9月23日、西九州新幹線開業当日の賑わいにあふれる長崎駅。観光案内所を見た後で外に出る。
駅前はまだ工事中で仮通路が通っているが、2ヶ月前までと比べて整備が進んだ様子もうかがえる。この連休中はこのスペースで開業記念のイベントも行われており、テントも出ている。
ネットニュースで目にしたのだが、新しくなったJR駅と路面電車の乗り場が遠くなったことに不満という声もあるようだ。ただ、これから路面電車の線路をJR駅側に寄せるとなると相当な費用がかかるし、それだけのメリットはないと判断されたのだろう。新幹線開業を機に駅の南北の市内電車の線路をつなげて直通運転させた富山駅や、駅建て替え工事にともない電停をJR駅の2階に持って来ようという構想がある広島駅をイメージしてのことだろうが。まあ、西九州新幹線については歓迎記事の一方でさまざまなツッコミ記事、批判的な記事が紹介されており、そうした見方もあるものだなと思うばかりである(新幹線の開業にともな特急が廃止されたことで快速・普通しか停まらなくなった隣の浦上駅利用者の声も、負の側面記事として紹介されていたなあ)。
この日の宿泊はその路面電車には乗らず、五島町にある東横イン長崎駅前である。23日の「かもめ」のきっぷを購入した時に長崎での宿泊先を探したが、その時は極端に値段が高いホテルか(県民割を適用して半額で利用できるのをエサにして値上げしたところもある)、安いけど相部屋のゲストハウスくらいしか空きがなかった。そのため、長崎を離れて諫早でビジネスホテルを予約していた。ただチェックを続けるうちに、東横インに空きが出たので変更した次第である。季節を問わず一定の価格で利用できるのは良心的である。
向かったのは駅前にある「大衆酒場あっぱれや」という店。大衆酒場といいつつも地元の珍しい一品もいろいろ揃うようで、事前に席だけ予約しておいた。
ともかく生ビールにて、西九州新幹線の開業を祝して一人乾杯。メニューにもさまざまな魅力的な一品が並ぶ。
その中でまずは鯛の昆布締め。長崎県は真鯛の水揚げ量が日本一だという。普通に「鯛の刺身」ではなく昆布締めにすることで味が深まるように感じる。昆布締めときくと富山の料理のイメージがあるが、調理法としては全国的にありのようだ。私も一度チャレンジしてみようかな・・。
続いては馬の生レバ刺し。他にも馬刺しメニューはあるのだが、生レバというのはなかなかお目にかからない。今から10年前、O157による食中毒事故を受けて牛の生レバ刺しの提供が禁止されたが、今のところ馬は生食でも大丈夫のようである。牛のような反芻動物の消化管の中にはO157が存在するそうだが、馬は反芻動物ではないうえ、牛よりも体温が高くO157が生息できないため、とされている。
長崎は古くから捕鯨文化を有していた地域の一つで、それを反映してかクジラ料理もある。3種盛りというのにひかれるがさすがに値段がかさむので、ここは3種の中でもっともお目にかかる確率が低いさえずり(舌)をいただく。とろける触感で口の中ですぐになくなる感じだ。
今回は普段の居酒屋、大衆酒場ではめったに食べられないものを選択することになっているが、その中で異色だったのがカメノテ。岩礁に張り付いて生息しており、その外観からついた名前である。見た目からは貝類の仲間なのかと思っていたが、店の人によるとエビやカニといった甲殻類の仲間だそうだ。カメノテ、これまでみそ汁の具材で入っていたのを一度だけ食べたことがあるが、こうしてゆでられて盛られたのをいただくのは初めてである。店の人に教えてもらい、カメノテの指に見える部分をちぎると中から身が出てくるので、それをいただく。磯の香りが口の中に広がる。日本酒のアテにもよろしい。
最後にはカラスミ。これも長崎郷土料理の一つである。ボラの卵巣を塩漬けにして干したもので、これは少量をちびりちびりとやるのがよさそうだ。
大衆酒場といいつつ、珍しいものをあれこれ注文したのでお代はそれなりにかかった。ただ、長崎らしいものを楽しめたということで、まさに「あっぱれ!」「あっぱれ!」の連発である。満足して店を後にする。
この後は稲佐山から夜景を見ようということもなく、そのままホテルの部屋に戻りゆっくりと過ごす。翌24日は、本題の九州西国霊場めぐりの長崎~佐賀シリーズである・・・。