を予約し、乗車券のみ京都駅で購入。その他飲食物を仕入れて在来線ホームに向かう。「スーパーはくと7号」は倉吉行きで、先頭の前面展望の効く車両は自由席である。先頭座席も空いているようだ。これが普通の紙の特急券なら、指定席券を持ったまま自由席に座っていても車内改札で特に何も言われないが、チケットレス特急券の場合、通常より安い代わりに乗車後の座席の変更や、自由席に移ることもできない。ちょっと早まったかなと思う。
そして自分の指定席に座ったのだが、私の周りには大陸の人がぐるりと囲む形になった。隣に誰か来るのが嫌なので、先ほど予約時にシートマップを見た時空席だったエリアを押さえたのだが、その後、私の周りを囲むような売り方をされたようだ。一瞬、この人たちも倉吉までとは言わないが鳥取まで行くのかな??と思った。鳥取も認知度が上がったものである。
「スーパーはくと」が出発。智頭急行の特急車両には何種類かの童謡が流れるが、この列車は「ふるさと」。後半の「夢は今もめぐりて 忘れがたきふるさと」の部分。
JRのこの区間を移動するなら新快速が定番だが、どうせ遠征で来ているのだし、特急に乗ることで「非日常感」も味わえる。車内で駅弁をいただけるのもその一つということで、先ほどコンコースにて購入していた。土産・夕食用として福井の「越前かにめし」、富山の「ますの寿司」、奈良県の「柿の葉寿司」など爆買いしたのだが、車内用で求めたのが水了軒の「京都料亭菜膳」。
関西の駅弁といえば今は神戸の淡路屋が数々のヒット作を出しているが、水了軒も大阪の(駅弁にとどまらず仕出し弁当全般の)老舗である。その水了軒による京都をテーマとした駅弁だが、上品な味わいの一品である。ちりめん山椒とだし巻き卵がなければ完全に精進料理ともいえるが・・。
アルコールは精進料理か否か。最初は暑気払いのスーパードライ缶を飲み干し、先ほど入手した伏見の山本本家「神聖」をいただく。別に私は日本酒に詳しいわけではなく、京都駅のコンコースの売店に並んでいたうちの一つを購入したまでのこと。
ちびちびやるうちに新大阪を過ぎ、大阪に到着。大阪が近づくと、私を取り囲んでいた大陸の人たちを含め、それなりの数の人が立ち上がる。大陸の人たち以外にも西洋系の顔だちも結構いる。さすがに鳥取までは行かないか(笑)。京都の次は大阪観光ということで、USJやミナミ、新世界にでも行くのかな。海外からの観光客にとっては、京都~大阪という短距離でも特急料金を追加で払うくらい別にどうということもないのだろう。それと入れ替わりにそれなりの数の乗客が入って来たが、鳥取方面に所用か旅行で出かけるらしい日本人がほとんどで何だかホッとした。
大阪からは阪神間を高速で走り抜け、特急車内から見る須磨の海や明石海峡大橋はまた違った感じに見える。
所要時間はそれほど変わらないものの、特急と新快速の差は停車駅でである。「スーパーはくと7号」の京都からの停車駅は新大阪、大阪、三ノ宮、明石、姫路、上郡である。県庁所在地駅の神戸や、新幹線停車の西明石、相生は通過する・・。
車掌が声をかけてきた。ここでハッとした。外を見ると、「スーパーはくと7号」は高架線路を快走していた。どうやら上郡で乗り過ごして、そのまま智頭急行線に入ってしまったようである。あまりにも乗り心地、飲み心地がよかった・・というのはアホな大人の言い訳で、撮影した写真やらその後の思い出しで、明石を過ぎてから爆睡し、姫路、上郡と通過したようである。上郡を発車して、私が座っていた席を予約していた客はいなかったものの、巡回中の車掌が予約のない席に座っていた私に声をかけた次第である。
乗車券を見せ、寝過ごしてしまったと申し出ると、追加の運賃や料金はいらないから、次の佐用で下車し、ちょうど行き違いとなる「スーパーいなば6号」の自由席に乗るよう言われる。乗車券にもその旨書いてもらった。
佐用に着き、ホームの向かい側に停車していた「スーパーいなば6号」に乗り換える。連絡が行っていたようで、私が乗り換えるのを待って扉が閉まる。自由席に2人並びの空席があり着席したが、いや、申し訳ないしお恥ずかしい・・。
上郡に到着。「スーパーいなば6号」はここで向きを変えるため、乗客により座席の転換が行われる。このタイミングでいったんホームに降りて、元々購入していた指定席に向かう。上郡乗り継ぎという策を講じて、自身で酒に溺れ策に溺れたことになったが、結局、いったん上郡で下車して30分待つところ、その時間を使って佐用まで往復した形で結果オーライとなった。車掌に声をかけてもらってなければ、ひょっとしたら鳥取まで行っていたかもしれない。