17日の12時、私と、「混戦BB会」のメンバーである鈍な支障さん、大和人さんの姿は「甲子園大運動場」という名前が彫られた石碑というのかモニュメントというのか、そのあたりにあった。これまで大正ドーム、あるいは神戸の球場で観戦を行っていた連中が、とうとう甲子園球場に姿を現した。・・・遅くなりましたが、ここで観戦記を。
甲子園球場で行われる東北楽天対オリックス・バファローズ。本来であれば仙台のKスタ宮城で行われるはずであった試合であるが、ここに来ての東日本大震災。
私の個人的な意見としては、交流戦の開始される5月のGW明けまでは公式戦を延期し、また仙台でできない分はかつて2軍のあった山形とか、仙台からもほど近く立派な球場のある新潟を本拠地としてはどうかというものであった。ただ、仙台市内の被害が沿岸部に比べてさほどではないことと、何とか東北復興のシンボルとしたいという思い入れが強かったのか、公式戦開始は4月12日として、Kスタでの開幕は29日、そして、その間に予定されていたオリックスと日本ハムとの試合は球場を借りてということになった。そこで白羽の矢がたったのが、甲子園球場にほっともっとフィールド神戸。
「混戦BB会」の今季初観戦を甲子園にしたのはやはりその珍しさがあったのかもしれない。特に星野監督が好きというわけではないし、試合となれば八百長抜きでガチでやってほしいという気持ちはあるが、めったに見られない甲子園ではパ・リーグの試合とあってはこれはお誘いしなければ。聞いてみると、かつてオールスター戦や高校野球で甲子園に観戦に訪れた支障さんはともかく、「大阪で生まれて30何年になるけど、甲子園球場に行ったこともなければ甲子園の駅で降りるのも初めてです」という大和人さん。そして、甲子園に来るのはアメフトの甲子園ボウルくらいやなという私。今回このような事態がなければまず実現しなかった甲子園観戦。。
私たちが購入していたのは3塁側のアイビーシート。普段ならば大正ドームや神戸の上段席から見るところ、阪神の公式戦なら年間予約席として発売されるシートに身を置くというのも新鮮。支障さんに大和人さんも「こんなに見やすかったんや」と驚きである。ただ、周りは全てオリックスファンかと聞かれればそうではないし、中には西宮球団の黄色い恰好の客もいたが、そこは普段の試合なら絶対に座れないシートなのだろうし、好きな球団の垣根を越えて「とにかく日本の野球、または楽天の試合を応援しよう」というファンが多いのだろう。特にパ・リーグを普段見ない人には新鮮だろうな。
雰囲気が違うといえば電光の広告。「がんばろう東北」のコピーに続いて楽天のスポンサーが並ぶ。仙台の牛タンの名店や駅弁の老舗、その他ローカル色強い企業名に新鮮さを感じる。また早い時期に東北を旅したいなと思わせる。
さて昼食ということで、支障さんによれば甲子園の名物はいか焼きに焼き鳥ということのようだが、それぞれ普通に弁当を購入する。私が買い求めたのは「楽天ベストナイン弁当」というもので、9つに仕切られた弁当箱の中にはコシヒカリ使用のごはん、鮭の塩焼き、牛タン・・・などがそれなりに入っていた。
まあ味としてはまずまずだったのだが、なんとこれを製造しているのは阪神間~姫路あたりまで勢力を伸ばしている弁当の淡路屋。うーん、そこまでやるか淡路屋。でもまあ、何とか自社のラインで東北のイメージアップ、楽天のモチベーションアップにつなげようという心意気はすばらしいものがあると思う。この際、鮭がどこ産だとか、牛タンの肉はあちらの国の産出ですな・・・ということはどうでもいい。むしろ、桧山弁当とか、関本弁当とかを全面的に売っているほうが異常。
さて試合、楽天は2年目ながらプロ入り以降勝ち星のない戸村、そしてオリックスが高卒の3年目として少しずつ伸びをみせている西。競馬ならば「未勝利戦」とでもいうのかな。周りが何とかしてあげないとという感じである。
その立ち上がり、先頭の松井稼に二塁打を浴び、その後1死1・3塁となって4番の山﨑に犠牲フライを打たれて1点先制。前日からの楽天の勢いそのままで、こりゃ「混戦BB会」としても波乱の幕開けかなと予感させる。
一方の戸村はなかなか力のある投球を見せ、オリックス打線に隙を与えない。テンポよく試合は進んでいく。序盤に失点した西だがその後は戸村に負けない投球を見せ、私たちが観戦した試合では珍しく投手戦の展開となる。どちらもプロ初勝利がかかっているだけに力が入る。
早い展開で前半を終える。ここで、「どうせ前のほうが空いているんだから、行ってみましょうか」という話になる。みずほ銀行シートというところだが、一般には発売していないのか試合が始まってもガラガラだし、どう見てもこの席の指定券を持っているとは思えない子供たちが先ほどから陣取って、イニング交代の間のキャッチボールをする選手にボールをねだっているくらいである。そちらに移ることにしたが、グラウンドにより近いということで迫力あるプレーを見ることができる。ちょっと「甲子園ハイボール」なるものを飲んでみてリッチな気分に(三ツ矢サイダーで割り、甲子園の蔦をイメージしたハーブを添えるというもので、なかなかいけますな)。
ドラフト1位の駿太と主砲のT-岡田とのキャッチボールを間近でみるというのも贅沢。
さてそんな席替えが功を奏したかはわからないが、いつの間にか7回のジェット風船の飛ばし合いを終えた8回にようやく試合が動く。楽天の投手は6回まで3安打の好投の戸村に代わり、ルーキーの美馬が上がっていた。
まずは先頭の坂口がレフトへの流し打ちで出塁。続く森山もしぶとく内野安打で続く。久しぶりに迎えたチャンスである。ここで3番・後藤が痛烈な当たりをライトに放ってまずは同点。この試合初めてレフトスタンドが沸いた。ようやく試合が動き出した。
続くT-岡田には当然一発が期待されるところだが、楽天は美馬から片山に交代。緩い変化球に右手一本でくらいつく。最後は力と執念で持って行ったかな。これがセカンドの頭上を越え、2塁から森山が俊足を飛ばして一気にホームイン。これで逆転。こういうのが4番の仕事というのかな。
これに勢いを得たオリックス打線、北川が二塁打、イ・スンヨプが犠牲フライと続き、この回一挙4点。終盤にきてうならせる展開である。
こうなればオリックスの勝利の方程式ということで、8回は平野、そして9回は岸田がランナーを出すものの楽天打線を抑え、連敗を止めるとともに先発の西にプロ入り初勝利をもたらした。
岡田監督期待の若手が結果を出したということは大きく、まだ金子、近藤が故障で出られない先発陣にあって大きな収穫である。この日は日本ハムのルーキー・斎藤佑樹がプロ初先発で初勝利を挙げたが、一方では「西の勇ちゃん」という、名前をうまくかけた見出しを使うマスコミも現れ、これは結構「北の佑ちゃん」と張り合えるかなと期待できる。
この日の観衆は2万6千人を超え、この甲子園3試合で6万人以上の観客を集めることになった。球場では募金も行われており結構な額の支援が集まったという。最初はどうなるかと思った関西での開催であるが、結構注目を集め、大きな支援にもつながったのではないだろうか。
さて、この試合をご一緒した鈍な支障さんに大和人さん。帰りの阪神電車、そして二次会の梅田へと向かう道すがら「なんだか不思議な感じが・・・」「勝ち負けというか、何というか・・・」と、複雑な胸のうちだったご様子。甲子園でパ・リーグの試合という珍しさもあるし、被災地のこと、復興支援のことを思えばそういう気持ちにもなるのかな。「混戦」にはならなかったが、おそらく今後忘れることのできない試合、ということになるのだろう。
ペナントレースはまだまだ長い。楽天のロードはまだまだ続くが息切れしないように。でもまあ、最後まで結構いい戦いを見せてくれるのではないだろうか。これまで応援することはなかったが、いろんな意味で今季は楽天にもエールを送ろうかな、と思うのであった・・・・。