親不知の駅に降りたのは私のほかには1人か2人。背後は山に覆われ、前には北陸自動車道と国道8号線の高架橋がそびえる。以前に途中下車した時に、糸魚川寄りにある歩道橋を渡って海岸に出たのだが、その時に高架橋が海から伸びているのを見た。本当の親不知の難所はここから少し西にあたるが、駅だけ見ても厳しい自然というのを感じさせる。
さて今日は、駅から西に歩いて10分ほどの道の駅「親不知ビアパーク」に向かう。道の駅に海水浴場があるというので、1時間ほどの散策には手ごろだろう。
高速道路の高架下に駐車場と売店・食堂があり、目の前の砂浜には海の家。夏の日本海。近場の人だろうか、多くの海水浴客が海に入っている。海水浴エリアの横では釣竿をすえつけてのんびり構えている人もいる。遠くを見やると、難所と言われる親不知の山肌が伸びている。今は夏の平穏無事な光景で、夕日の見える方向の案内もなるほどと見えるが、これが冬場ともなると大変な荒波になるのだろう。
こうしてしばらく海岸に立っていると、急に西の方から分厚い雲が。そして・・・ポツポツと雨が落ちてきたかと思うと、しばらくして急に本降りになった。一目散に高架下に退散。海水浴客も一斉に海から上がり、海の家へと退避する。
うーん、ここに来て曇りのち雨の予報が当たったか。高架下に突っ立っていても仕方ないので、売店兼食堂に入る。幸い食堂のほうも営業しており、朝食が早かったのでここで何か入れておこうかとメニューを見るに、「北陸名物 たら汁 650円」の文字が目に入る。これを注文する。注文はしなかったが、カウンターにはおにぎりが積まれており、具は「明太子」・・・。まさか同じ腹の親子ではないだろう(明太子はどこかよそから加工品を仕入れているのだろう)が、しゃれっ気を感じる。たら汁の鱈は骨が多かったが、ぶつ切りをそのままを出しているということで美味かった。冬に食べればもっと「日本海やの~」というのを感じることができたかな。
さて、たら汁を味わった後も雨脚が弱まるどころか、より強くなっている。しかし次の列車に乗るにはとにかく駅に戻らなければということで、折りたたみ傘を広げて大雨の中、駅に戻る。まあ、ここで雨に濡れたのは置いておくとして、むしろこの後が心配だ。このまま雨が続くと、今日の半日をどう過ごすか、また時刻表とにらめっこしなければならなくなる。列車に乗るだけとか、駅から少し歩くというだけなら別にどうということもないのだが、今回の小旅行のお目当ての一つが流れてしまうのは痛い。
親不知の駅でしばし待つうち、直江津行きの列車がやってきた。おっ、475系のそれも「急行色」ではないか。これはラッキーだ。今回の旅、国鉄型車両、国鉄色によく出会う。幸いボックス席も空いており、直江津までの時間、靴下も脱いでしばし身体を乾かすことにする。しばらく、トンネルと海が交互に車窓の向こうに過ぎていく。
糸魚川を過ぎ、トンネルの中にある筒石を過ぎて東に向かう。するとどうだろうか、先ほど親不知で大雨だったのが、少しずつ雨脚が弱くなり、終点の直江津に着く頃にはやんでいるではないか。あの大雨は海と山が接しているところならではの局地的なものだったのか。この分だったらこの後も予定通りのコースがたどれそうだ。
次の列車は信越線の長野行き。その前に駅弁を購入する。直江津では「ホテルハイマート」と、「ホテルセンチュリーイカヤ」の2軒の隣同士のホテル(というよりかは、弁当屋がホテルもやっているといったほうがいいのか)が駅弁でしのぎを削っており、どちらもレベルの高い商品を提供している。おそらく話し合いによる日替わりなのだろうが、片方が橋上改札前の通路に陣を張っているかと思えば、もう片方がホームに陣取っており、それぞれが売り物の口上を一通り述べて「さあ、どれをお買いになる?」と勧めるのである。なかなか激しい。
で、この日はイカヤから「浜やきめし」、そしてハイマートから「鱈めし」を購入する。結局、こういう買い方をしてしまうのである。この日は直江津に泊まる予定にしていることもあり、一つは昼食用、一つは夜食用だ。
で、駅弁を抱えて長野行きに乗り、2つ目の高田で下車。交通の要衝としては直江津ということになるのだが、上越市の昔からの中心はこの高田だ。駅の近くにも、雁木作りの家や通りが目立つ。
この、高田のお城をモチーフにしたような派手な駅舎から町の中心にある高田公園を目指して歩く。雨もやんでおりちょうどよい。これから降るなよと念じながら、20分ほどで高田城跡の外堀に出る。一面はハスの葉で覆われている。中には鮮やかな花を咲かせているのもある。最盛期には「東洋一」と称されるほどのものとか。元々は高田藩の財政を立て直すため、「レンコン」を育てるために植えたものとされるが、それが今は町の人たちの目を楽しませるものになったということだ。
その外堀を歩くと、元々は高田城の一部であったという「高田公園野球場」に出る。オレンジ色のテントがいくつか出ており、売り声も賑やかだ。もうここまでくれば雨は降らないだろうという安心感のようなものが出てきた。
そう、この日の天気を心配していた大きなお目当てというのは、北信越BCリーグ「新潟アルビレックス・ベースボールクラブ」対「信濃グランセローズ」の観戦である・・・・。(続く)